「ExtrART」のこと

   2月の有楽町展の折「アトリエサード」という出版社のS氏が初日にご来場し、バチバチたくさん写真を撮って帰った。翌日、その日に撮った写真の一枚を、自分のインスタグラムに掲載し、われわれの展を宣伝してくれた。それは作品「ワンス・アポン・ア・タイム」を中心にした、何気ない会場風景だったが、構図が抜群で、目を釘付けにする力があった。ただちにS氏に電話し、当該写真の使用許可を得て、わたしのインスタにもおんなじ写真を掲載したところ、な、なんと12,167件ものいいねがついた。いいねの1万超えなんてはじめてである。
   そのS氏が、6月28日に発売する「ExtrART」という雑誌の誌上で、この日に有楽町で撮った写真をふんだんに使い、そのインスタ写真もふくめて、計12ページにもわたる拙展拙作紹介の記事を書いてくれた。
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「ExtrART」誌33号(アトリエサード/刊)
上の雑誌とは別にアトリエサードが刊行している「トーキングヘッズ叢書」という雑誌に、わたしは「立体画家・はがいちようの世界」と題する連載コーナーを、過去33回にわたって担当させていただくなど、S氏には日頃からたいへんお世話になっている。
 
 

「トキワ荘制作記」

   2001年に最初のトキワ荘をつくったときには苦労した。石巻市のマンガミュージアム・石ノ森漫画館からの制作依頼だったので、ちゃんとしたものをつくらねばならなかったが、すでにトキワ荘は取り壊され、図面もなく、つくるべき正確なかたちがわからなかったからだ。マンガ家たちが描いた絵や、いくらかの写真が残されてはいたものの、どれも決定的ではなかった。写真といっても建物全体を捉えたものはなく、部分部分がバラバラに撮られたものばっかりで、しかもまったく写っていない箇所もあり、いまいち全体像がつかめなかった。
   そんな中、当時このアパートにお住まいになっていた女流マンガ家・水野英子先生からの貴重な証言を得たり、トキワ荘の元大家だった天野喜秀氏から直接ご説明を受けたりしながらの、試行錯誤の末に、同年5月、なんとか完成に漕ぎつけることができた。
   その年の暮れ、わたしはこのときの苦労ばなしを綴った「メイキング・モデル・オブ・ザ・トキワ荘」という制作記を、雑誌「DDD」への連載を目的に執筆した。
   その後その苦労談を和綴本に仕上げた同名の制作記を、うちのクラブの「ままや」さんにつくってもらい、拙展会場や、イエサブなどで販売した。しかし一冊ずつ手で綴じた本なのでどうしても高価にならざるを得ず、(税込み一冊3,300円)、あんまり売れなかった。
   それから20年経った去年の暮れ、今度は沼津のゆうさん編集によるかっこいいデザインの、新「トキワ荘制作記」が、リバイバルリリースされることになった。(下の写真)。こちらは税込み2,640円と、和綴本よりはちょっとは安くなっている。
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   いまのところアマゾンではかえませんので。

 
上の本は、赤い表紙の和綴本「メイキング・モデル・オブ・ザ・トキワ荘」と内容がほぼおんなじです。
20年前、その和綴本を読んだという小学館の編集員の方(残念ながら名前は失念)から丁寧な手紙が届いた。開封すると「ぜひ弊社から出版したい」と書いてあり、当人は元藤子不二雄担当の記者だという。トキワ荘の時代のことがとても懐かしいとも述べてあったので、わたしは大喜びし、ワクワクしながら待機していたところ、後日届いた手紙には「編集会議でボツになり大変申し訳ない」とあり、大落胆した。だがどうしても最初の手紙を捨てられず、ずっととってあった。
本日これを書くにあたって、その方の名前を調べるために、必死でその手紙を探したが、残念ながら見つからなかった。そのとき、もしこの本が出版されていたら、わたしはその後「伊東屋制作記」や「石の家制作記」なども書くことになったかも知れず、その後の人生が少しは違っていたかもしれないのだがm2zu%x)qMQSHUbTTdm)&nUOR。
 

