近況①「トロエルさんのこと」

 フェイスブックの友達に「トロエル・カーク」(Troels Kirk)という人がいる。このごろ頻繁にぼくのウォールに顔を出し、なにかとコメントを寄せてくるので、どんな人なのかと気になって、彼のウォールをのぞいてビックリ。ト、ト、トロエルさんは、も、も、ものすごい鉄道模型レイアウトをつくっている!
 下がそのURLである。
 (もしかするとこれはフェイスブックの登録者しか見られないかもしれない。)
 http://www.facebook.com/pages/The-Coast-Line-RR-page/127409483958090
 (上を開けなかった場合は下をクリックしてください。)
 http://coastline.no13.se/#home
 どうです!
 レイアウトの名称は「The Coast Line Rail Road」(Oゲージ・ナロー)。
 メルヘンチックな造形が普通の鉄道模型とはひとあじ違った独特の雰囲気を醸しだし、どのシーンも絵画的魅力に満ちている。
 プロフィールをみると、作者トロエルさんは1956年、デンマークのお生まれというから、ぼくより8つ年下だ。長年ヨットの上で暮らすほどの海好きで、それが彼のレイアウトにも見事に反映されている。鉄道模型をつくると同時に画家でもあり、アメリカやヨーロッパでエキシビションを開催している。現在は愛妻とともにスウェーデンでアートギャラリーとコンサートホールと映画館をあわせた小さなシアターを経営しているそうだ。
 ———なんとまあうらやましい!

中央がトロエルさん

近況②「山田工房見学会のこと」

 木の彫刻家・山田康雄さんは79才。いまも精力的に、日に8時間以上工房につめ、作品をつくりつづけている。
 山田さんとは以前からの顔見知りではあったが、急に親しくなったのは去年の夏、横浜で開催した拙展の会場に、彼がひょっこり顔を出してくれたことから。
 11月10日の土曜日、その山田さんの大田区蒲田にある自宅工房へ、うちのクラブの面々15名が見学にうかがった。(——下の写真。)
 彼の工房は、ぼくの作業場の約3倍の広さがあり、そこに本格的な木工工作機械がずらっとならんでいる。壁には山田作品の数々が飾られ、棚の上には動物や仏像やオブジェといった木彫りの完成品が無造作に積んであるが、それら作品はどれも非の打ちどころがなく、まことにもってパーフェクト。山田さんはミケランジェロやピカソに匹敵する芸術家だと、ぼくはまじめにそう考えている。
 午後4時から5時半まで、工房での見学を済ませたあと、一同は近所の居酒屋へと移動し、山田氏を囲んでの親睦会がはじまった。そこでの彼はビール片手に約2時間半、木工にかける想いや作家としての生きざまについて、まるで若者のように、熱く語った。
 いやあ、すごい人がいるものだ。
 一同大満足、大充実のひとときを過ごした。

左端が山田さん
http://store.shopping.yahoo.co.jp/mituko/index.html


2012年11月17日

近況①「炭酸入りのレモネード」の映像

 2月に有楽町で開催したエキシビションの折に、だれかが拙作「炭酸入りのレモネード」を撮影し、動画サイトUチューブに投稿したらしい。
 以前ぼくもその映像を見たことがある。
 だがそのときは無音だった。
 それを今回ふたたび見てびっくり。
 な、なんと、調子のいい音楽がついているではないか。
 http://www.youtube.com/watch?v=qdk5T5WfW6o&feature=related
 いや~、ぴったりである。
 音にあわせて若干編集も変わったような気がする。
 ——気に入った!

近況②「ん?スポーツジム?」

 こないだ岩瀬さんが倒れたと書いた。
 内心ぼくは、彼はもう助からないと思っていた。
 ところがぎっちょん、彼はすんなり三途の川を渡らず、その手前で戻ってきた。
 あれから数日後、4時間にもおよぶ大手術のすえ、彼の左胸にあった全長8センチの腫瘍を摘出するとともに、左肺ぜんぶと右肺の一部を切り取ってしまった。遺書10通を用意して臨んだ大手術だったそうだが、なにもかもが奇跡的にうまくいき(当人の弁)、文字通り命拾いすることができた。
 再度見舞いに行くと、生きていることがうれしくってたまらないというふうに彼はキラキラ輝いていた。点滴のチューブにつながれ、生々しい手術の傷跡があるにもかかわらず、快活によくしゃべった。(前回はまるで死人みたいだったのに…である。)
 退院したら西日暮里駅前にあるスポーツジムに通うつもりだと真顔で言い
 「芳賀さんも一緒にどお?」
 だって。
 ——–今月中に退院するなんてはなしもちらほら。
 よかった。よかった。


