「トキワ荘制作記」

   2001年に最初のトキワ荘をつくったときには苦労した。石巻市のマンガミュージアム・石ノ森漫画館からの制作依頼だったので、ちゃんとしたものをつくらねばならなかったが、すでにトキワ荘は取り壊され、図面もなく、つくるべき正確なかたちがわからなかったからだ。マンガ家たちが描いた絵や、いくらかの写真が残されてはいたものの、どれも決定的ではなかった。写真といっても建物全体を捉えたものはなく、部分部分がバラバラに撮られたものばっかりで、しかもまったく写っていない箇所もあり、いまいち全体像がつかめなかった。
   そんな中、当時このアパートにお住まいになっていた女流マンガ家・水野英子先生からの貴重な証言を得たり、トキワ荘の元大家だった天野喜秀氏から直接ご説明を受けたりしながらの、試行錯誤の末に、同年5月、なんとか完成に漕ぎつけることができた。
   その年の暮れ、わたしはこのときの苦労ばなしを綴った「メイキング・モデル・オブ・ザ・トキワ荘」という制作記を、雑誌「DDD」への連載を目的に執筆した。
   その後その苦労談を和綴本に仕上げた同名の制作記を、うちのクラブの「ままや」さんにつくってもらい、拙展会場や、イエサブなどで販売した。しかし一冊ずつ手で綴じた本なのでどうしても高価にならざるを得ず、(税込み一冊3,300円)、あんまり売れなかった。
   それから20年経った去年の暮れ、今度は沼津のゆうさん編集によるかっこいいデザインの、新「トキワ荘制作記」が、リバイバルリリースされることになった。(下の写真)。こちらは税込み2,640円と、和綴本よりはちょっとは安くなっている。
   購入希望はご連絡ください。
   いまのところアマゾンではかえませんので。

 
上の本は、赤い表紙の和綴本「メイキング・モデル・オブ・ザ・トキワ荘」と内容がほぼおんなじです。
20年前、その和綴本を読んだという小学館の編集員の方(残念ながら名前は失念)から丁寧な手紙が届いた。開封すると「ぜひ弊社から出版したい」と書いてあり、当人は元藤子不二雄担当の記者だという。トキワ荘の時代のことがとても懐かしいとも述べてあったので、わたしは大喜びし、ワクワクしながら待機していたところ、後日届いた手紙には「編集会議でボツになり大変申し訳ない」とあり、大落胆した。だがどうしても最初の手紙を捨てられず、ずっととってあった。
本日これを書くにあたって、その方の名前を調べるために、必死でその手紙を探したが、残念ながら見つからなかった。そのとき、もしこの本が出版されていたら、わたしはその後「伊東屋制作記」や「石の家制作記」なども書くことになったかも知れず、その後の人生が少しは違っていたかもしれないのだがm2zu%x)qMQSHUbTTdm)&nUOR。