続・中東のはなし

 ドーハ(カタール)へは計4点の作品を持参し、それをアラブの青年に手渡し、代金を受け取り、以前販売した2点の作品を修理するというのがこのたびの仕事だった。
 その青年の名前はアフマド・アル・タニ。5年ぶりの再会である。
 彼はあいかわらずひょろっと背が高く若々しかった。だが今回はきちんとアラブの白装束を身にまとい威厳に満ち、静かにしゃべり、ゆっくり歩いた———と、彼について、もっともっと書きたいところだが、どうも当人が自分のことを伏せたがっているふしがあり、いくら日本語とはいえ彼の身分や住んでいる家など、プライベートな情報はできるだけ出さないほうが無難と考え、今回これ以上は書かないことにする。
 だがしかし最初の24時間で今回のわたしの任務はほぼ完了し、あとはイスラムミュージアムを見物したり、スークを歩いたりと、アラブっぽさを求めて町をほっつき歩いた。
 スークとは迷路のような路地路地に絨毯屋やパイプ屋や動物売りがひしめく「ペルシャの市場」といったところ。
 (下の写真)
 ものめずらしさに気をとられていたら、歩道の段差にけっつまずいて突然すっころんだ。しこたまひざを打ち息が止まるほど痛かった。路上に倒れてうずくまっていると、「大丈夫か!」と駆け寄った男性が手を取ってくれ、近所のベンチまで運んでくれた。一瞬骨折したかと思ったが、さいわいそれはなく一安心。
 ●そこで一句。「アラブにてあぶら汗かく痛みかな」
 ——–お粗末でした。

スークの中央通り。
この写真を撮ったあとすっころんだ。


2012年12月15日