白石さんのこと

 去年の暮れにぼくのスタジオで、我が工作教室の生徒である白石和良さんが、突然の脳溢血に倒れたことは、2/5日付けの当欄でお知らせした。倒れてから約10ヶ月、病院二箇所での入院及びリハビリー生活を経て、先月から彼は自宅に戻っている。
 教室での課題作をつくっている最中に倒れ、即病院に運ばれたため、そのときぼくのスタジオには彼の道具や、材料や、仕掛品が大量に残されていた。それらの品物を10ヶ月ぶりに当人に返却するために、先日北品川の白石邸へお伺いした。
 当初は半身不随で身を起こすことさえかなわず、ただベッドに横たわっているだけ。完全介護が必要な状況だった。しかしその後の回復ぶりには目を見張るものがあり、われわれが白石邸の裏門に到着し、門の外からチャイムを鳴らすと、なんと彼はひとりで屋敷の玄関を開け、外に出て来て、杖をつきながら壁伝いに門の真裏まで歩き、当人が鍵を開けてくれて、われわれを門の中へと迎え入れてくれたのである。
 信じられな~い!
 真面目に毎日リハビリーに励んだことによる成果だと思うが、大変な努力があってのことだろう。まだ車椅子の生活ながらひとりでトイレに行き、ひとりで食べ、スマホやタブレットを操り、かんたんなプラモデルを作る!など、ときどきヘルパーさんが来てはくれるが、それ以外はたったひとりで生活をしている。
 来年2月、交通会館での生徒展の折には車椅子に乗ってでも出かけたいとおっしゃるほど、凄まじい回復ぶりである。
 みなさんにくれぐれもよろしくとのことでした。

自宅での白石さん


2017年9月26日

A氏の情熱にほだされて、孤独の世界を  電気アリにしました。

 教室の課題作としてむかしからつくっている「孤独の世界」という作品がある。いままでずっと〝電気ナシ〟でつくってきた。この作品だけではなく、ぼくがつくる80分の1のストラクチャー作品は、いままでは、すべて電気ナシだった。
 ところが現在進行形の孤独クラスに、やたらとツッコミの強い生徒がいて、仮にA氏とする。A氏はどうしてもこの建物に室内灯を点けたいとおっしゃった。しかたなく電池の仕込み場所やLED照明に関しての能書きをあっさり説明したあとで、面倒だからやめたほうがいいですよ‥と付け加えた。A氏ばかりか、わたしも面倒なので、できればやめてほしかったのだ。
 なのに、その次の回に、A氏はわたしが言った通りのLED照明をちゃんと点けてきて、一歩も引かない構えを見せた。だがA氏の照明は色(光の色)がよくないことや、電池ホルダーの組み込み方がいまいち‥等々で、結局、わたしが見本をつくって見せなきゃいかんハメにおちいり、案の定とても面倒なことになってしまった。そうしてつくった電気アリの孤独の世界が下の写真である。まだいくらか未完成ではあるが、室内の明るさは十分に伝わっていると思う。
 A氏の情熱にほだされてつくったこの「電気アリ」は、ご覧のように超かっこいいが、もしイエサブの棚に並べるなら、ときどき電池交換のために出かけねばならない。交換は、作品をヒックリ返して行う必要があり、もし購入者がやった場合は、一瞬で作品をぶっ壊す恐れがある。そんなこんなを考えると当分イエサブへは持っていけない、なんともカネにならない作品である。

「孤独の世界」(1/80)


2017年9月18日

ショーケースが移動しました

 下のビジュアルをご覧ください。秋葉原ラジオ会館6階「イエローサブマリン」(通称イエサブ)の平面図です。図のてっぺん、Hagaと書いてある場所に、このたび、わたしのショーケース「はがいちようのミニチュアコレクション」が移動いたしました。
 前の場所に行き「棚がない!」などとビックリしないようお願いいたします。
 もうご存知だと思いますが、拙作の数々やオリジナルパーツ、世界各国から集めたミニチュアグッズがごっそり詰まったショーケースが「はがいちようのミニチュアコレクション」です。ミニチュア以外にも書籍や、黒染め液(他店のものよりははるかに反応の早い優れものです)や、オイルステイン(塗料)なども取り揃えています。
 秋葉原にお出かけの折は是非お立ち寄りください。
 下記イエローサブマリンの中にあります。

