下は「大石天狗堂」の壁絵(未完成)である。映画「ねじ式」(原作つげ義春)の背景美術として、今週つくりはじめたばっかりの、ひさしぶりの新作だ。(縮尺1/7)。
この映画へは、うちのグルーブから6名もの協力者が名のり出て現在汗をかいている。しかしわたしだけは汗をかかなくてもよいという約束になっていたので、安心していた。ところがある日の打ち合わせの際に、うちのクラブのU氏とY氏から「この壁のシーンだけは先生がやってくれませんか‥」と、ネチっとした目で促され、黙っていたら、どうもそんなことになってしまった。
大石天狗堂とは寛政12年創業の京都のかるた屋でトレードマークは天狗の面だ。(強精剤とはなんの関係もない)。このかるた屋がつくる花札は、おもにバクチに使われるため、下のほうに20貫などと訳のわからない数字が書いてある。貫(カン)とは江戸時代には現金をあらわす単位として用いられ、20貫とは賭博場で使われる「20貫札(ふだ)」のことであろう。
まだまだ完成にはいたらぬが、壁絵としてはどうにか及第点が採れたものと安心していた。そしたら沼津のU氏から「天狗絵はてっきり木板(きいた)の上に描いてあるものと思っていました」などと予期せぬツッコミがはいり、あせった。
あわてて原作のマンガをよく見ると確かに木板のようでもある。だがここは室内の場面だ。ふつう室内に木板の壁はつくらない。
面倒くさいのでつくり直す(描き直す)つもりはないのだが。