エドワードモースの店にトラブル発生!

 27日の朝、輸出業者から電話があった。
 「モースの店」を梱包した箱の一部に生木が使ってあるため、荷受国の検疫を通過できない恐れがある。したがって大至急箱をつくり直さねばならぬが、その作業に立ち会ってもらえるか…とのこと。
 もちろん立ち会うと答え、翌28日の午後、成田へと向かった。
 空港から車で10分ほどのところにある梱包業者の工場においてある、以前わたしがつくった箱を開けて中身を取り出し、短時間のうちにまた新しい箱をつくって、再びそこに作品を収納する。それらの作業をたった2時間で完了させる予定だった。
 ところがである。新しい箱に収納するにあたって改めて作品を見ると、地面の一か所に5円玉ほどの白く欠けた箇所があり、そこだけ地肌がむき出しになっている。出したときにはそんな傷はなかったが、わたしはそのあと別室で待機することとなり、しばらくのあいだ作品の場所から離れねばならなかった。おそらく傷はその間に、なにかがぶつかって付いたものと思われる。
 一通りの文句は述べたが所詮どうにもならない。
 あわててホームセンターへと走り、補修の材料を買ってきて、工場の終業時間午後7時まで修理作業に取り組み、なんとか補修を終了、箱詰めを済ませてから帰路に着いた。
 その晩は朝まで考えた。
 応急処置よって地面のキズは埋めたものの、そこだけが老人の顔に刻まれた黒いシミのようだ。その見苦しい映像がまぶたに浮かび、なかなか眠れなかった。わたしを信用し、完成を見ずにカネだけ払ってくれたアフマドは、その地面を見て一体どう感じるか、富豪とはいえ決して安い買い物ではないはずだ。
 仕方なく翌朝業者に電話して事情を説明し、出荷をストップしてほしいと頼んだ。もう一回成田まで出かけて箱を開け、改めて作品の修理をしたいと申し出た。
 ———じゃなけりゃ一生悔やむことになる。
 1月に完成してから何回もの出荷チャンスを逃してきたこの作品、今度こそと思った矢先にまたつまずいてしまった。

無事に北海道を出発したのだが…。


2014年8月31日