「涼しくなったので‥」

 「ル・アトリエ・デ・イチヨウ」(いちようの作業場)という作品がある。
 店頭にM・I・C・R・O・C・O・S・M・O・Sと、一個ずつのアルファベットをアーチ状に並べた看板(オブジェ?)が目印の作品だ。
 この看板、カッコはいいが、いかにもこわれ易そうで、最初っから心配だった。そしたら案の定こわれた。ある日「I」の一文字が取れてなくなっているのを発見 !  それからもう一年以上が経つが、億劫な気持ちが先にたち、どうしても直す気が起こらなかった。
 それを、おとといの午後、突然意を決っし、あっと言うまに直してしまった。
 下の写真を見てほしい。
 まずは作品をひっくり返して、右上の「M」をクリップではさみ、次に「C」をはさみ、MとCの真ん中に、取れちゃった「I」を置いて、その根元にほんの少量のハンダを流し、それでおしまい。「I」なんて、ただの棒だから、つくるのに手間はいらない。ぜんぶで10分とかからなかった。やろうかやるまいか一年も悩んだというのに、である。もっとも作品をスタジオへ運び入れたり、作業の準備を整えたり、あと片付けまでをも加えると、なんだかんだで10分の10倍かかったかも、ではあるが‥。
 ま、だいぶん涼しくなったので、こんなことをやってられる。

「ドールハウス・フェスタ」

 ドールハウス協会の相澤和子会長より来年開催予定のイベントに関するチラシがドッサリ届きました。
 2026年の3月15日(sun)に、都立産業貿易センター浜松町館2階の展示室において、恒例の「ドールハウス協会フェスタ」が開催されますが、現在、このイベントへの参加者(出展者)を募集している、とのことです。
 概要は以下です。

 1: 出展者は以下の物品を展示販売することができます。
   ドールハウス全般・ドールハウス小物・ミニチュア全般
   人形(1/6以下)・人形関連の作品・ぬいぐるみ
   模型・材料・素材・ハンドメイドパーツ・等々

 2: 出展テーブルは以下の2種類です。
   大テーブル: 幅1,800 x 奥行900 x 高さ740 mm
        (値段: 会員12,000円、一般18,000円)
   一般テーブル: 幅900 x 奥行900 x 高さ740 mm
        (値段: 会員6,500円、一般10,000円)

 3: 募集受付: ドールハウス協会の会員は25年9月1日より受付開始。
      一般の方は25年10月1日より受付開始です。

  ——–みなさんもふるってご参加ください。
  出展希望者は下記の申し込みフォームよりお申し込みを。
   https://festa.dollshouse-association.jp/join/

「騒ぎはつづく」

 夏の参院選の直前に「選挙に行こう!」というタイトルの記事を書いた。みんなで選挙に行って、あのネバネバした石破政権を一刻も早く退陣に追い込もうという内容の記事だった。実はそのあと「総理ついに辞任!!」いう記事もつづけて書きたくて、手ぐすね引いて待っていた。ところがどっこい、選挙では見事に負けたものの、その後一ヶ月半以上にわたって総理の座にしがみつき、その潔よくない行動によって、いつまでたっても「辞任」の記事は書けなかった。だがしかし7日の日曜日、とうとう彼は泣きそうな顔で会見し、ついに自民党総裁の職を辞することを表明した。
 バンザーイ! バンザーイ!! バンザーイ!!! と叫びたいところではあるが、彼は自民党総裁の職を辞すと言っただけで、日本国首相(内閣総理大臣)の職まで辞すとはまだ言っていない。なので、あとしばらくのあいだ、何かにつけて、またネバネバするんじゃないかと心配で心配でしょうがない。
 しかしまあ一応辞任はしたので、本日やっと念願の「辞任記事」を書くことが出来た。これで一気に政局は「次の総裁は誰?」ってことに衆目が移り、まだまだ、まだまだ、騒ぎはつづきそうである。

「ネジ式美術セット展へ行って来た」

 つげ義春が1968年に発表した名作マンガ「ネジ式」を、ストップモーションアニメ(コマ撮り撮影によるアニメーション)で映画化しようとしている方から、映画の背景をミニチュアで制作してほしいと依頼されたのは、緊急事態宣言が発出されていた2020年春のことだった。
 ネジ式は約70コマほどのカット割りで構成された短いマンガだが、つくらねばならぬ背景は30シーンほどある。映画の公開日を尋ねると「2021年秋」とのこと。それまでに30もの背景はとてもつくれない。時間的にムリですとお断りしたところ、「はがさんがダメなら、はがさんの教室のどなたかを紹介していただけませんか…」と言われ、そのことを、そのまま2020年8月8日付の小欄に掲載した。すると渋谷クラフト倶楽部のヤマノ会長と沼津のユウさんの2名が「わたしがやります」と名乗り出てくれた。
 上の2名の他にもこのときは何名かの適任者が見つかり、結局うちのグループからは計6点の背景作品を提供することになった。
 だがそれ以降「ネジ式」のことはまったくなにもやっていないし、映画も、いまだに完成していない。
 そんな折り、ひさしぶりにネジ式チームから「美術セット展」をやるから見にこないか、というメールがあり、クラブのみんなと一緒に見に行った。
 会場は、中央線の阿佐ヶ谷駅から歩5~6分のところに最近できた「痩蛙学舎」(やせがえるがくしゃ)というヘンなネーミングの変わったビルの3階。会場には以前制作したわれわれの作品ももちろん展示してあったが、誰がつくったのかわからない、おもしろい作品がいろいろあった。下の写真はそのなかのひとつ「目医者通り」。

