「舟(しゅう)さんのこと」

   いささか驚いた。
   秋篠宮親王殿下の奥さまは紀子(きこ)さまだが、その紀子さまの実の弟=川嶋舟(かわしましゅう)さんが、先日ぼくのギャラリーを訪れたのだ。
   暮れも押し迫った27日の、日没間際のことだった。
   舟さんのご自宅は目白だそうで、そこからタクシーを飛ばしてやってきて、まずはボクのおんボロスタジオへと足を踏み入れた。
 「いやあ、こんなむさ苦しいところへ、わざわざご足労いただきまして、ありがとうございます」
   お顔を見るなりそう述べ、その後ただちにギャラリーへと移動して、約一時間、舟さんは実に真剣に拙作をご覧になった。聞くと若いころNゲージの鉄道模型をやったことがあるそうで、なるほどと納得。作りかけの作品や、材料や道具の類にも逐一ご興味を示され、時間はあっという間に過ぎていった。
   いつの間にか日はすっかり暮れて、お帰りになる直前に、一緒に写真を撮った。(下の写真の中央が舟さん)。この写真、SNSへの投稿は自粛したが、こちらなら、だれも見ていないだろうからと、自粛せず、本年度最後の投稿とする。
   みなさん、よいお年を‥‥。

舟さんの左にいらっしゃる方は、渋谷のパルコにあったわたしの最初の教室を見学したことがあるという古くからのファン、スズキ・トヨジさん。スズキさんはいっとき自由が丘教室に在籍していたことがあるので、元生徒でもある。たいへん顔の広いお方で、このたび舟さんを紹介してくれたのもスズキさんだ。
 
 

「調印式終了」

   自由が丘の教室では2019年から「東屋(あづまや)制作講座」を開催している。先週の土曜日(12/18日)、その第17回目の講座があった。
   実はこの講座、京都の出版社から密着取材を受けていて、彼らは講座開催日にあわせて上京し、毎回の制作過程を克明に記録している。その出版社=(株)亥辰社(ドールハウス係の出版社)は、それらの記録をもとにゆくゆくは「はがいちよう/東屋をつくる」的な技法本を出版したい意向のようだ。しかも本作の場合、制作の過程が長いので上下巻に分けて2冊出版する気らしい。
   ちなみにこの日の講座で店の内部についての説明はすべて終了し、次回からは外部へと制作のポイントが移っていく。したがって本を2冊出すのなら、この日あたりが1冊目終了のタイミングである。
   ま、そんなことがあって、いつもは日帰りで取材に訪れる亥辰社だが、この日は泊りがけで2名やってきて、講座終了後に行われたわれわれの打ち上げにも参加し、その翌朝、ぼくのスタジオへやってきた。そろそろ1冊目の編集をはじめる時期だが、その前にわたしとのあいだに出版契約を結ぶ必要があるからだ。
   部屋へ入るなり亥辰社の浅井氏は「出版印税についての覚え書き」と題する書類を取り出し、わたしの目の前に広げた。内容については少々の応酬があったが、結局は大筋で合意し、ほんの5分ほどで署名捺印が終了した。
  「ドールハウスファンにとっては、ぼくがつくってるものは、ちょっと難しすぎるので、本を出したって、売れないよ‥」
   調印のあと、浅井氏にむかって言うと、彼の隣でおとなしくしていた島野さん(女性)が決然と口を開いた。
  「簡単な技法本は他の出版社に任せて、うちは難しいもので勝負します!」
   だ、そうだ。
   ——乞うご期待を!

調印直後の写真。左から亥辰舎の島野聡子さんと浅井潤一さん。
前回当欄で告知した「打ち上げ」は、亥辰舎のおふたりを含め計9名が集まり静かに盛り上がった。当初予定していた店が満員で入れず、その他のあらゆる店がすべて満席で、いっとき居酒屋難民なりかかったが、さいわい「8名なら受け入れられます」という店から連絡があったので、そこに9名で押し入り、辛くも難を逃れた。12月の自由が丘をなめたらあかん。

