DC-3はNGだった

 (10/23日付記事の続きです)
 マンガ「ねじ式」のファーストシーン上空には真っ黒に描かれた大きな飛行機が飛んでいる。その黒い絵から機種を特定してほしいといわれ、わたしは東京ソリッドモデルクラブのテッシー氏に連絡した。ほどなくそれが米軍のダグラスDC-3だとわかり、さいわいプラモデルが市販されているので、つくるのはそうむずかしくないとのこと。その旨を才谷監督の右腕であるA氏に報告すると「ぜひつくって下さい。プラモでOKです。原作通りの絵にしたいので、飛行機のディティールはほとんど見えませんので」とおっしゃった。
 結局テッシーがプラモをつくり、できあがった飛行機(1/72)を持って、先日阿佐ヶ谷の監督の事務所にお邪魔した。
 到着後ただちにテッシーを紹介すると彼はさっそく飛行機の説明をはじめた。そのとたんに場の空気が一変。ブツを見るなり監督からビシバシとスルドイ突っ込みが入り、あっというまに持参したダグラスDC-3は見事NGの海に沈んでしまったのである。監督曰く「50年前の特撮ゴジラの飛行機みたいだ」。曰く「ミッドウェイ(今年公開された映画)と比べ見劣りがする」等々、NGワードのオンパレードである。また「カメラはできるだけ機窓に寄り、中に乗っている人の気配までを感じさせたい」や、「おなじ飛行機がベトナムに飛び、ナパーム弾を打ち、人を殺す」など、など。
 な〜んだよ、A氏の言ったことと、まったく違うじゃん!
 つくったテッシーが怒り出すんじゃないかと心配したが、ぜんぜんそんなことはなかった。けっきょく説明(監督演説?)は2時間以上におよび、そのあと全員で近所のホルモン焼き屋へと移動。大量のNG砲が飛び交った割には、なぜかテッシーと才谷氏の相性はすこぶる良く、次の飲み会(映画会?)の約束まで交わしていた。ならちょうどよい。
 「飛行機のことはお互いに直接連絡をとり合って、あとは勝手に進めてくださいね」
 と、飲み屋の出口で、おふたりに告げ、わたしはもう飛行機のことは考えないでもよいことになった。
 あーよかった。

ホルモン焼き屋@阿佐ヶ谷。左列奥が才谷監督、左列手前が右腕A氏、右列奥がHAGA、右列手前がT氏。