「しかしトラックは何処へ?」

   大作「風に吹かれて」の電信柱が折れてしまったことを以前ここに書いた。(5/17日付け当欄)。その修理のため、作品はその後ずっとわたしの目の前に置いてあり、正直言ってジャマでしょうがなかった。一刻もはやくどかしたい一心で懸命に修理したところ、ご覧のようにほぼ元通りに直すことができた。(下の写真)。さっそく搬入のプロである山ちゃんに頼んで2トン車を手配し、箱に収納して倉庫へと運んだ。
   しかしなにしろ作品がデカイので一番奥にしまわなけりゃならず、まずは手前にある箱をいったんぜんぶどけた。大小あわせて箱は50個もあり、どけるったってたいへんだ。
   そんな作業のついでと言っちゃあなんだが、この際ついでに、もうひとつの大作「ワンス・アポン・ア・タイム」の箱を、おっかなびっくり開けてみることにした。この作品の地面にはダイキャスト製のトラックが一台置いてあり、2月の有楽町展のときには確かに置いてあった。だが無接着のため撤収時には地面から外して、作品とは別のパーツボックスにしまうことになっている。ところがそのトラックが、ここ数ヶ月、行方不明なのである。もしかしたらしまい忘れて作品と一緒に箱の中にあり、暴れて、日の見やぐらや電線をぶっ壊しているのではないか、などと考えると背筋が凍る。あまりにも恐ろしく、覗きたくてものぞけなかったその箱を、とうとう開けてみたのだ。(小生腰痛につき山ちゃんが開けた)。
  「先生、どこも壊れてないですよ‥」
   パアーッと明るいLEDライトを片手に、箱の隅々まで照らしながら、のん気な声で山ちゃんがそう言った。
  「トラックは?」
  「どこにもありません」
   と、山ちゃん。
   どうも「ワンス・アポン・ア・タイム」は壊れていなかったようである。
   そして「風に吹かれて」も元通りの姿になった。
   めでたし。めでたし。

5月の中旬から修理をはじめて、終わったのは5月末だった。考え考え、少しずつ、慎重に進めていたので、延日数として、どのぐらいかかったのか、よくわからない。最初に破損を見たとき「修理は無理」と思ったが、なんとか元通りにすることができて、正直ほっとしている。

「お知らせ」

    ちょっと先のはなしですが7月9日と10日の両日、東京浅草で「ドールハウス・ミニチュアショウ」が開催されます。この催しに毎回わたしはお付き合い的に1〜2点の作品を展示してきましたが、今回はわざわざ「はがいちようゾーン」的なブースを設営し、大小合わせて10点近くの拙作を展示する予定です。

   タイトル: 第24回・東京ドールハウス・ミニチュアショウ
   会場: 東京都立産業貿易センター・台東館7階
    ——都営浅草線浅草駅から歩8分
   日程: 2022年7月9日(土)12:00〜17:00
                        7月10日(日)10:00〜16:00
   入場料: 1,500円(一般入場券)
   主催: 東京ドールハウス・ミニチュアショウ実行委員会
   問合せ: 03-3816-6977(ドールハウスギャラリーミシール)
   https://www.dollshouse.co.jp/dollhouseshow/

   ドールハウスのショウに、こんなにたくさんの拙作をならべるのは1999年に開催された第1回目の東京ショウ以来のことになりますので、ちょっと早いのですか、お知らせいたしました。
 無料の招待券(下)も届いています。欲しい方がいらっしゃれば差し上げますので、ご連絡ください。ただし先着順です。

このショウ、最初は米トム・ビショップと岩瀬勝彦氏の共同主催で1999年にスタートし、その後「日本ドールハウス協会」が主催者となり、そして現在は「東京ドールハウス・ミニチュアショウ実行委員会」が主催している。

「Aさんのこと」

   前回の続き。
   わたしの倉庫から「風に吹かれて」を持ち出した美術監督のA氏は、元フジテレビの社員で、15年くらい前にひょんなことから知り合った。当時はホリエモンブームだったので、若いIT経営者を主人公にしたドラマが企画され、その番組にわたしの作品をディスプレーしたいと言ってくれたのがA氏だった。作品貸し出しの期間や、貸し出し料などが決まり、やる気満々でいたところ突如ホリエモンが逮捕され、企画がボツになった。
   その後A氏は、キムタク主演の「HERO」に拙作を使ってくれた。テレ朝の昼ドラマ「やすらぎの郷」や、「やすらぎの刻」にも使ってくれた。そして今回は、AbemaTV配信の「ANIMALS」というドラマに使う予定で、倉庫から3点の作品を、箱に入った状態で持ち出したのだった。
   現場ではまず作品(風に吹かれて)を箱出しし、セットの中央に配置して、壁ぎわにアートインボックスを配するというA氏のプラン通り、わたしも立ち合ってディスプレーした。
   しかしその翌朝ドラマの監督がやってきて拙作3点は不要と言い出したため、作品はテレコムセンターの倉庫へ移されることになった。
   わたしが常々「箱に収納する際は立ち合わせてください」とお願いしていたからか、作品は箱には入れず、むき出しの状態で倉庫へと運ばれ、到着後段ボールのカバーで覆われた。
   電柱はこの運搬の過程で折れたと推定する。
   このたびの破損について彼らは重々詫びてくれた。修理代を負担するとも言ってくれた。しかし作品は、撮影には使われなかったので、貸し出し料を値引きしてほしいとも言われた。
   ともあれ、今般の支払いに関して、わたしはかなりアブナイ局面に立たされた。使われなかった上に壊されてしまったのだから容易じゃない。トラブルになっても不思議じゃない状況である。
   暗澹たる気持ちで過ごしていると、A氏からうれしいメールが届いた。内容は、ほぼわたし(芳賀)の原案通りの請求書(リース料&修理代)をテレビ局宛に提出せよという指示書であった。彼がテレビ局とのあいだに何らかのはなしをつけてくれたのだろう。
   Aさんありがとう!
   これを読んでいるかもしれぬA氏に御礼を申し上げます。
   ——あとは修理をがんばります。

