「頼みます、伊東屋さん‥」

 一年ほど前、銀座で展示中の伊東屋を見に行ったとき、作品にカビが生えているのを発見。黒かったハズの店内の床は、カビが繁殖して、ほぼ真っ白になり、それは手前の石畳のほうへもかすかに進んでいた。
 このときは、そのことを一階のインフォメーション・デスクで説明し、ハケで払うよう、担当者に伝えてほしいと頼んで帰った。
 それから一年たって、その後どうなったのかと、先日わざわざ銀座まで見に行った。そしたら状況は一年前となんら変わっていなかった。まったくなにも処置されてなくて、かといって症状が広がっているわけでもなかった。だが一度カビ菌がついてしまった以上、いつまた発展に転じるかも知れず、相変わらず心配である。
 カビなんてハケで払えばカンタンに取れるのに、伊東屋の社員は誰もそんなことをやりたがらないのだろう。困ったもんである。担当者に宛てて、手紙でも書いて縷縷説明するしかないのか、放っておくとカビはどんどん拡大し、そのうち作品全体を覆うことになりかねないということを…。(担当者の名前が分からないので、まだ手紙は書いていません)。
 自分の作品「ワンス・アポン・ア・タイム」にも、むかしカビが生えたことがあった。あれよあれよという間に地表のすべてがカビで覆われ、しばらくは、ただ呆然と手をこまねいて放置していたが、あるとき意を決し、それら全部をハケで払ったところ、あっさり元通りの地表に戻り、以後ずっとそれをキープしている。
 いまは正に梅雨。カビのシーズンである。
 もし作品にカビが生えたらハケで払えば簡単に落ちます。
 頼みますよ、伊東屋さん‥。

 
店内部の床はカビでほぼ真っ白だ。手前の石だたみの上にも白い粉のようなものがちらほらと見える。2024/7/5日。

「ヤバいことになったぞ」

 ある日の午後、長い昼寝から覚めて仕事場へ戻ると、見かけぬ若い女性が部屋の真ん中につっ立っていた。
 「どしたの ?」って聞いたら、ヘンな日本語が返ってきた。多分中国人なのだろう。彼女は「ギャラリーが見たいです」とだけ言い、それ以外喋らなかった。
 「予約メールは ?」
 と尋ねたが、返事はない。
 悪い人ではなさそうだったので、希望通りギャラリーへお通ししたところ、予想以上に長いこと作品を見ていて、なかなか出てこない。やがて4〜50分が経ったころ、やっと彼女は出てきた。よほどギャラリーが気に入ったのか、さっきよりは打ち解けた表情をしている。
 そこでわたしは彼女に、どうしてここを知ったのか、その理由を、英語と日本語のチャンポンで尋ねた。すると驚きの答えが返ってきた。
 なんと彼女はGoogleマップのアプリでここを知ったという。
 拙宅の最寄り駅はJR山手線田端駅だが、ここにはむかし芥川龍之介が住んでいて、駅前に「田端文士村記念館」という施設がある。彼女はそれを見に田端へ来て、Googleマップで記念館に辿り着き、一通りの展示物を見たあと、同アプリで近隣の施設を検索したところ「ギャラリーICHIYOH」を発見 !  サブタイトルには「入り口から隠れ家感が満載でわくわくします」とあり、写真もいっぱい載っていた。
 うちのギャラリーがそんなところで紹介されているなんて、このときはじめて知った。しかも昼間は常に「営業中」と表示されているので、それを見て、彼女は躊躇なくドアを開け、中へ入ってきたようだ。
 思えばその一週間ほど前、旧古河庭園でバラを見た帰りだとおっしゃる知らないおじさんが突然入って来て、「ギャラリーを見たい」と言ったことがあったが、あれもそうだったのだと、いまわかった。
 いくら暑いからって今後はパンツいっちょじゃいられんなあ。
 おちおち散歩にも出かけられん。
 ヤバいことになったもんだ。
 ——みなさん、来る前には、あらかじめ連絡をくださいね。
 https://vimeo.com/901382085/c2813321d0?share=copy

「隠れ家感満載」と評された非常にボロいギャラリーの入り口。看板の真ん中の上の方に、ちょっとわかりにくいけど、ちゃんと「Entrance」(入り口)と表示されています。

