泥沼に足を踏み入れ…

 大人気の「特撮博物館」を見るために江東区の東京都現代美術館へと出かけた。
 東京駅からのバスを乗り間違え、しょうがないからタクシーで現地へと向かった。するとどういうわけか美術館の裏口で降ろされてしまい、仕方なくそこから正面玄関まで、石畳の舗道の上を200メートルほど歩くはめになった。ところがである。この舗道がめちゃくちゃ歩きにくいのだ。出っ張った敷石とへこんだ敷石が、わざと不揃いにならべてあって、表面がまるでデコボコだからである。
 一発でそれにしびれた。
 その後次第に思いは募り、いまやっている作品の舗道に応用できないものかと考えるようになった。すなわち、すでに並んでいる敷石のうちの、いくつかの石の表面にパテを盛って出っ張らせ、別のいくつかの表面を削ってへこませれば、なんにもやらない石をふくめて、都合三段階の高がつくれることを思いつき、やってみた。最初は半信半疑だったが、出来上がったら大成功。デコボコの敷石がきっちり存在感を示し、うっとりするような出来栄えだった。
 そこまではよかった。
 すると今度は旧作の舗道が見劣りするようになり、しょうがないからいま片っ端から直している。間違ってタクシーを裏口で降りてしまったために、とんだ泥沼に足を踏み入れることになったのだ。

デコボコの敷石

2012年9月1日