キットさんありがとう!

 暑い夏の日に、近所の知り合いに連れられて、彼女はふらりとぼくの作業場へ入ってきた。そしてアメリカ人独特のおもしろい日本語をあやつり、日本に住んで25年になること、名前はキット。ジャパンタイムスの記者をしていることなどを説明してくれた。ただちにギャラリーへ案内すると、スゴイ!スゴイ!を連発し、パシャパシャ写真を撮り始めた。キットは新聞記者であると同時にプロのカメラマンだそうだ。どうりでカメラがやたらとでかかった。
 てっきり取材だと思い、待ち構えていると
 「わたし、あした急にフロリダにかえることになりました。秋になったらまたきますので、よろしくおねがいします」
 と、突然告げ、変わった形の名刺を一枚置いて、あっさり帰ってしまった。
 やがて秋になり、師走になり、彼女のことはすっかり忘れていた。
 そんな12月の中旬、「あなた、ワタシのこと、おぼえていますか?」というメールが舞い込み、師走の15日、キットが本当に、ふたたびやってきた。
 「きのうのよる、麻布十番で、おサケのみすぎたよ、あたまフラフラだよ」
 などと言いながら、ぼくのところでみっちり取材して帰り、そして後日、自分が書いたという新聞記事を送ってくれた。
 (下の写真)
 けっこう長い文章でぼくの仕事を紹介してくれ、ギャラリーのこともちゃんと宣伝してくれたおかげで、年末には「新聞を見た!」という来訪者がポロポロ訪れ、それは年明けまで続いた。
 ——–キットさんありがとう!
 (下がその記事です)

Finding the workshop of 68-years-old Ichiyoh Haga is a bit tricky, but worth the hunt. Inside his studio, once a car garage, I find Haga and his apprentice, Mayumi Tayama, hard at work.
Mayumi is making teeny window frames no larger than her thumb, and Haga is fashioning a bucket smaller than a thimble. Cut from a large paper clamp, and painstakingly soldered and filed, the tiny bucket is destined to be a prop in one of the fantastical creations that Haga is famous for building.
“People call what I do ‘miniatures,’ ” he says, “but there must be a better word for it. What I do is a form of art.”
To prove it to me, Haga escorts me to the building next door, and unlocks his personal gallery (entry fee 100 yen for adults, 10 yen for children). Inside, displayed on easels, is a serious of romantic Parisian shop fronts, done in extraordinarily realistic detail, and all fashioned by hand at approximately 1/12 scale. Each of Haga’s “Art in A box” series measures roughly 60-by-80 centimeters in size, but peering into each box’s depths, artistically spot lit and rendered with breathtaking authenticity, is like seeing into a delicate past. Each work is empty of people, but bears the patina of aging and Haga’s palpable empathy for the bits and pieces that make up our human lives. None of the works are based entirely on an actual shop or street, yet the viewer is imbued with a powerful sense of nostalgia for what never really existed. “The scenes are from my imagination,” Haga says. “Sometimes at night, I cannot figure out what the next details will be… but then I dream them, and wake up to make them real.”
Haga leaves to me examine the series on my own, and I’m mesmerized by the details: the perfect baguettes and the flickering light in an early morning boulangerie the mop propped in the corner of a cafe, the art gallery with real miniature paintings inside. Gradually, I get it. These aren’t just models or miniatures, but 3-D evocations of an interior vision, as artistic as Giorgio De Chirico’s or Maurice Utrillo’s paintings of street scenes.
With a background in the fashion business, Haga only started creating his works at age 48.
“The economic bubble burst and, as a diversion, I made a model of a small train station,” he says.
People immediately noticed his talent, and before long, Haga had commissions from places such as Ito-ya, who had him recreate their 1930s stationery store from blurry photographs, and Nicorette, which had him make a miniature Japanese tavern for a TV commercial.
“When I did the Micorette job,” Haga says, with a laugh, “I actually quit smoking.”
I spend over an hour watching Haga finish the teeny bucket he was working on. Deftly wielding needle-nose pliers, soldering tips, torches, files and, finally, dunking the bucket in a “poisonlike” chemical bath for aging, Haga sets up the perfect tiny replica. It’s Lilliputian perfection
The afternoon is turning a slightly blue shade outside, so I decide to call it a day. Thanking Haga-san, I bow farewell. His workshop, full of tools, neat wooden cabinets and industrial lighting fixtures overhead, would make an awesome artwork, I think.

ジャパンタイムス/2016,12,25日号


2017年1月15日

トキワ荘の展示

 このごろ豊島区によるトキワ荘関連のイベントが盛んだ。
 暮れには「トキワ荘お休み処開設3周年記念スタンプラリー」があったし、トキワ荘跡地近くには「ラーメンの小池さんパネル」が建てられた。パネルの除幕式に出席してほしいと区から連絡があったので、行ってみると、副区長をはじめとする地元の名士数十人が参列する中、近所の小学校の吹奏楽団による演奏つきの一大セレモニーだった。
 そして12月26日からは、三省堂書店池袋本店・書籍館4階のイベントスペースにおいて「マンガの聖地トキワ荘特別展示」というエキシビションが開催されている。
 今朝なにげなく新聞を開いたら、そのことが記事になっていて、写真の中央に拙作が写っているのにビックリした。10日までだが、ご興味のある方は是非!
 15坪ほどのスペースに、トキワ荘関連の書籍や映像が集められ、もちろん拙作トキワ荘(50分の1)も展示されています。