 イエローサブマリン秋葉原本店★ミント
 住所:千代田区外神田1-15-16 新ラジオ会館6階
 電話:03-5298-7712
 営業時間:午前10時~午後8時
http://ysscaleshop.blog137.fc2.com/


2017年9月10日

リペアー完了

 前々回お伝えした「炭酸入りのレモネード」(ガラクタ屋)のリペアーのことだが、思ったよりうまくいった。(下の写真)。
 店舗部分をうしろに約5センチほど膨らませ、そこに新たなガラクタ類をつっこんでディスプレーし、LED照明3灯を弱々しく灯した。この弱々しくてところが肝心だ。退廃的で、どこか投げやりなこのガラクタ屋がローソンのように明るくっちゃ興ざめだ。
 本体ばかりか、ついでにフレーム(額縁)も直し、イーゼルも、後部のふくらみに合わせてつくり直した。もちろん収納用の木箱も作り直したので、なんだかんだで10日ぐらいかかったが、大満足している。
 むかし駆け出しのころ、非常に熱心なファンの方で、毎回拙展に来てくださる紳士がいた。仮にY氏とする。Y氏は有名財閥のご子孫で、奥沢の大きな邸宅に住んでいた。
 ある日Y氏から
 「家に遊びに来ないか‥」
 との電話があり、行ってみると、薄暗い美術部屋に通され、Y氏がコレクションしている美術品の数々を見せてくれた。そのあと、ズラッと美術書が並んだ、日当たりの良い書斎に通され、そこで小一時間、パリに関するはなしを伺った。やがておいとまの時間が訪れ、席を立とうとすると、Y氏は書棚から数冊の美術書を取り出し、参考に、とおっしゃり、荻須高徳画伯(1901~1986)の画集三冊を持ち帰るよう勧めてくれた。
 後日、それらの画集の中から、荻須先生の「BRIC-a-BRAC(ガラクタ屋)」と題する油絵を立体作品化したのが本作である。このときは同時に「鍵屋(パリ)」と題する油絵も一緒に立体化し、そちらには「錠前屋のルネはレジスタンスの仲間」というタイトルを付けた。それら二作品は、Y氏の勧めによって、はじめて、油絵を意識してつくった、最初のアートインボックスである。うち今回は「BRIC-a-BRAC」を修理したが、機会を見て「鍵屋」のほうも、ぜひ直したいと考えている。
 ちなみにY氏だが、その数年後に認知症をわずらい、以後なんの連絡もない。
 存命なら優に80を超えているはずだが、どうされているのか。

炭酸入りのレモネード(1/12)