「あれから一年」

 若いころからずっと腰痛に悩まされてきた。
 もともと脊椎のかたちが悪いことに加えて「椎間板ヘルニア」と「脊椎管狭窄症状」をふたついっぺんに患っている。
 それで、ちょうど一年前の8月28日に近所の脊椎専門病院へ入院し、翌29日に腰の手術を受けた。脊椎と脊椎のあいだにチタンのスペーサーを挟んでスキマを広げ、それらを複数のボルトで固定するという、正味5時間半にわたるオペレーションだった。(下の写真、光ってみえるのがチタン)。
 それから一年。
 スキマが広がったおかげで腰の痛みはすっかり消えてなくなったが、その代わり腰が曲がって伸びなくなり、ボルトなど、チタンを押さえるために埋め込んだ他の金属のおさまり具合が悪くて、からだ全体がメチャクチャ動かしずらくなった。だからほとんど歩かなくなり、足の筋肉が急激に衰えてしまった。
 だからせいぜい歩かなきゃならんと、このところ急にあせって、ほんの千歩ばかりの距離を、毎日必死に歩いている。千歩じゃ少な過ぎるとわかっちゃいるが、今はそれが精一杯。

「昭和の挿絵画家」

 当ギャラリーの一番人気だった「あるマン」(正式名称「あるマンガ家の住居」)が去年の春売れてしまい、その部分にポッカリと穴があき、ずっとさびしい気持ちをかかえていた。かといってまた同じものをつくる元気はもうない。
 そんなときハタとスズキ(マサハル)さんの顔が目に浮かんだ。
 「そうだ ! スズキさんは以前生徒展のおりに自身がつくった目の覚めるような「あるマン」を出品していたぞ !!」
 さっそくお会いして「しばらくのあいだ作品をお貸しいただけないか…」とお願いしたところ、彼はこころよくOKしてくれ、内心「ヤッター!」と叫んだものだった。
 それからというもの、受け入れ体勢100パーセントで首を長くして待ち続けた。だがいつまで経っても作品はとどかなかった。
 なんでそんなに時間がかかるのか、最初はよくわからなかった。しかし事情を知っておどろいた。彼はわたしのギャラリーへの貸し出しを決めた日から、憤然と自作の手直しにとりかかり、たくさんの小物を追加でつくって取りつけたり、色を塗りかえたりなどの、本格的リノベーションに取り組んでいたのだった。それらの状況は追って送っていただいた写メによりはじめて知ったが、ただただ恐れ入るばかりで、コメントの仕様がなかった。
 そんな大工事をはじめてから一年以上が経過した今年の夏、やっとすべての工程が終了し、先日スズキさん自らがこの猛暑の中、その貴重な作品を届けてくれた。題名は拙作とはちょいと違う「昭和の挿絵画家」。本作の住人はどうやらマンガ家ではないらしい。
 さっそく高さ40センチほどの台をつくって、台の上に乗せて展示した。(下の写真)。
 ——-スズキさん、素晴らしい作品をありがとう !!!
 みなさんも是非ご覧になってください。ギャラリーICHIYOHで見ることができます。
 https://ichiyoh-haga.com/private-gallery.html

「BAINS/2月のパリ」

 8月11日「トーキングヘッズ叢書」(TH Series)No.103号が発売になった。
 最新号『幻郷の花嫁』では「現実と異界との橋渡しをするような、妖しく魅惑的な存在が紡ぎ出すさまざまな物語を特集。古来からの伝説をはじめ、小説やマンガ、映画、アート、音楽など、多様な視点からそれらを紹介し、そこに秘められたものを解題します」—–という内容だそうだ。
 ——-ぜひお求めください。アトリエサードの発行で、もちろんAmazonでも買えます。(1,650円)。
 今号における「はがいちようの世界」では「BAINS/2月のパリ」という作品を紹介させていただいた。下の写真。(この暑いさなか凍えるような2月の情景で申し訳ない)。
 BAINSはバンと読み浴槽(複数形)の意味。つまり風呂屋(銭湯)のことだ。パリには多くの風呂屋が存在するが、わたしは本作を含めて計3点の風呂屋作品をつくった。本作以外では「トルネ通りの風呂屋」と「ピエールの荷馬車」があるが、今から27年前に、一番はじめにつくった風呂屋作品が本作「BAINS/2月のパリ」である。

トーキングヘッズ誌 No103号より.