「しかしトラックは何処へ?」

   大作「風に吹かれて」の電信柱が折れてしまったことを以前ここに書いた。(5/17日付け当欄)。その修理のため、作品はその後ずっとわたしの目の前に置いてあり、正直言ってジャマでしょうがなかった。一刻もはやくどかしたい一心で懸命に修理したところ、ご覧のようにほぼ元通りに直すことができた。(下の写真)。さっそく搬入のプロである山ちゃんに頼んで2トン車を手配し、箱に収納して倉庫へと運んだ。
   しかしなにしろ作品がデカイので一番奥にしまわなけりゃならず、まずは手前にある箱をいったんぜんぶどけた。大小あわせて箱は50個もあり、どけるったってたいへんだ。
   そんな作業のついでと言っちゃあなんだが、この際ついでに、もうひとつの大作「ワンス・アポン・ア・タイム」の箱を、おっかなびっくり開けてみることにした。この作品の地面にはダイキャスト製のトラックが一台置いてあり、2月の有楽町展のときには確かに置いてあった。だが無接着のため撤収時には地面から外して、作品とは別のパーツボックスにしまうことになっている。ところがそのトラックが、ここ数ヶ月、行方不明なのである。もしかしたらしまい忘れて作品と一緒に箱の中にあり、暴れて、日の見やぐらや電線をぶっ壊しているのではないか、などと考えると背筋が凍る。あまりにも恐ろしく、覗きたくてものぞけなかったその箱を、とうとう開けてみたのだ。(小生腰痛につき山ちゃんが開けた)。
  「先生、どこも壊れてないですよ‥」
   パアーッと明るいLEDライトを片手に、箱の隅々まで照らしながら、のん気な声で山ちゃんがそう言った。
  「トラックは?」
  「どこにもありません」
   と、山ちゃん。
   どうも「ワンス・アポン・ア・タイム」は壊れていなかったようである。
   そして「風に吹かれて」も元通りの姿になった。
   めでたし。めでたし。

5月の中旬から修理をはじめて、終わったのは5月末だった。考え考え、少しずつ、慎重に進めていたので、延日数として、どのぐらいかかったのか、よくわからない。最初に破損を見たとき「修理は無理」と思ったが、なんとか元通りにすることができて、正直ほっとしている。