「ネジ式の美術セット展へ行って来た」

 つげ義春が1968年に発表した名作マンガ「ネジ式」を、ストップモーションアニメ(コマ撮り撮影によるアニメーション)で映画化しようとしている方から、映画の背景をミニチュアで制作してほしいと依頼されたのは、緊急事態宣言が発出されていた最中の2020年春のことだった。
 ネジ式は約70コマほどのカット割りで構成された短いマンガだが、つくらねばならぬ背景は30シーンほどある。映画の公開日を尋ねると「来年の秋」とのこと。しかしそれまでに30もの背景はとてもつくれない。時間的にムリですとお断りしたところ、「はがさんがダメなら、はがさんの教室のどなたかを紹介していただけませんか…」と言われ、そのことを、そのまま2020年8月8日付の小欄に掲載した。すると渋谷クラフト倶楽部のヤマノ会長と沼津のユウさんの2名が「わたしがやります」と名乗り出てくれた。
 上の2名の他にもこのときは何名かの適任者が見つかり、結局うちのグループからは計6点の背景作品を提供することになった。
 だがそれ以降「ネジ式」のことはまったくなにもやっていないし、映画も、いまだに完成していない。
 そんな折り、ひさしぶりにネジ式のチームから「美術セット展」をやるから見にこないか、というメールがあり、クラブのみんなと一緒に見に行った。
 会場は、中央線の阿佐ヶ谷駅から歩5~6分のところに最近できた「痩蛙学舎」(やせがえるがくしゃ)というヘンなネーミングの変わったビルの3階。会場には以前制作したわれわれの作品ももちろん展示してあったが、誰がつくったのかわからない、おもしろい作品がいろいろあった。下の写真はそのなかのひとつ「目医者通り」。

「あれから一年」

 若いころからずっと腰痛に悩まされてきた。
 もともと脊椎のかたちが悪いことに加えて「椎間板ヘルニア」と「脊椎管狭窄症状」をふたついっぺんに患っている。
 それで、ちょうど一年前の8月28日に近所の脊椎専門病院へ入院し、翌29日に腰の手術を受けた。脊椎と脊椎のあいだにチタンのスペーサーを挟んでスキマを広げ、それらを複数のボルトで固定するという、正味5時間半にわたるオペレーションだった。(下の写真、光ってみえるのがチタン)。
 それから一年。
 スキマが広がったおかげで腰の痛みはすっかり消えてなくなったが、その代わり腰が曲がって伸びなくなり、ボルトなど、チタンを押さえるために埋め込んだ他の金属のおさまり具合が悪くて、からだ全体がメチャクチャ動かしずらくなった。だからほとんど歩かなくなり、足の筋肉が急激に衰えてしまった。
 だからせいぜい歩かなきゃならんと、このところ急にあせって、ほんの千歩ばかりの距離を、毎日必死に歩いている。千歩じゃ少な過ぎるとわかっちゃいるが、今はそれが精一杯。

「昭和の挿絵画家」

 当ギャラリーの一番人気だった「あるマン」(正式名称「あるマンガ家の住居」)が去年の春売れてしまい、その部分にポッカリと穴があき、ずっとさびしい気持ちをかかえていた。かといってまた同じものをつくる元気はもうない。
 そんなときハタとスズキ(マサハル)さんの顔が目に浮かんだ。
 「そうだ ! スズキさんは以前生徒展のおりに自身がつくった目の覚めるような「あるマン」を出品していたぞ !!」
 さっそくお会いして「しばらくのあいだ作品をお貸しいただけないか…」とお願いしたところ、彼はこころよくOKしてくれ、内心「ヤッター!」と叫んだものだった。
 それからというもの、受け入れ体勢100パーセントで首を長くして待ち続けた。だがいつまで経っても作品はとどかなかった。
 なんでそんなに時間がかかるのか、最初はよくわからなかった。しかし事情を知っておどろいた。彼はわたしのギャラリーへの貸し出しを決めた日から、憤然と自作の手直しにとりかかり、たくさんの小物を追加でつくって取りつけたり、色を塗りかえたりなどの、本格的リノベーションに取り組んでいたのだった。それらの状況は追って送っていただいた写メによりはじめて知ったが、ただただ恐れ入るばかりで、コメントの仕様がなかった。
 そんな大工事をはじめてから一年以上が経過した今年の夏、やっとすべての工程が終了し、先日スズキさん自らがこの猛暑の中、その貴重な作品を届けてくれた。題名は拙作とはちょいと違う「昭和の挿絵画家」。本作の住人はどうやらマンガ家ではないらしい。
 さっそく高さ40センチほどの台をつくって、台の上に乗せて展示した。(下の写真)。
 ——-スズキさん、素晴らしい作品をありがとう !!!
 みなさんも是非ご覧になってください。ギャラリーICHIYOHで見ることができます。
 https://ichiyoh-haga.com/private-gallery.html

「BAINS/2月のパリ」

 8月11日「トーキングヘッズ叢書」(TH Series)No.103号が発売になった。
 最新号『幻郷の花嫁』では「現実と異界との橋渡しをするような、妖しく魅惑的な存在が紡ぎ出すさまざまな物語を特集。古来からの伝説をはじめ、小説やマンガ、映画、アート、音楽など、多様な視点からそれらを紹介し、そこに秘められたものを解題します」—–という内容だそうだ。
 ——-ぜひお求めください。アトリエサードの発行で、もちろんAmazonでも買えます。(1,650円)。
 今号における「はがいちようの世界」では「BAINS/2月のパリ」という作品を紹介させていただいた。下の写真。(この暑いさなか凍えるような2月の情景で申し訳ない)。
 BAINSはバンと読み浴槽(複数形)の意味。つまり風呂屋(銭湯)のことだ。パリには多くの風呂屋が存在するが、わたしは本作を含めて計3点の風呂屋作品をつくった。本作以外では「トルネ通りの風呂屋」と「ピエールの荷馬車」があるが、今から27年前に、一番はじめにつくった風呂屋作品が本作「BAINS/2月のパリ」である。

トーキングヘッズ誌 No103号より.