東京新聞(2017年1月7日)より


2017年1月8日

あけましておめでとうございます。

 去年の春、思い切って自宅の一階を作品の展示場(ギャラリー)に改装してしまいました。
 (下の写真)。
 立地が悪いにもかかわらず、ポツポツとお客様がお見えになり、新たな出会いがたくさんありました。ある来訪者が美術展の主催者だったことから上野での拙展開催が決まったり、またある来訪者が新聞記者だったことから、小生の仕事が新聞に紹介されるなど、うれしい出来事もいろいろとありました。
 しかし、なにしろ壊れやすい作品ゆえ、ディスプレーしたあとは、にわかに地震が心配になり、ほんの少しの揺れにもあたふたし、とても枕を高くしては眠れません。
 そんなことから、正月は14日までの営業とし、そこでいったんクローズすることにしました。どうかご来場は14日までにお願いいたします。(そのあとは桜の花の咲くころに「春の部」として再オープンする予定です。)

 ≪はがいちよう作品展開催中!≫
 会場:はがいちようギャラリー(東京都北区中里3-23-22)
 日程:2017年1月14日まで
 時間:午前10時~午後6時
 入場料:大人100円(子供10円)
 ※あらかじめメール(ichiyoh@jcom.zaq.ne.jp)か、電話(080-5497-3497)でご予約の上、ご来場ください。

 ——本年もどうぞよろしく。

@Garelly ICHIYOH


2017年1月3日

今年ももう終わり

 今年の正月に、熊本のやぶうちさんから注文があったアートインボックス作品「白い石炭商人」が、やっとのことで、おおむね完成した。(本件に関しては2/7日、9/17日付けの当欄にも記事があります)。
 むかしデビューしたてのころは、やる気マンマン、元気いっぱいだったので、ほんの2ケ月半ほどのあいだに15点ものアートインボックスをつくったことがあった。しかし今はせいぜい年に一個か二個がいいところ。そんな一個を、どうにか仕上げることが出来て、心からほっとしている。
 あとは小物をほんの少々ふやして、微妙に色を調整し、収納用の箱や、展示用のイーゼルをつくったら完全に完成だ。
 今年ももう終わり。
 みなさん、よいお年を…。

「白い石炭商人」(1/12)


2016年12月25日

孤独の世界 制作教室のこと

 わたしの駒込スタジオで開催中だった「水場エレジー制作教室」がこのたび終了いたしました。このあと新年からは「孤独の世界」と題する作品の制作に取り掛かる予定です。

 制作課題:孤独の世界(縮尺80分の1)
 場所:はがいちようの駒込スタジオ(東京都北区中里3-23-22)
 教室日程:1/22、2/12、2/26、3/5、3/26、4/9……
 開催時間:午後6時~8時
 参加料:4536円(一回/材料費こみ)

 こちらの教室への参加を希望される方はお申し出ください。
 質問があれば遠慮なくどうぞ。

孤独の世界(1/80)


2016年12月18日

忘年会

 渋谷クラフト倶楽部主催の忘年会が12月10日の午後6時半より駒込の和風割烹「源気丸」で開催されました。冒頭坂田真一会長より、今年限りで会長職を辞任したいという意向が述べられ、後任には山野順一郎(現事務局長)が指名されました。そして相談役として佐野匡司郎氏に加わっていただくことになり、今後クラブは山野、佐野の新体制で臨むことになりました。
 坂田さん、長いあいだお疲れさまでした。
 山野新会長、佐野さん、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 なお当日の参加者は以下の39名。
 相澤さん、秋山さん、穴熊さん、井岸さん、池淵さん、順子さん、イナバちゃん、シゲちゃん、岡さん、岸本さん、坂田前会長、佐野さん、嶋本さん、白石さん、鈴木さん、Hagaちゃん、羽賀さん、マキノちゃん、矢沢ちゃん、山ちゃん、山野新会長、山脇ちゃん、らるかちゃん、ナベちゃん、大内さん、筒井さん、ミキちゃん、木津先生、木村さん、ひろみさん、手柴さん、宮下さん、クリス、松浦さん、橋本さん、生川さん、高谷さん、多田さん、フジシタさん、でした。


2016年12月13日

ひろみさんの作品

 元生徒の藤井ひろみさんから写真が届いた(下)。
 ギョ、ギョ、ギョ、ギョ、ギョエーッ! むちゃくちゃよくできているーっ!!!
 これは、以前自由が丘教室のコースメニューとして取り上げた作品のひろみバージョンである。彼女はこのコースに参加し、2014年の春、コース終了とともに卒業した。しかしその後も忍耐強くつくりつづけ、いまだに未完成ながら、やっとここまで出来上がったとのことである。ご覧のように非常にボロい工場を表わした作品だが、な、なんと彼女は、この作品を「倉庫カフェ」として仕上げるつもりらしい。
 以下藤井文。
 この倉庫カフェのシチュエーションは 人里から少し山の中に入った、小さな工場跡をカフェに改装し、気持ちが疲れた人々が集う場所。廃墟的な、でもすぐ前まで人々が集っていたような、何とも言えない感じを表現できたらと思っています~!
 ——だそうだ。
 なんだか、すごい発想だ。
 がんばって、くださーい!

藤井作品(1/80)


2016年12月6日