近況①「ドアをつくったら次は窓」

 きのう東急ハンズへ行ったら来年のカレンダーが山積みになっていた。
 今年ももう終わりってことだ。
 となると、たちまち新年だ。
 年が明けたらすぐに4月で、4月にはシカゴのミニチュアショーに出かけにゃならん。てーことは、さっさと売るものをつくらにゃならんのだが先送りに先送りを重ねてきた。だが来年のカレンダーを見ちゃったからには、さすがに焦った。
 シカゴで売れるものといったらもっぱらミニチュアパーツのたぐいである。ところがぼくは普段そんなものをつくっちゃいないから、なかなかやる気が出ないのだ。しかも毎年売るものを微妙に変えていかなきゃ客が喜ばない。
 あれこれ検討を重ねた結果、こんどはHAGA風のドアや窓をたくさん持っていけば多少は売れるんじゃないかと考え、まずはロストワックスで大量のドアノブをつくった。
——下の写真。
 そーゆーわけで、このごろはドアばっかりをつくっている。
 ドアをつくったら次は窓だ。

近況②「シカゴ・ショーのこと」

 シカゴのミニチュアショーに関しては、春にも一度お伝えしたことがあった。だがここいらへんでもう一回説明し、改めて同行者を募りたいと思います。

 タイトル:シカゴ・インターナショナル2013
 会場:ホテル・マリオット・シカゴ・オヘア
 住所:8535 W. Higgins Rd, Chicago, IL 60631 U.S.A.
 電話:800-228-9290 or 773-693-4444
 プレビュー・ショー&販売:2013年4月19日午前10時~午後5時
 2013年4月20日午前9時~午前10時
 ショー&販売:2013年4月20日午前10時~午後5時
 ショー&販売:2013年4月21日午前11時~午後4時
 主催:トム・ビショップ・プロダクション
http://www.bishopshow.com/chiinfo.htm

 米ミニチュア界の「帝王」と呼ばれているトム・ビショップ氏が主催するドールハウスのミニチュアショー。この手の催しでは世界最大規模といわれています。このステージに最初にエントリーした日本人は何をかくそうこの私です。以後7回出場。こんどで8回目となります。
 ショー自体は3日間ですが、セットアップを含めて現地のマリオットホテルに5泊する予定です。ホテル代が約6万円、飛行機代が往復約10万円、プラス食費がかかります。そろそろホテルの予約をしなければなりませんので、同行を希望する方がいらっしゃればどうかお早めにお申し出ください。
 いまのところぼくの教室の生徒氏一名(女性)が同行を希望しているほか、うちのクラブからは古橋いさこさんがディーラーとして参加する予定です。
 ——–どうぞよろしく。

2011年シカゴで

2012年9月29日

よくわからない店

 ガラクタ屋、みたいな作品が完成した。
 フランスの著名なフォトグラファー、ロベール・ドアノー(Robert Doisneau 1912~1994)の写真を元に、今回はできるだけ写真に忠実に制作した。
 ところがその写真を見ただけでは、そこが何屋だか判然とせず、たまたま遊びに来ていたフランス人に訊いてみた。すると彼は「ガラクタ屋にも見えるし、アンティークショップ風でもあり、洋服屋にも見える…」とおっしゃり、けっきょく本場のフランス人にもよくわからないとのことだった。ついでに店頭のアルファベット「VEYSSEYRE」についても尋ねると、こちらは「人名に間違いない」とのこと。
 店の右側の黒いドアーに関してもよくわからなかった。
 ナベ釡の類がたくさんぶら下がったこの扉は「VEYSSEYRE」(ブェィセイル)の店のサイドドアーのようでもあるが、まったく別の店の入り口のようでもある。
 以上、オリジナルの写真ではそんな風だったので、それをそのままつくったのが下の作品だ。とにかくよくわからない店である。
 だから題名に苦慮している。
 本来ならば「○○通りのガラクタ屋」などとしたいところだが、どうもこの店はガラクタ屋ではなさそうだ。そしてオリジナルの写真には通りの名前など、場所の手がかりは一切記されていない。仕方がないのでタイトルはただ単に「ブェィセイル」か、ないしは「ブェィセイルの店」あたりにするしかないのか。
 いま考えている最中だ。

