「人力車のテント」

 コロナ前「第二次東家教室」(@自由が丘)をはじめたときからずっと考えていたのは人力車のことだった。むかし伊東屋をつくったときも店頭に人力車を置いたが、当時はサノ・キョウシロウ氏にその制作を丸投げしてしまい、わたしは何もつくらなかった。そのあと「第一次東家教室」をはじめるにあたり、はじめて自分で人力車をつくり店頭においた。しかし出来はイマイチで、サノ製には遠く及ばなかった。
 特にむずかしかったのはテント(幌)である。
 したがってこの度の東家教室においても、人力車、とりわけテントの制作が最後の難関になるだろうと最初からわかっていた。だから去年のうちから密かに準備を進め、やっと、どうにか写真のようなテントをつくることができた。
 これが結構むずかしいのだ。
 最初はテントの布地探しからはじまった。
 だがどうしても薄い布地が見つからず、結局レジ袋のような薄いビニール袋をテント地として使うことにし、骨組みには厚さ1ミリ幅2ミリの真鍮製帯金を用いた。骨組みの根元には要(かなめ)があり、要を中心にテントが開閉する。前回これを糸ノコで切り出したが、あまりにもむずかしかったので今回はエッチングによってつくった。等々。ま、そんな準備がいろいろとあって、組み立てには多数のリベットを打った。リベットといっても模型の場合細い針金(太さ0.4ミリ)なのだが、まずはそのための穴が要る。写真に見える面だけで計27個ものリベットがあるが、全面では確か60個以上のリベットが要る。てーことは細い骨の上に60個以上もの穴を開けねばならんってことだ。(その辺を考慮してのことか、カトウ・ヒトヒコ氏が「穴あけの極意」みたいなことを、前回当欄で述べてくれた。)
 ——–こうして最後の難関=テントをなんとかクリアーすることができ、今は非常にホッとしている。テントが終われば人力車もそろそろ終わる。てーことは、長かった東家教室もそろそろ終了に近づいているのか…。

銀座伊東屋本店11階に拙作「伊東屋」が常設展示されています。この作品には目の覚めるような「サノ製人力車」が置いてあります。ぜひご覧あれ。