「火の見やぐら」

 去年スタートし、現在開催中の「孤独の世界/制作教室」(1/80)ですが、あと少しで作品が完成します。するとこの教室は解散するしかありませんが、まだやめたくない、続けてなにか別のものをつくりたいとおっしゃる方が、いらっしゃるかもしれません。そんな方々に対応するため、次の課題作としてオール真鍮製の火の見やぐら(1/80)を考えているのですが、果たしてこれにどれくらいの参加者がいるのか ?  ある程度人数がまとまれば、やってもよいと考えているのですが…。
 ときどき教室OBの元生徒諸氏から、「また1/80をヤルときには呼んでください」という声を耳にしますが、もし「火の見やぐら」でよかったら、ぜひお申し出ください。もちろんOBでなくともOKです。
 要項は以下です。

 制作課題: 「火の見やぐら&手押式消防ポンプ」(1/80)
 開催場所: はがいちようの駒込スタジオ
 開催日: 原則月1回土日祭日の午後開催
   (初回講座終了後に次回の開催日を決めます)
 参加料: 一回11,000円(消費税込み材料費別)

 かなり難しい課題です。最後に取り組んでから10年以上の歳月が経ち、こちらもだいぶん老化してまいりましたので、もしかするとこれが最後の火の見やぐらになるかもしれません。
 参加希望者は、はがまでメール(ichiyoh@jcom.zaq.ne.jp)をください。質問等も受け付けてます。

1996年のある日の夕方、突然火の見やぐらがつくりたくなり、まったくなんの資料も見ずに、ただ頭の中のイメージだけでつくりはじめ、朝までには大方のかたちが出来てしまいました。改めて眺めると、それはエッフェル塔のような曲線で形成され、日本型とは幾分かたちが違うことに気がつきました。しかしそのまま「はが形」として採用し、以後かたちを変えていません。

「ミニチュアショウのこと」

 みなさんもうご存知かと思いますが、下記要項により来月浅草でドールハウス・ミニチュアショウが開催されます。

 タイトル: 第26回/東京ドールハウス・ミニチュアショウ
 日程: 7月13日(土)/昼12時〜午後5時
      14日(日)/午前10時〜午後4時
 会場: 東京都立産業貿易センター台東館の6Fと7F
 6F入場料: ¥2,500〜¥500 (時間帯によって値段が変わります。)
    7F: 入場無料
 主催: 東京ドールハウス・ミニチュアショウ実行委員会
 お問い合わせ: Dollhouse Galleryミシール(03-3816-6977)
 https://www.dollshouse.co.jp/ticket-information2/

 6階の有料フロアーにはドールハウスミニチュア関連のグッズが並び、7階の無料フロアーには、シルバニア・ファミリーや、鉄道模型など、ホビー全般の商品が並んでいるそうです。 
 初日オープンから午後2時までと、2日目のオープンから昼の12時までの間、6階の有料フロアーに入るには先行入場券(¥2,500-)が必要です。(Livepoketで買えます)。しかしそれ以外の時間帯は、当日券(¥1,500-)で入場できるとのことです。
 今回わたしは出場いたしませんが、ぜひお出かけください。
 希望者には入場券(下の写真)を差し上げますのでご連絡ください。
 ただし先着です。

この券で初日の2時以降と、2日目の12時以降入場できます。

「まいりました」

 小生、日曜日(9日)の朝に大量の下血がありまして、あわてて近所の大学病院までタクシーで駆けつけたところ、そのまま緊急入院させられてしまい、いま非常にまいっているところです。
 それから一泊、二泊、三泊し、ただいま水曜日の午後1時50分です。
 おかげさまで出血はすっかりおさまり、腸の損傷も治癒いたしましたが、どういうわけか一向に退院の許可が降りません。なんとか金曜(14日)の午前中までにはここを出たいと願っているのですが、まだよくわかりません。もちろん病院のメシは超まずいし、Wi-Hiの電波が非常に薄くて、(病室の位置によって電波の強弱があるらしく)、まともに動画が見られません。
 ヒマでヒマでしょうがない。
 一刻も早くここを出て、いいちこが飲みたいです。
 ★いまのところ日曜日(16日)の「ブーランジェリー制作教室」は開催するつもりですが、もし退院が遅れた場合、非開催になるかもしれません。その場合は改めて各自宛に直接ご連絡いたします。
 よろしくご理解のほどお願いいたします。