「打ち上げのこと」

   SNSの掲示板「自由が丘グループ」におととい下のように書き込んだ。
   【東屋教室のこと】
   今週末の12/18日に東屋講座(4-2)があります。午後6時から自由が丘グリーンホール303号室で開催いたしますので、お忘れなきように。
   今回は今年最後の講座ですので、終了後、近くの居酒屋で軽く打ち上げを行います。よかったら是非ご参加ください。現役生のみならずかつてこの教室に在籍していたOB諸氏も大歓迎いたします。
   予約の都合上人数把握が必要です。参加者はお申し出ください。
   ——–と、書き込んだが、参加者があまりにも少ないので、急遽こっちでも呼びかけます。自由が丘教室とはカンケーない方々でも構いません。参加希望者がいらしたら至急Hagaまでご連絡ください。
   どうぞよろしく。
   (下の写真は2012年の打ち上げ)

コロナ禍ゆえ、われわれのクラブ「渋谷クラフト倶楽部」では、このところ忘年会をやっていない。その代わりと言っちゃあなんだが、放課後、軽く飲み会を開こうってことになった。今年はとても写真のように集まりそうもないが‥。
 

「イエサブの棚」

   秋葉原の駅前、「ラジオ会館」にあった「イエサブの棚」が、駅から少し離れた「スーパービル」に移ってから9か月。移った当初はそこそこ売れていたが、それ以降はサッパリだ。そもそもビルにあんまり客がいない。
   コロナであるし、インバウンドはすっかり消えてしまったし、ネット販売の時代でもあるので、店に客が少ないのはわかる。
   それにしてもである。
   今は12月。ホビーショップとしては最繁忙期のはずだ。なのに非常にキビシイ状態がつづき困っている。
   アキバにお出かけの際は、忘れずに、ぜひ「イエサブの棚」にもお立ち寄りください。特にぼくの講座に参加されている方々には、オイルステインや、染め液や、その他特殊な材料など、必要な素材がそろっていますので。
   (イエサブの棚とは秋葉原スーパービル6階のホビーショップ・イエローサプマリンの店内にあるショーケース「はがいちようのミニチュアコレクション」のことです。)
   どうぞよろしく。
   https://yellowsubmarine.co.jp/shop/秋葉原スケールショップ/

スーパービルには複数のイエローサブマリンが入っています。内わたしの棚があるのは6階の「イエローサブマリン秋葉原スケールショップ」の中です。東京都千代田区外神田1-11-5/電話03-5298-7712です。

「いい色になった!」

   下の写真を見て欲しい。
   もう何回もぼくの教室でつくっているお馴染みの作品(未完成)だが、いままではふつうにグレーを塗っていた。しかし今回は訳あって別の色にする必要があり、最初はためしにベージュを塗ってみた。しかしこれがまったくダメで、あわてて世界堂(画材屋)へ駆け込み、そこで約2時間、粘りに粘ってひとつの色(うぐいす色に近い色)をえらんだ。
   この時点では再度ためし塗りをしている時間はもうなく、ぶっつけ本番で、生徒氏らの目の前でその色を塗った。ところがこれがちっともよくない。濃くしたり薄くしたりと、ジタバタしたが、やればなるほど悪くなる。みんなからの軽蔑の視線が突き刺ささった。
   そこで運良く昼休憩。
   休憩中に必死で考えた。
   なんとか逆転の方法はないか。
   このファサードには、最初はジェッソ=白が塗ってあった。その上に本日うぐいす色を塗り、乾くと同時に濡れ布で拭き取り、また塗り、また拭き取りを繰り返して、なんとかアヤを出そうとしてみた。
   だがどうやらそれは失敗したようだ。
   なら“叩き取り”ではどうか。
   拭き取るのではなく、濡れ布でぽんぽん叩くようにして色を剥がしていけば、下地のジェッソ=白がまだら模様に浮かび上がり、けっこうイケルのではないかと突然ひらめいた。
   で、昼休後にやってみたら大成功。いつもおしゃべりな生徒らの鼻息が聞こえるほど、みんな黙りこくってしまい、固唾を飲んでこちらのパフォーマンスを凝視している。
   そうやってある程度グリーンをタタキ取ってから、スイヒ(水干)の粉(黒)をかすかに振りかけたら、ご覧のような色になり一同大満足。
   あーよかった!
   ——-11/28日の教室の情景でした。

この日の教室に参加していたひとりの生徒氏から「先生のレッスンは、どれひとつ見逃したくないほど勉強になります‥」という励ましのメールを後日頂戴した。ま、お世辞かもしれませんが、ありがとうございます。この日は運良くマグレが当たりましたが、これからもご期待に添えるよう頑張ります。