VEYSSEYRE 1/12

2012年9月22日

近況①「迎さんありがとう!」

 いまガラクタ屋(みたいな作品)をつくっている。
 これにはプロトタイプの写真があって、ショーウィンドーには靴がたくさん並んでいる。必ずしもそれに準じる必要はないのだが、かといって他に並べるべき適当な品物が見つからず、最初はどっかから靴を買ってきて並べるつもりでいた。だがいっくら探してもろくな靴がみつからない。
 さあ困ったと思ったころ、以前うちの倶楽部の作品展にアンティークな靴屋(1/12)を出品し、たくさんの靴を制作した迎宇宙(むかい・うちゅう)さんのことを思い出した。迎さんは当教室の生徒OBである。
 「すいません、靴のつくり方を教えてほしいのですが…」
 メールするとOKで、一週間後には彼が来てくれた。ネットで買ったという非常に薄い革も持参してくれ、その場で一個の革靴をつくって見せてくれた。
 まずは紙粘土で12分の1の足型をつくり、それに薄い革を貼り付けて靴状に整形し、あとで足型を抜き取れば出来上がり。と書いてもさっぱりわかるまい。とにかく難しいのだ。
 それでも数日後、意を決し、超真剣にやってみたら、下のような靴ができた。
 後日この写真をフェイスブックに掲載したところ世界中の方々から291件の「いいね!」がついた。291件は本年最多である。
 そしてガラクタ屋もだんだんかたちになってきた。
 ———迎さんありがとう!

近況②「自習クラスのこと」

 迎さんら、ぼくの教室の生徒OB氏らは、月一回「自習クラス」という勉強会を開いている。自習ということなので基本的にぼくは参加しないが、今月は9月8日の午後3時から開催された。

 【内容】
 ①LED回路、調光基礎講座(再)、講師:山口さん‥3年前の講座をもう一度。その後見つけた新しい素材なども紹介します。
 ②LED講座Ⅱ、講師:山野‥白色LEDで蛍光灯の色を再現する方法(作品”丸亀駅”で使用)、チップLEDの半田付け(最近1個10円なので失敗しても怖くない)、など
 ●会場:千駄木二丁目会館1階
 ●住所:文京区千駄木2-11-9
 ●道順:千駄木駅1番出口を出て不忍通りを右方向(根津方面)に進む、セブンイレブンの手前を右に曲がる、100m先左のオレンジ色の建物です(徒歩5分)。JR日暮里からも谷中銀座経由25分です。
 ●参加費:500円

 ——-なかなか濃いでしょ。
 この自習クラス、最初はぼくの工房でやっていた。そのあとは自由が丘で。そして現在は千駄木と、次々にところを移しながら、確かもう5年近くもやっている。参加者は今回22名。勉強会のあとは近所の居酒屋へ…。

千駄木二丁目会館にて

2012年9月16日

近況①「工作教室のこと」

 現在、目黒区自由が丘で開催中の木造ストラクチャー制作教室ですが、来月から新しい制作課題がスタートします。新メニューは「火の見やぐらの情景」(縮尺1/80)です。
 最終的には下の写真のような作品を目指しますが、最初の6ヶ月で火の見やぐらと消防ポンプをつくり、その後の6ヶ月で木造の消防署とベース(地面)をつくります。

 開催場所:自由が丘グリーンホール(自由が丘駅~歩3分)
 開催日時:月2回、土曜日の午後6時~8時
 参加料金:一回3675円(材料費込み)
入会金:10500円(初回のみ)

 日程や時間など詳しい情報は左のインデックス「工作教室」でご覧になれます。
 少々むずかしい工作になりますが、参加を希望される方は直接Hagaまでご連絡ください。当教室のOBの方々も歓迎です。
 ——–どうぞよろしく。

「火の見やぐらの情景」

近況②「あるOB氏からのメール」

 先日、教室OBのひとりである羽賀さんになにか書いてほしいと頼んだところ、下のような一文を送ってくれました。
 以下羽賀文です。
 芳賀先生、お世話になっています。
 このたび、私が教室に入るきっかけになった先生作「千駄木慕情」らしきものを作りましたので僭越ながら写真を送らせて頂きます。
 2008年の初夏、有楽町の東急ハンズで芳賀先生のストラクチャー作品が並んだショーケースを目にした。シビれた。動けなかった。80分の1のトキワ荘の上空には、飛んでいる小さな鳥さえ見えた(気がした)。とくに千駄木慕情と題した作品に惹かれ、さっそく模型教室に入れてもらうことに。
 孤独の世界から消防分団、モンパルナスの灯、ブーランジェリー、そして、あるマン。4年間、いつまで経っても千駄木慕情の「千」の字も出てこないのである。もう自力で作るしかない。と思っていた矢先、本年2月の有楽町展で牧野さんが見事な同作品を出品。私の厚かましいお願いに氏が快く資料をご提供くださり、何とか完成に至ったしだいである。
 先生をはじめ心優しきクラブの皆さんに感謝―。
 —–以上、羽賀文でした。
 文中「東急ハンズ」とありますが、むかしは銀座のハンズに小さな芳賀コーナーがあったのです。ですが、数年前に担当者が移動になったのと同時に撤退することになり、残念ながら今はもうありません。

