近況①「鉄道物語」

 ひさしぶりにきょうは近況報告三本立てだ。
 三本とも拙作にかんする掲載誌の紹介である。
 最初は「Railway Art 鉄道物語」という鉄道写真満載の写真集のこと。この写真集の第二部に、鉄道絵画や模型作品も掲載されていて、そこに拙作「真岡駅」が紹介されている。
 まことに素晴らしい写真集である。ちょっと高いが(定価3000円)てっちゃんたちには絶対おすすめの一冊、しびれるような写真がいっぱい載っている。

「Railway Art 鉄道物語」より
発売:㈱ARTBOX

近況②「月刊『悠+』(はるかプラス)8月号」

 今月の「月刊・はるかプラス」での掲載作品は「白い石炭商人」。
 —–以下記事より。
 上はおととし完成したアートインボックス作品(縮尺12分の1)である。1945年にフランスで発売された写真集から、左の写真をもとに制作した。
 看板に「AU BOUGNAT BLANC」とあるが、これを直訳すると「白い石炭商人」という意味になる。しかしなんでそれが店の看板になっているのか、たまにファンメールをくれるフランス人にたずねて、やっとその答えがわかった。
当時は石炭の時代である。多くの石炭商人たちが町を闊歩していた。概して彼らは大酒のみで、リカー酒に白ワインを混ぜて飲んだ。転じてその酒が「白い石炭商人」と呼ばれるようになったのだそうだ。
 つまり看板に「清酒・白鶴」と書いてあるようなものである。

 以上、この連載ページでは、3回つづけてアートインボックス作品を紹介したので、次回9月号では、すこし目先をかえて「石の家」でも取りあげようとおもう。

「悠+」(はるかプラス)8月号より
発行:㈱ぎょうせい

近況③「悠日2号」

 雑誌「悠日」の第2号が発売された。今号では拙作「ニコレットの居酒屋」が紹介され、この作品を説明するために、毎度お馴染みの制作秘話を、改めてまた書いた。はじめて読む方もいらっしゃると考え、少し長いが下にその全文を掲載する。
 以下本文。
 2006年10月20日、禁煙グッズ「ニコレット」の新しいテレビCMを制作中という方から連絡があった。
「今度のCMでは背景に居酒屋を使う予定だが、それをミニチュアでつくりたいのです…」
 聞くと撮影は11月9日と決まっていて、これは変更できない。すると制作には最大でも18日しかかけられない。ミニチュアが無理ならば実物大のセットを組むつもりだという。四の五のを言っているひまはないようだ。無謀にもOKしてしまった。
 ニコレットのテレビCMのことはご存知だろう。不気味な顔をしたタバコのお化けが登場するあのCMだ。このとき制作を試みていた新バージョンは、背広姿のサラリーマンが昼食を終えたあと一服したくなり、そこにタバコのお化けがあらわれ、誘惑するというストーリー。したがってこのとき依頼されたのは、居酒屋ではあるが昼は定食サービスもやっている、庶民的、大衆的飲食店の内部造作をつくることだった。大きさや、かたちなど、すべてまかせるとのこと。
 さっそく行きつけの飲み屋へと走り、店内のディティールを調査し、あっさりとした絵を書いた。そんなことに貴重な数日を費やしたあと、その絵に似た、やや小ぎれいな店を目指して制作をスタートする。まずは30個ほどのイスがいるので、それからつくりはじめた。
 その直後、CM監督がお気に入りだという墨田区森下町にある「山利喜」(やまりき)というもつ焼き屋の内部写真がとどいた。なんとも殺伐とした店の雰囲気である。なら早く言ってくれよと思ったが仕方がない。急遽小ぎれいムードから殺伐ムードへと路線を変更し、以後、不眠不休の突貫作業を経て、作品は撮影当日の朝5時に完成、ただちに二子玉川の撮影スタジオへと運ばれた。
 上がその居酒屋である。
 イスやテーブル、床、壁、天井や、カウンター席や、食器収納用の戸棚や、業務用冷蔵庫や、旧式のエアコンなど、基本部分はぜんぶぼくがつくった。しかし、なにしろ時間がない。食品や、調味料や、皿や、箸や、どんぶりといった小物類は、同業者・よしだともひこ氏に制作を依頼、目の覚めるような値書きビラもよしだ氏の作である。
 —–実際のCM映像は、実写撮影による人物との合成によって制作され、06年年末から07年年始にかけてしきりにオンエアーされた。

 以上がぼくのページだが、「彫刻家山田康雄の木の美術館を訪ねて」という巻頭特集や、「古民家で味わうイタリア料理のこと」など、栃木で悠々と暮らす自遊人たちの和題満載の雑誌「悠日2号」は、ギャラリー悠日が制作している。東京ではなかなか手に入らないと思うので、ほしい方は直接Hagaまでご連絡ください。

雑誌「悠日2号」より
発売:ギャラリー悠日


2010年7月25日