「100均ニッパはやめよう!」

   工作するうえで道具は大事。
   ヘタな上に悪い道具じゃ話しにならぬ。
   未熟者こそ良い道具が必要だ、みたいなことをむかしはよくしゃべっていた。道具とは、定規や、ペンチや、糸ノコの鉉(つる)や、丸ノコや、ジグソーなどのこと。
   このごろでは
 「できるだけぼくが使っている道具とおんなじものを使うとよい」
   みたいな言い方をしてるので、小生とまったくおなじものを使っている生徒がけっこういる。
   先日、放課後の酒席で、ある生徒氏が、買いそびれた裁断機のことをしきりに嘆いたことをきっかけに、やれペンチは「Keiba」が良いだとか、ボール盤は「KIRA」に限るなど、ちょっとした道具談義が勃発し、ひとりの生徒氏から
 「先生、ニッパは何をお使いですか?」
   と、問われた。しかし残念ながらとっさには答えらず、後日フェイスブックの「秘密のメーバー」(そういうグループがあるのです)宛に、下のような回答を書き込んだ。
  「写真を拡大してご覧ください。右下のニッパ(3.Peaks 精密ニッパ)だけは、もう5〜6年も使っているのに歯がボロボロになっていません。ただし一丁5000円ぐらいします。」
   と、この書き込みが好評だったので、本日ここにも掲載した。
  「3.Peaks 精密ニッパ130mm SN-130」で検索できますので、よかったらお試しください。
   ★100均ニッパはもうやめよう!

最初は三丁の中では3.Peaks(右下)が一番よごれていたので、写真を撮るに当たってちょっと磨いてみた。ちょっとのつもりがだんだんはまってしまい止まらなくなって困った。おかげで今度は3.Peaksだけがピカピカになりすぎて少しヘンですが、これで本当に5年使っています。

「少女マンガ展のこと」

    最初にトキワ荘をつくったとき、監修を務めていただき、写真や資料を提供してくださった少女マンガ家の水野英子先生、お世話になった先生から「トキワ荘マンガミュージアム」(以後トキワ荘)で開催中の「少女マンガ展」の案内状が届いた。
   で、行ってきた。
   トキワ荘へ行くのは3度目だ。
   いままでは車でだったが今回はじめて電車で出かけた。16時40分からの入場予約を入れて東長崎駅(西武新宿線)に着いたのは16時25分、駅からはタクシーでむかうつもりだったが、な、なんと駅前にタクシー乗り場がない。
   てーことは歩かねばならぬ。
   あせったわたしは道行く人々に
 「トキワ荘ミュージアムへは、どう行くの?」
   と、たずねたが、みんな知らないという。しょうがないので駅前の弁当屋に首を突っ込んでおんなじことをたずねた。だが店員も、裏から出てきたオーナーとおぼしきおじさんも、ふたりとも「知りません」という。
   バカヤロー!!!
   トキワ荘ゆかりの地で、誰もトキワ荘を知らぬのだ。
   仕方なくわたしは自分の勘ピューターを頼りに約15分歩き、予約時間ぎりぎりに到着。腰痛持ちにとってはちと痛すぎる2000歩だった。

   前置きが長くなったが、現在「トキワ荘マンガミュージアム」で下記特別企画展を開催中です。ぜひお出かけください。
   タイトル: 「トキワ荘の少女マンガ」
   日程: 2021年9月18日(土)〜12月5日(日)
   開館時間: 午前10時〜午後8時(入館は17:30分まで)
   休館日: 月曜日(祝日の場合は翌平日)
   特別観覧料(グッズ付): 大人500円/小中学生100円
   *入館には事前予約が要ります。下記URLよりお申し込みを‥。
   URL: tokiwasomm.jp

人形作家のU氏と、マンガミュージアム2階の廊下で。 写真のように2階は往年のトキワ荘を再現したつくりになっているが、1階はすべて展示場だ。「少女マンガ展」会場も1階にあり、水野作品の他にも手塚治虫、寺田ヒロオ、石ノ森章太郎など、有名マンガ家たちの直筆生原稿が見られる。アクセスは今回利用した西武池袋線東長崎駅の他にも都営大江戸線落合南長崎駅や、都営バス(白61系)南長崎三丁目バス停など、いろいろあるようだ。お調べの上お出かけください。