上はつい先日の毎日新聞に掲載されたA氏紹介の記事です。2022年5月7日(土)付けの夕刊だが、読めるかなあ〜。

「あ、折れてる!」

   テレビドラマの背景に使いたいということで、4月16日の夜、知り合いの美術監督A氏が、倉庫から3点の作品を持ち出した。すなわち大型ストラクチャー作品「風に吹かれて」1点と、アートインボックス作品の2点を、その日の夜、築地本願寺のすぐ近くにある撮影現場まで運び、ドラマのセットの中にディスプレーしたのだった。
   こういった搬入時には往々にして破損をまねくことがあり、なのでわたしも立ち合い、慎重に作業し、終わったのは深夜11時だった。
 「くれぐれも電線と電柱には気をつけてください‥」
   最後にA氏にそうお願いし、帰宅した。
   それから約3週間経って、いつの間にか作品は築地からお台場の倉庫へと移されていた。結局拙作は撮影には使われなかったらしく、わたしの知らぬまにこちらへ運ばれていた。
 ある日A氏から「作品を返却したいのでお台場まで来てください」と連絡があり、5月16日の午後、A氏とともに現場に赴くと、すでにテレビ局の方々が作品「風に吹かれて」のそばで待っていた。と言っても作品はダンボールのつい立てみたいなもので覆われ、中はまったく見えない。
 我々の到着を確認すると
「さあ、では、始めましょう!」
 と、テレビ局の方々が、バリバリっとダンボールのカバーを外した。
 すると「風に吹かれて」が現れた。
 出て来た作品を見たトタン、わたしは
 「あ!折れてる!!」
 と叫び、折れた電信柱を指さした。
    —–以後、次回‥。

 破損した作品(上)は、現在は、狭苦しい作業場の、わたしの目の前に置いてあり、正直ジャマでしょうがない。しかし修理代のことを含めて、A氏とのあいだに、まだいろいろと決着がついていないことがらがあり、修理の手はまったく加えられずにいる。旗艦モスクワがやられちゃったみたいなものである。どうしてこんなことになっちゃったのか、だれにもわからない。

「合同作品展」

   このところのコロナ禍で非開催が続いていた「静岡ホビーショー」が3年ぶりに開催されています。このショーの名物企画のひとつに「全国モデラーズクラブ合同作品展」がありますが、毎回この作品展に「はがいちよう&渋谷クラフト倶楽部」が出場、今年も以下要綱によって出場いたします。

 タイトル: 第31回「全国モデラーズクラブ合同作品展」
   会場: ツインメッセ静岡/南館&西館2階展示場
         (第60回/静岡ホビーショー会場の一角で開催されます)
   日程: 5月14日(土)午前9:00〜午後5:00
    5月15日(日)午前9:00〜午後4:00
 ブース番号: #129「はがいちよう&渋谷クラフト倶楽部」
   入場: 無料

 うちのクラブからは秋山利明さん、山野順一朗さん、佐藤耕作さん、杉山武司さん、岸本裕司さんと、わたしが作品を展示します。ホビーショーに出かけましたら是非「合同作品展」の我々のテーブルにもお立ち寄りください。

上はホビーショー過去展の写真です。
密を避けるため今回は事前予約制という入場方式をとっていて、14日の分は既に予約を締め切ったとのことです。しかし15日はまだ入場可能です。詳しくは下記URLをご覧ください。
 https://www.hobby-shizuoka.com/reserve/ordinary.html