2012年11月10日

近況①「お詫び」

 少しまえ当欄に自由が丘展開催の告知を掲載したことがありました。
 本来なら今ごろは自由が丘で小規模な拙展が開催されているはずでした。ところがこれが直前にドタキャンになってしまい、あわてて告知掲載を削除するというひと幕がありました。
 このエキシビションは「自由が丘グリーンホール」というビルの1階にオープンするキャフェギャラリーで開催の予定でした。ところがオープンの直前になってキャフェーとビルオーナーとのあいだにトラブルが発生して、キャフェーがオープンできなくなり、そのため拙展もお流れになってしまい、多大なご迷惑をおかけした次第です。
 知らずに出かけた方もいらしたようで
 「探しているのですが見つかりません…」
 という趣旨の連絡が数件寄せられました。
 大変申し訳ありませんでした。
———改めてお詫び申し上げます。

近況②「教室の映像」

 拙展が開催されるはずだった「自由が丘グリーンホール」ですが、このビルの二階にはわたしの工作教室があります。今期からは「火の見やぐらの情景(1/80)」を制作するカリキュラムがスタートしていて、10月27日(土)にその二回目の授業がありました。
 下の写真をご覧ください。
 男性10名、女性7名の計17名、20代から60代まで、さまざまな職業の方々が参加されています。この日はオール真鍮製の火の見やぐらの骨組みに関する制作実演を行いましたが、それをニコニコ動画(ネット配信)が撮影しているところです。右上の女性がその撮影者で、下がそのときの映像(約5分)です。
http://youtu.be/GgkxcVJBqCY
 なおこの教室に関しての詳細は左のインデックス「工作教室」をクリックしご覧ください。教室の見学は無料です。希望者は遠慮なくお申し出ください。
 ——–どうぞよろしく。


2012年11月6日

近況①「続・佐野邸訪問ツアー」

 前回佐野匡司郎氏の自宅工房を見学したと書いた。
 ところがその佐野邸には氏の次男である佐野好彦氏(45)の工房もあって、こっちでは父親とはぜんぜん違うものをつくっている。
 下が佐野好彦氏のデスクである。
 彼はエイリアンや恐竜といった、もっぱらクリーチャー(生き物)ばっかりをつくるプロフェッショナル・クリエーターなのだ。
 父親によると
 「気持ち悪くって、見ちゃおれん…」
 だそうだが、このあいだこの写真を、ぼくのフェイスブックページに投稿したところ、世界中から約150件の「いいね!」が寄せられた。
 ちなみに今般の佐野邸ツアーには、この「好彦工房見学」もオプションとして含まれていたので、われわれは直接当人から説明を受けながら、非常にディープなクリーチャー・クリエーターの世界をも垣間見ることができた。
 佐野一家は全員なにかをやっている。
 父親が機関車で、奥さんが水墨画に手芸、そしてご子息がクリーチャーである。
 それら全部が一流なのだ。

近況②「生還を祈る!」

 「まってくれよおっちゃん…おれは…まだまっ白になりきっていねえんだぜ たのむや おっちゃん たのむや…まっ白な灰になるまでやらせてくれ なんにもいわねえでよ…」
 日本ドールハウス協会の岩瀬勝彦会長が先日の夕刻突然倒れ、秋葉原の三井記念病院に担ぎ込まれた。上の一文はその数日後、彼が自分のツイッターに書き込んだツイートである。病名は肺気腫。
 彼は超のつくヘビースモーカーだった。
 長年の喫煙習慣によって岩瀬さんの肺はすっかりスカスカになってしまい、あちこちに穴があき、一部には腫瘍も見つかったそうだ。重大かつ深刻な状況である。そんな状況にありながら彼はそのことにまったく気づかずその日まで普通に仕事をし、倒れる直前には協会のみんなと一緒にダイレクトメールをつくっていた。
 ちなみに、ぼくは日本ドールハウス協会の名誉会員である。
 さっそく見舞いに駆けつけた。
 行ったときには肺にパイプを通して空気を入れ、ダメになった肺を蘇生させているところだったが、かなりまいっていることは顔を見てすぐにわかった。それでも彼はつとめて平静をよそおい、ときには笑顔もまじえて、ぼそぼそと、こと細かに自分の病状をはなしてくれた。
 岩瀬さん必ずまた見舞に行きます。
 だからなんとか生還してほしい。
 心から祈ってます!

