アフマドはひょろっと背が高くバシッと髭が濃い。
さっそく、折れた木の修理をしたいと申し出ると
「パッキングのときに何かにぶつかっちゃったらしいんだ…」
まるで他人事のようにサラッと答えた。
たぶん召使のうちの誰かがやらかしたんだろう。彼が自分でパッキングなどするわけがない。
結局その作品は、僕がいったん東京へ持ち帰って修理し、直ったらすぐに送り返すという手筈になるはずだった。ところがその直後、アフマドの口からぽろっと次の一言が出た。
「今度いつカタールへ来るの?」
すかさず
「今の仕事(※注)が終わったら…」
と答えると
「いつ終わるんだい?」
「たぶん来年の2月には」
「OK!じゃあそのときにもってきてよ…」
な~んてことになり、直った作品をぶら下げて、2月にまたカタールまで出かけることになった。
(※注:仕事とはアフマドからの依頼で制作中の「馬具店」。)
このたびのショウにおけるディーラー数は約160、みんなわりと小さなテーブルをならべていた。規模的にはシカゴ・ショウの半分程度と見たが、さすがヨーロッパである。品ぞろえはこっちのほうがよかったように思う。せっかくなので小生も500ポンドほどの買い物をし、売り上げに協力した。
ちなみに日本人はまったくと言ってよいほど見かけなかった。代わりにときどき見た顔のフェイスブック・フレンドと遭遇し、その都度握手を求められた。いちようブランドの人気もまんざら捨てたもんではないと実感し、気を良くした。
次はパリか、マドリッドあたりのショウを覗いてみたい。