入院当日の病室からの眺め。

「チョキギャラリークラフト」

 以前にも一度か二度ご紹介したことがあったが、関西のハサミメーカーがインスタグラム上に運営している「チョキギャラリークラフト(chokigallery_craft)というウェブページがあって、チョキチョキとハサミを使って仕事をしているクラフトマンやクラフトウーマンたちを次々とフューチャーしている。
 4〜5年前にわたしも一度か二度取り上げられたことがあり、そのときはハサミで洋白のシートを切って、バケツをつくるパフォーマンスを披露した。
 https://www.instagram.com/p/B96LHOTHsMv/?hl=ja
 この映像を気に入ったわたしは、その後「ギャラリーICHIYOH」の宣伝映像
 https://vimeo.com/901382085/c2813321d0?share=copy
 や、2月の有楽町展のときにも、宣伝動画の撮影を依頼するなど、ハサミとは関係ないところでも、チョキさんには色々とお世話になっている。チョキのカメラマンは関東在住の吉川(きっかわ)という人で、吉川さんはつい先日も、ぼくの教室を取材してくれ、短い映像をつくってくれた。
 https://www.instagram.com/p/C7jA1ouvk-C/?hl=ja

 上の動画は本日6月4日現在「チョキギャラリークラフト」のトップページに掲載されているのでインスタをやっている方はぜひチェッくしてみてください。そしてわたしの動画から少し下方にスクロールすると、ドールハウスギャラリーの「ミシール」さんや、「ノエカフェ」の一色さんなど、ミニチュア界の有名人が続々登場します。
 ちなみに下は、取材当日に吉川さんがサービスで撮ってくれた「第5次ブーランジェリー制作教室」のみなさんの写真です。

左から: ヤマザキ・アキコさん、フクダ・アヤさん(川越から)、カネコ・マリさん、ユグチ・マリナさん(飛行機で松山から)、イシハラ・アキコ(世田谷の奥沢から)さん、スズキ・ケンジさん、タカハシ・トシアキさん、と HAGAの面々。(当日欠席者一名)。

「伊勢丹展の写真」

 元生徒Sさんは毎回これを読んでいるらしい。訳あって彼とは定期的に会う機会があるが、会うと必ず当欄のはなしになる。
 先日は、前々前回ここに書いた新宿伊勢丹でのはが展に「キャフェ・ル・マルソワン」が初出演したという記事が話題になり「伊勢丹展の写真は見れないの?」と聞いてきた。
 ぜひお答えしたかったが、なにしろ当時は銀塩カメラの時代だ。データとしては保管しておらず、その場でスマホで見せらなかった。帰宅後にゴソゴソ探したら案外あっさり紙焼きの写真が見つかった。下が1996年、新宿伊勢新館8階のファインアートサロンで開かれた「芳賀一洋展」の様子である。
 伊勢丹からの要望で、このときはじめて「立体画」(アートインボックス)を制作し、展示した。しかし絵の周囲にはまだフレームはなく、イーゼルもないので、作品がふた回りほど小さく見える。とはいっても普通の絵と比べりゃ遥かに重いので画廊の壁に吊るすのが大変だった。まずはじっくりと順番を考え、吊るしたあとも、微調整のため、ちょっとずつ、上下左右に動かさねばならない。その苦労たるや尋常ではなく、深夜からはじめたディスブレーの作業が朝までかかったことを思い出す。これに懲りて、以後立体画の展示はすべてイーゼルを用いるようになった。
 下段の写真の、左から2番目に吊るされている作品が、初代「キャフェ・ル・マルソワン」である。
 Sさんは、これら立体画をわずか95日でつくったことにも興味を示してくれたが、実はそのことについては、拙著「続・木造機関庫制作記」(私製本)の中で詳しく述べた。ところがその本は、売り切れて、手元には一冊もなく、お読みいただけないのが誠に残念。
 今度印刷したら必ずお知らせいたします。


【上段の写真】壁の左から: 「ジャニンの洗濯屋①」、「ビクトルユーゴ通りのブーランジェリー」、「ジャニンの洗濯屋②」、「BAINS/2月のパリ」、「ベランダの情景」、「セーヌフルール」、「シェルタリングスカイ」、「チャーリーの散髪屋」。【下段の写真】壁の左から: 「パラプリエ」、「キャフェ・ル・マルソワン」、「ジャニンの洗濯屋①」、「ビクトルユーゴ通りのブーランジェリー」、「ジャニンの洗濯屋②」、「BAINS/2月のパリ」。(2枚の写真が若干ダブっています)。