 今年はぼくにとって不調の年である。
 春には旧横浜駅の制作がキャンセルになり、そのあと別の仕事もキャンセルになって、そして秋には拙展が一件キャンセルになった。この仕事を始めて17年、過去キャンセルなんて一度もなかったが今年は全てキャンセルである。他にも山ほど気が滅入ることがあって、すっかり落ち込んでいたところに飛び込んできた岩瀬氏倒れるのニュース。
 鬱になるよなあ。

左が岩瀬さん
今年6月浜松町で


2012年10月27日

佐野邸訪問ツアーのこと

 鉄模界で佐野匡司郎(さのきょうしろう)といったら有名人。なにしろ真鍮製の機関車をオールハンドメイドでつくってしまうのだから。その彼がなぜかぼくの教室に通っていたことがあって、すばらしいストラクチャー作品もたくさんつくっている。
 氏は現在、湘南の茅ヶ崎市にご在住で、御年78歳のいまも、毎日こつこつと創作活動にはげんでいる。そんな彼の自宅工房を拝見し、氏の作品の数々をまの当たりにする「佐野邸訪問ツアー」が実施された。
 下が当日の写真である。
 このあとドドッと屋内になだれ込んだわれわれは、あっちを見たりこっちを見たり、作品やら、工房やら、道具やら、資料やら、挙句は庭までも、どこもかしこも見てまわり、ある者は「非常に勉強になった」と繰り返し、またある者は「もう模型はやめた!」と3回叫んだ。その声の主によると、あまりのレベルの違いに、すっかりやる気が失せてしまったとのこと。
 ま、そんなこんなのあとは駅前の居酒屋へと移動し、盛大な懇親会が繰り広げられた。
 この催しは過去数回実施されているが、今回は初参加の者ばかり18名で出かけ、一同大満足のひとときを過ごした。
 佐野さん、すっかりお世話になりました。
 ———御礼申し上げます。

