映画初出演

 大丸須磨展の準備に追われていた11/3日、拙作「靜(しず)の部屋」の所有者である「(株)ふゅーじょんぷろだくと」から電話があり、いま制作中の映画にワンカットだけ、この私に、出演してほしいという依頼があった。ちょうどその時は須磨会場での「靜の部屋」展示を計画中で、近々そのことをふゅーじょんさんにお願いに上がらねばならぬと思っていた矢先だった。そんなタイミングでの向こうからのご依頼である。内容にたじろいだものの、キッパリ断ることができず、つい、わかりましたと答えてしまった。
 撮影は3日後の11/6日(火)。午後3時。阿佐ヶ谷で。時代設定は明治後期。衣装は自前。ギャラなし。わたしの役は汽車の乗客だそうだ。
 ひゃ~、めんどくさい、電話を切ったあと、はじめてことの重大さに気がついた。そもそもわたしは着物を持っていない。ならば弟(義弟)に頼んでしまおうと画策していると、そこにひょっこりシブいおっさんが顔を出した。本郷にお住いの現役生徒フジシタ・ケンジさん(69歳)である。
 「フジシタさん、着物、持ってる?」
 わたしはすぐ彼にそう尋ねた。すると「持ってるよ…」と、言いながら、フジシタさんはスマホをかざし、着物姿の自撮り写真を見せ、ニヤッとした。「おお! これはいい!! フジシタさん、火曜日の午後にちょっとだけ映画に出てくれない? ぼくが責任を持って現場までお連れしますので‥」
 これでキマッタと思った。フジシタ氏はたのまれて雑誌のモデルをやったことがあるほどの熟年グッドルッキングである。
 ところが…
 「ダメ、ダメ、火曜日は、第九の合唱の練習がある日なの」
 「第九なんて、断りゃいいじゃん」
 「いや、ダメ、ダメ、」
 結局フジシタさんには断られ、義弟にも断られ、仕方なく愚生がはじめてムービーカメラの前に身を晒した。着物はフジシタさんからの借りものだ。着るのが超めんどうくさかった。おかげで須磨の会場には計画通り「靜の部屋」が並び、下の写真はフェイスブックで538いいねが付いた。

映画題名: ニッポニアニッポン
いつ公開されるか知りません


2018年12月9日