「ノエカフェ教室」

 8〜9年前に、シカゴのミニチュアショウで販売するための数種類のドア=ドアだけの作品=をつくったことがあった。そのうちの何点かが、どういうわけかノエカフェにあって、その制作教室を開いて欲しいと、以前よりノエカフェさんからの要望をうけていた。
 ノエカフェ・オーナーはご存知イッシキ・ミヨコさん、ぼくの教室の古くからの生徒で、且つ「渋谷クラフト倶楽部」の会員だ。彼女が一度なにかの要望を言い出すとずっとそれを言い続け、簡単には諦めないことを知っているわたしは
 「いいですよ、協力します…」
 と、お返事し、この暑いさ中に、先日その第1回目の教室を開催した。(下の写真)。と言ってもドアだけの作品なのでそう何回もつづけるほどのものではない。2回か3回やれば終了するスポット的な教室だ。

 《参加者》
 サトウ・チズコさん
 カネコ・マリさん
 フカザワ・ナオコさん
 ヨシダ・カオリさん
 ハットリ・カオリさん
 ウメノ・アユミさん
 ネギシ・ミハさん
 モチズキ・ヨウコさん
 タケイ・アキコさん
 コンノ・マキコさん

 練馬のノエカフェまではイッシキさんの車でご送迎をいただいたが、その車中で別の作品(作品題名「アトリエ・デ・イチヨウ」)の教室開催も求められた。これも、もう一年ほど前からずっと言われ続けているご要望だが完成までに最低20回を要するような難物で、今はちょっとはじめる自信がない。こちらに関してはご容赦いただきたいと願っているのだが…。

「勉強会のこと」

 先日「渋谷クラフト倶楽部」の勉強会があった。
 いままでは千駄木の集会場を使って開いてきたこの勉強会だが、どういうわけか今回は小生のおんぼろスタジオで開催され、この暑いさなか、わたしを含めて計19名ものクラブ員たちが狭苦しいスタジオに集まり、大変な熱気だった。(下の写真)。
 最初はサトウ・コウサク部員による「LEDライトをチカチカと点滅させるための配線」みたいな講義だったが、サトウさんの声が小さかったのと、こっちの耳が悪かったせいで、いまいち内容がよく聞き取れなかった。
 二番手はキシモト・ユウジ部員による「生成AIでデータをつくり、つくったデータによって立体作品をつくる」みたいな講義だった。AIによって実際につくられたビクトリア調時代の椅子や、各種胸像や、オブジェなどを見せてもらい、加えて、あるクラブ員から出された「大正時代のバスケット鞄」という突然のリクエストにも応じ、即座にそれらしいデータをつくってしまったAIの能力の高さにビックリだった。
 サトウさん、キシモトさんありがとう!!!

 《参加者》
 ナカジマ・ユウさん
 キシモト・ユウジさん
 サトウ・コウサクさん
 ヤマノ・ジュンイチロウさん
 サトウ・アキコさん
 タガミ・タエコさん
 アナグマ・アダチさん
 ハガ・ショウさん
 ウエノ・シゲユキさん
 タヤマ・マユミさん
 アイサワ・カズコさん
 コウノ・ヒロフミさん
 タジマ・ナギサさん
 イギシ・カズオミさん
 タカタニ・トシアキさん
 イシハラ・アキコさん
 ムカイ・ウチュウさん
 アカクマ・ヒデミツさん

 上の方々の中には、お会いするのは5年ぶりというメンバーもいらっしゃり、めちゃくちゃ懐かしかった。終了後は有志8〜9名とともにコミバスに乗って王子の居酒屋へ‥。

「渋谷クラフト倶楽部」の作品展

 ぼくの工作教室の生徒氏らの親睦会(渋谷クラフト倶楽部)主催による生徒作品展が11月に開催されます。最近教室に参加されたばっかりの新人(まだクラブの会員になっていない方々)でもトライできますので、よかったら自分の作品を出品してみませんか。
 ——-下がその作品展の概要です。

「渋谷クラフト倶楽部作品展」
 開催日: 2025年11月16日(日)〜11月22日(土)
 開催場所: 有楽町 東京交通会館B1Fゴールドサロン
 出品料: 1点12,000円。2点以上か、もしくは1点でも長辺が50cmを超える作品の場合は18,000円。(3点以上多数出品しても上限は18,000円です)。
 出品される方はクラブにご入会ください、(入会費無料/年会費3,000円)。
 締め切りは8月17日です。

 ぼくの教室は1997年からの数年間渋谷にあり、そのころの生徒たちによって結成されたクラブなので「渋谷クラフト倶楽部」という名称になっています。今回はその18回目の作品展です。
 参加希望者は当クラブ会長の山野順一朗氏まで連絡をください。
 山野順一朗: yamano11ro@gmail.com