一番左が佐野さんです


2012年10月20日

遠藤くんからの投稿

 毎週このコーナーのネタに苦労している。
 そこで僕の教室の若手OBである遠藤大樹くん(通称エディ)に、なにか書いほしいと頼んだところ、さっそく下のような一文を送ってくれた。
以下、遠藤文——。
 北海道が好きで、かれこれ二十回近くは足を運んでいる。
 昨年の夏も自動車を運転して青森の大間まで行き、そこからフェリーで函館に渡って北海道をぐるぐると6日間くらいまわってきた。美瑛の牧場でジンギスカンを食べたり、ニッカのウィスキー工場を見学したりする間、寝泊りは常に車の中だった。
 私は車中泊がまったく苦にならない性分だということもあるが、この頃は震災直後の風評被害で農家の仕事もなく自由な時間だけは山ほどあったので、宿泊費を節約して一日でも長く北海道に滞在するという目的のためにそうしていたのだ。
 そんな感じでタップリ北海道を満喫して帰宅した直後、芳賀一洋先生が有志を募って北海道へ行くと仰られた時には、北海道が大好きな私も流石にもう一度北海道へ行こうとは思わなかったのだが、後々に参加者の方から旅の話を聞くと芳賀先生たちの団体旅行は実に充実していたようで、気ままな一人旅をしてきた自分としても賑やかな北海道旅行が少々羨ましくも思った。
 特に北海道の滝川にある「杉山さんのゴージャス工房」の話は興味深いもので、この杉山さん・・・通称「スギちゃん」は芳賀先生の生徒OBの方である。
 私もドールハウス関連のイベントへの出展などを通して幾度となくスギちゃんと顔をあわせているのだが、その印象は「マイペースで気の良いおじさん」と言う感じで、彼の飾らない大らかな人格は僕のような「目上の人間との付き合い方もロクに知らない若者」にとっても大変に親しみやすい。
 彼は「男のドールハウス」という看板を掲げ、バイクの模型を入れるガレージとしてのドールハウスを作るというスタイルを貫いている。
 ドールハウス業界というのは女性が大部分を占めていて、私や彼のようなマッチョイズムを醸し出す男性のドールハウス作家は数が少ない。
 だからこそ彼の「男のドールハウス」の製作現場には興味が尽きないのだ。
 今年の5月、そのスギちゃんと「静岡ホビーショー」に共同出展したので、芳賀先生の北海道旅行の話を色々聞かせてもらったついでに「今度、私が北海道へ行った時にもゴージャス工房を見せてください!」とお願いすると、彼は笑いながら「いつでもおいでよ」と仰ってくれた。
 この時は私も2年先か3年先かの話として考えていたのだが、今年の10月13~14日に富良野で開催される「第二回ニングル大賞」にうっかり入選してしまったことで、新富良野プリンスホテルのロビーに作品を展示するために唐突に北海道へ行く機会を得たのである。
 さっそくスギちゃんに連絡をとり、改めて彼のゴージャス工房を見学させてくれないかと頼み込むと「じゃあついでにウチに泊まっていくといいよ、飲みにいこう」と快く承諾をいただくことができた。
 私は芳賀一洋先生から模型の技術だけではなく、人とのご縁も頂戴しているというわけである。
 今回の北海道は車で一人旅をした時よりも、少~しだけ賑やかになるだろう。
 (以上、原文のまま。)
 ——-というわけで、いまごろ遠藤くんは北海道の空の下。うらやましい限りである。
 ところで下が彼のサイトだ。あとでちらっと見てやってください。
 ★エディー: http://eddi-p.net/

遠藤大樹/第二回ニングル大賞入選作

2012年10月13日

近況①「ドアーのこと」

 先週ドアノブの写真を見せた。そして今週は、それらを使ってたくさんのドアーをつくった。来年4月にシカゴのミニチュアショーで売るためのドアーだ。
 下の写真がそれだが、これをぼくのフェイスブックページに投稿したところ、世界中の人たちから一日に200件以上の「いいね!」がついた。以前靴の写真を掲載したとき(9月16日の当欄参照)以来の高評価である。
 つまりこれらのドアーは売れるってことだと理解し、もっとデンジャラス(?)な、もっとゴージャスなドアーを求めて、更にまたつくっているところである。
 ——–乞うご期待!

シカゴで売るためのドアー

近況②「題名が決まりました」

 前々回、最新作の題名に苦慮していると書いた。
その新作がガラクタ屋にも骨董品屋にも洋服屋にも見えることから、何と題名をつけたらよいかわからないというはなしだった。
 このはなしを当サイトの英文版近況報告にもほぼ同様の内容で掲載したところ、それを読んだというあるアメリカ人から、われわれはこういう店を「セコハン屋」(second hand hop)と呼んでいます、というメールが届いた。
 なるほどセコハン屋か!
 セコハンってことは中古ってことだから古着屋にも通じるし、骨董品でも、ガラクタでもよいってことになり作品のイメージにピッタリだ。加えて看板の文字(VEYSSERE/ブェイセイル)が人名だということが、すでにわかっている。となると、このたびの店の題名は「中古屋ブェイセイル」あたりが妥当ということになり、知人のフランス語通にも相談した結果、これに決定した。(なお仏題名は「Brocante Veyssere」。)
 これでやっと題名が決まり、晴れてアートインボックスセクションに、たくさんの写真を掲載することができた。
 あとで是非ご覧になってください。
アートインボックス中古屋ブェイセイルのページ
 自分で言っちゃぁいけないが、この作品も、その前につくったギャラリーの作品(「ルイブラン通り5番地」)も、むかしつくったものよりも明らかに進歩していると思う。いまこの時点に至ってもなお、自分でそう思えるってことは幸せなことである。

1/12「中古屋ブェイセイル」

2012年10月7日