さむい日

 ここ数日急にあたたかくなってきたが、2月24日はまだまだ寒かった。
 この日、有明の東京ビッグサイトで開催中のワンダーフェスティバル(通称ワンフェス)を見物するため午前9時ごろ家を出た。何名かの知人がディーラーとして参加しているからだ。
 そこでちょっと下の写真を見てほしい。
 写真中央に特徴ある形状のフジTV本社ビルが見える。
 ビルの手前に行列があるが、この列は画面右方向へと長く伸び、東京ビッグサイトの入り口まで続いている。フジテレビがある「台場」からビッグサイトの「国際展示場」まではゆりかもめで4駅だ。
 ぼくは午前10時ごろ国際展示場駅に到着し、ワンフェス会場のあるビッグサイト東館へ向かって歩きはじめた。すると、並んでくださーい、と数名のスタッフに呼び止められ、別の方向へと進むよう指示された。それからはただひたすら列の後方を目指して歩いたが、どこまで行っても最後尾へはたどり着けなかった。そうやって歩いている人々が写真手前に写っている。このとき強風のため山手線はのろのろ運転、京葉線は完全にストップしていた。ものすごい風である。しかも現場は海っぺりだ。ぼくはバンダナが風で吹っ飛ばされぬよう必死で押さえ、さむさをこらえて歯を食いしばりながらも、なんとかこの惨状を世間に伝えたいとシャッターを切った。
 考えてみたら普通の客としてワンフェスに出かけたのは初めてのことだった。いつもは関係者用パスで並ばずにすんでいたが、毎回こんな行列ができているらしい。
 さいわい列についてからは案外サクサクと進み、11時ごろには入場を果たせ、ほっとひと安心。そして午後の2時、行列の痛手からはなんとか立ち直ったかにみえたころ、こんどは財布を紛失したことに気がつき、まっ青に。仕方なく有名フィギュア作家・矢沢俊吾氏のブースで帰りの電車賃を拝借し、トホホマインドを胸にトボトボと帰宅。
 さむい一日だった。

2008年3月6日

しんぶん赤旗

 ふるいはなしで恐縮だが、去年の8月、しんぶん赤旗の「ひと」というコーナーに、ぼくの活動が紹介された。赤旗の若きイケメン記者・本田祐典(ほんだ・ゆうすけ)氏がぼくのアトリエへ取材に訪れ、ピリッとした記事を書いてくれた。いつかこの欄でも取り上げたいと考えていたが、うまいタイミングがなく、こんなに遅くなってしまった。本日はそのときの記事をお目にかけることにする。

 「模型で芸術活動を行なうおじさん」
 さびついたトタン、木造の小屋が、なつかしさとさみしさをかきたてます。電線を表現する線は髪の毛より細い—。緻密な模型で「昭和」の情景をえがきます。テレビや新聞、海外のメディアも注目する“カリスマ模型師”です。「昭和の日本の情景」(80分の1)や「パリの下町」(12分の1)のシリーズのほか、テレビコマーシャルの背景などを手がけています。
 自称「おじさん」。口癖は「うーん、しぶいっ」。社交的な人柄も、作業台に向かうと無口に。179センチの長身、大きな手で極小のパーツを加工していきます。美意識にかなうまでこだわると「自然とこうなる」。雨ざらしになった板の色、さびついた金属の色、一つひとつの部分が時代を語ります。「オレが見た昭和30年代っていうのは、貧しくて暗くてね。いまの昭和ブームで描かれるような、明るいものじゃなかったんだ」。そんな時代観がこもった作品に、展示会では涙する人の姿も。
 作家歴は12年。前職はアパレル店の社長。バブル崩壊後、ひまにまかせて店にあった服のタグ(値札)の厚紙を利用して模型をつくってみました。「そしたら上手だった。オレ自身が驚いたね」。
 自身が好む“立体画家”という肩書きのわけは「模型ってニセモノみたいな意味に理解されるから」。模型が芸術と評価されにくい現状に「手塚治虫が漫画を文化にまで引き上げたように、模型を文化にしてやりたい」。
 個展は22日から東京・日本橋の高島屋8階で。
 ——-文・写真・本田 祐典