2017年9月7日

奥川さんのこと

 はやくMac に変えたほうがいいですよ‥と何人もの人に勧められ、今年の3月、とうとうMac Book Pro というPC を買ってきてしまった。使ってみると確かにいい。それまで使っていたウィンドウズよりも格段と動きが速く、キーボードも実にたたきやすい。それはいいのだが、操作方法の不明箇所が次々と出てきて、ときどき気が狂いそうになった。そんなときにタイミングよく、Doozy Model Works の奥川さんが遊びに来てくれて、いろいろと教えてくれたのである。奥川さんはぼくよりもひと回り以上若い上に元グラフィックデザイナーなので、Mac 使いのプロである。その後も定期的に来てくれるようになり、イヤな顔ひとつせず、親切に教えてくれたおかげで、だんだんと小生もMac が使えるようになってきた。奥川さんにはずいぶん助けてもらった。
 そんなわけで本日は、以下、奥川作品の宣伝をさせていただく。
 当欄の読者ならDoozy Works の奥川泰弘さんのことは知っていると思う。いっときイエサブで、ぼくの棚の隣がDoozy さんのコーナーだったこともあった。見るのがイヤになるぐらいクールな情景模型の作者で、通常は米西海岸風な、爽やかな風が感じられるような明るい作品をつくっている。その彼が、最近、な、なんとアメ横をつくったという。
 さっそく見に行って、ぶったまげた。
 「うわ~、アメ横だぁ~!!!」(下の写真)。
 正札の378万円!(消費税込み)を横目に見ながら、ぐるっと回ると裏側も、上から眺めりゃ上側(ガード上の線路)もちゃんとつくってある正に驚愕の一品。
 ——-この奥川作品は、現在上野駅の構内で見ることができますので、みなさんもぜひ見に行ってくださいね! (JR山手線上野駅、公園口の改札を入ってすぐ右側に「上野ランド」という名前のスーベニールショップがありますが、作品はその店のド真ん中に置いてありますので。)

奥川泰弘作「上野アメ横」(1/35)


2017年8月30日

旧作リペアーのこと

 誰でもそうだと思うが、むかしつくった自分の作品を見ていると無性に直したくなる。だがいちいち直していたらきりがないので、展示会などで並べるときにはできるだけ目を背けている。そんな作品のひとつ、「炭酸入りのレモネード」(1/12アートインボックス)を、思い切ってリペアーすることにした。つくった当時は「よくできた」と満足したものだったが、それも20年前のはなしである。
 本作を制作した当時、アートインボックスは基本すべて“電気ナシ”だった。電気が点くとむしろオモチャっぽくなると考え、わざとそうしていたが、その後考えが変わり、このごろはすべて“電気アリ”でつくっている。従ってこの際は、本作も“電気アリ”に改造し、店内部を二倍に増床し、そこにいくつかのLED照明を灯すことによって、エンターテイメント性の向上を図るつもりだ。ついでに長年の傷や汚れもできるだけ修復するつもりだが、つくった当時の荒々しい作風は、いまとなっては得難い個性と考え、そのまま残す予定。
 旧作風新作とでも言ったカンジに仕上がれば良いと考えている。
 うまくいくか‥。

1998年制作/炭酸入りのレモネード


2017年8月21日

猛暑の中の定例会

 去年の8月は忙しかった。3日から三越の「ざ・てわざ展」に参加したあと、ちょうど今頃は、有楽町の国際フォーラムで開催された「ものづくり匠の技の祭典」にも参加し、展示ブースを出した。加えて月末には交通会館での生徒展(&はがいちよう展)があったので、8月の手帳は真っ黒だった。
 ところが今年は先の都議選で自民が大敗したことにより、自民党都議連が主催する「技の祭典」が大幅縮小となり、われわれの出番がなくなってしまった。考えてみればこれも加計森騒動や「このハゲー!」のとばっちりと言えなくもない。加えて「てわざ展」も「交通会館展」も今年は開催されず、ひさしぶりに暇な夏を過ごしている。
 ところが元生徒のみなさんはけっこう忙しそうだ。前回お知らせしたように相澤さん、秋山さん、山脇さん、遠藤くんらがあちこちで堂々のエキシビションを開催中だが、その遠藤展を、クラブ(渋谷クラフト倶楽部)のみんなで見に行こうという催しがあり、猛暑の中、約15名のクラブ員が横浜ランドタワーで開催された「遠藤大樹作品展」を見に行った。(下の写真)。ユニークでアーティスティックな遠藤作品の数々を堪能したあとは、もちろん近所の飲食店へと移動し、アルコールの補給に努めた。
 こういったクラブ活動を「定例会」と呼び、ときどき開催しているが、ヒマということもあって、ひさしぶりに私も参加させていただいた。

手前が遠藤作品、右が遠藤くん。


2017年8月13日