羽賀尚氏の作品

2012年9月8日

泥沼に足を踏み入れ…

 大人気の「特撮博物館」を見るために江東区の東京都現代美術館へと出かけた。
 東京駅からのバスを乗り間違え、しょうがないからタクシーで現地へと向かった。するとどういうわけか美術館の裏口で降ろされてしまい、仕方なくそこから正面玄関まで、石畳の舗道の上を200メートルほど歩くはめになった。ところがである。この舗道がめちゃくちゃ歩きにくいのだ。出っ張った敷石とへこんだ敷石が、わざと不揃いにならべてあって、表面がまるでデコボコだからである。
 一発でそれにしびれた。
 その後次第に思いは募り、いまやっている作品の舗道に応用できないものかと考えるようになった。すなわち、すでに並んでいる敷石のうちの、いくつかの石の表面にパテを盛って出っ張らせ、別のいくつかの表面を削ってへこませれば、なんにもやらない石をふくめて、都合三段階の高がつくれることを思いつき、やってみた。最初は半信半疑だったが、出来上がったら大成功。デコボコの敷石がきっちり存在感を示し、うっとりするような出来栄えだった。
 そこまではよかった。
 すると今度は旧作の舗道が見劣りするようになり、しょうがないからいま片っ端から直している。間違ってタクシーを裏口で降りてしまったために、とんだ泥沼に足を踏み入れることになったのだ。

デコボコの敷石

2012年9月1日

ミニチュアコレクター

 おととし制作した「馬具店」(カール・フローセス・ストアー)の依頼主・ナンシー・フローセスさんから小さなダンボール箱が届いた。
 開けてみたら雑誌である。拙作「馬具店」が掲載された米ミニチュアコレクター誌8月号が4冊入っていて、表紙には下のような短いメッセージが添えてあった。
 Everyone is amazed with the Harness Shop!! It is in Kent’s office—-he loves it and so do I!! Nancy——- (みんなが「馬具店」に驚いています。作品は主人のオフィスに置いてあります。主人も私もそれが大好きです。ナンシー)
 さっそくページをめくると馬具店は見開き2ページの扱いで(下の写真)、写真もだが、今回は記事がなかなか充実していた。
 読むと、ミニチュアコレクターはわざわざナンシーさんに取材し、私と彼女との出会いや、本作をつくることになったきっかけ、制作における苦労話などを簡潔にまとめ、「I’d rather have one good piece like this, than 50 others.」(ほかのものが50個あるより、この一個があればよい…)というナンシーさんの言葉で締めくくっている。
 ———ありがたいことである。
 ナンシー・フローセスさんと、記事を書いてくれたバーバラ・アーディマさんに御礼を申し上げます。

2012年8月25日

こんどはガラクタ屋です

 この仕事をはじめたばっかりのころ、1990年代の後半は、今から考えるとまだまだ元気だった。時間もたっぷりあったので、次から次へと作品をつくった。やがて今世紀に入ると特別注文品の制作や、クラフト教室、各種催事への対応に多くの時間を費やさねばならぬようになり、のんきに自作をつくるなんてことはほとんどなくなってしまった。
 そうなるといつのまにか新作をつくるというモティベーションがすっかり枯渇してしまうらしい。2009年に月刊美術誌からなにか一点つくってほしいといわれたときには丸3カ月考えて、なんのアイデアも湧いてこず、真っ青になったことがある。
 ところが今年はどういうわけかひまで、おかげでこのところ次々と新作をつくっている。ついこのあいだは「ルイブラン通り五番地」という作品を仕あげ、いままた別の作品を手がけている。(下の写真)。
 こうしてつくっていると脳が活性化されるらしく、次の作品のことも、そのまた次の作品のことまでも、どんどんイメージが湧いてきて、まるで90年代に戻ったような気分である。いまならばまとめて10個ぐらいダーッとつくれそうな気がする。
 ちなみにこの作品、ご覧のように店の外装はほぼ完了している。
 だがここはガラクタ屋である。店内にごっそりと商品を詰め込まねばならず、完成までにはまだちょっと時間がかかる。

2012年8月18日