いつでも嫁に

 「あるマンガ家の住居」(略して「あるマン」)がまたひとつ完成したということを前々回書いた。(5/27日付当欄)。わたしはこの作品を過去3回つくったが、最初の2作はすでに嫁に行き、3作目を現在展示用として使っている。
 「どの作品が好きですか?」
 などとエキシビションの会場で尋ねると、たいがいの客は「東屋」(あづまや)と答え、その次が「ニコレットの居酒屋」か、あるいは「あるマン」だ。ここ10年ほどこれは変わらない。
 先日もぼくのギャラリーで、ある客が「あるマン」を眺めながら「わたし、これ、好きなの‥」と言った。みなさんそうおっしゃいますよ、と悠長にお答えしたところ、なんと彼女は、それを「買いたい」という。
 「えええ〜っ!!!」
 客の目はマジそのもの。相当びっくりしたが買うという客に売らぬとは言えない。だが展示中の「あるマン」は、客の目線にあわせるため、台(ペース)を異常に高くつくってあり、自宅に置くには邪魔だろうと申し上げ、幸いつくりかけのもうひとつの「あるマン」が倉庫にあるので、それに低いベースを取り付けて、至急仕上げることを約束した。かくしてこのところ人生4作目の「あるまん」に挑んでいた。が、なにしろコロナ禍である。ほとんどの教室が自粛に追い込まれたこともあって、思ったよりもスイスイ進み、おかげで予定よりも早く完成した。
 もういつでも嫁に行けます。
 (下の写真)

 そういうわけで「あるまん」は過去4回つくったが、マンガアパート・トキワ荘は5回もつくっている。月末には「トキワ荘講演」も控えていて(5/1日付記事あり)このところ仕事はみんなマンガがらみ。更にいえば「あるマン」の室内に散らばっているマンガの原稿は、1作目からずっとつげ義春の「腹話術師」を使っている。つげと言えばいま映画化が進んでいる「ねじ式」の原作者だ。どういうわけか小生はその映画の背景も手伝っていて、本日この日も夕方そのことで映像監督が打ち合わせに見えることになっている、等々、等々、やることなすことすべてマンガがらみの今日このごろである。