 ややオーバーだが、赤旗の本田さんはうまい文章を書くもんだと感心した。さすが新聞記者である。高島屋展開催中はこの記事を見て、わざわざ愛知県からやってきた人もいた。

しんぶん赤旗・2007年8月17日号より


2008年2月24日

東急ハンズに

 80cm×80cmの棚一枚というちっちゃなスペースながら、銀座東急ハンズの9階に、芳賀いちようの作品コーナーが、このたび初お目見えした。これにともない以前はイエローサブマリンの棚に並べていた「80分の1トキワ荘」や「千駄木慕情」など、いくつかの作品を新コーナーに移動。
銀座にお出かけの節はぜひ一度チェックしてほしい。
 ——銀座ハンズ:http://www.tokyu-hands.co.jp/ginza.htm
 ぼくは職業がら「東急ハンズ漬け」とでもいった生活を送っている。
 こう寒いとさすがに億劫だが、気候がよいときにはハンズで買ったチャリンコにまたがって、ほとんど毎日のように池袋のハンズまで出かけている。ときには日に3回行くこともある。道具や材料の調達はもちろんだが、自分にとってそれが唯一のエクササイズ。そういったハンズへの往復をふくめて去年自転車で計2173キロ走った。また、制作にゆきずまったときなどに素材の棚を眺めていて思わぬヒントを得たり、ヤル気がでないときには気分転換に各階をぶらつくなど、リクリエーションにも利用している。そんな大好きなハンズにぼくのコーナーができたことをとても喜んでいる。
 もしぼくの棚を見に行ったなら、ポストカード1枚(100円)でもかまいません、どうかお買い上げのほど、よろしくお願いいたします。せっかく売り場ができたのに、なんの反応もなかったというのでは、ちょっとさびしいので‥。

2008年2月18日

タイトル募集中!

 最近下のような作品をつくっている。
 100%とはいえないが、もうほぼ完成だ。ふるい生徒諸氏には以前一回お見せしたことがあったが、普通サイズのアートインボックス作品としては2002年春に制作した「BAINS/公衆浴場」以来の新作なので、本日改めてここに紹介する。
 (下の写真)。
 覚えちゃいないだろうが、2007年1月29日のこの欄で、「どうも気に入らない」というコメントをつけて紹介した制作途中の作品があった。その作品は、その後しばらくそのままの状態で放って置いたが、ある日意を決し、ガーガー丸ノコで切り刻み、ゴミ箱に捨ててしまった。しかし作品の中央にあった絵だけは捨てずに残し、それだけを生かして、もういっぺん最初っからつくりなおしたのが本作である。1945年ごろ、ピガールあたりの裏路地でひっそりと営む「リカー・バール」とでもいったところか…。
 おかげさまで今度はけっこう気に入っている。
 ——-ところでこの作品には看板がない。
 今後もつける予定はないので、題名にはほとほと苦慮している。普通なら、看板の文字をそのままタイトルにすればよいのだが、それがないとなると…。
 あいにくフランス語はまったくダメなので、非常に困っている。
 下の作品にピッタリの、レトロ色ぷんぷんの良いフランス語のタイトルを、誰か考えてくれないかな~。
 賞品や賞金はまるで出ないというショボイ企画ながら、ただいまタイトル募集中!
 いいのがあったらぜひ教えてほしい。

2008年2月10日

伊藤写真と味噌屋の写真

 去年の6月に北青山で開催したエキシビションの、初日だったか二日目だったかに、有名な伊藤誠一ちゃんがやってきて、たくさんの写真を撮ってくれた。それらを使って、最近、ストラクチャーセクションにおける「風に吹かれて」の2ページ目をグレードアップ。また、「過去展会場の写真」というセクションのファイナルには「北青山・スペースインタート展」というページを追加。どちらも目の覚めるような写真だ。あとで是非ぜひご覧いただきたい。
 —–下はその中の一枚。
 あと、ついでなので、このサイトの表紙も、たまには見てほしいのね。こっちは伊藤写真ではないけれど、画面左下に味噌屋の写真がある。
 「この赤い樽(たる)って、めちゃくちゃシブイよね…」
 とか言いながら、ただ普通に、味噌屋の店先で写真を撮ってたら、うす暗い店の奥で突然ガラッと引き戸があいた。
 と、おもったら、店のおやじがシュルシュルっとヘビのように近づいてきて
 「こりゃ~、シ、シ、いきゃ~、いきゃ~」
 するどい声で激しく叫び、小刻みに全身を震わせ、今にもつかみかからんばかりの剣幕。ももひきいっちょで、やせっぽながら、顔は真っ黒、目はギンギンで、ものすごい迫力。ちっちゃなからだ一杯に怒気をみなぎらせている。
 キャー、コエエ~
 だから写真のあと即トンずらした。
 というのが、味噌屋の写真。

北青山の「スペースインタート」にて
写真:伊藤誠一


2008年2月3日

ミニチュアコレクター誌

 北米で発売されている「ミニチュアコレクター」(Miniature Collector)という雑誌に、ぼくの作品2点が掲載された。(Scott Publishing 社・刊/2008年1月号)。
 ——上は「アマゾン」で購入できるとのこと。
 この雑誌はけっこう好意的で、たまに拙作を取りあげてくれる。
 今回で多分6回目だとおもうので、すでにちょっとした常連といってもいいのかもしれない。わりといい雑誌なので、米国のミニチュアファンの中にはICHIYOHの名前を知る御仁も、ポツポツではあるがふえているようだ。また当サイトの英語バージョンも、だんだんと知られるようになり、うれしい限りだ。
 だいぶん前のこと。ものものしい体裁の電子メールが、この雑誌社から突然ぼくのパソコン宛にとどいたことがあった。「送った書類を紙に印刷し、署名したうえで、ただちに郵便で送り返してほしい‥」みたいなことが書いてあった。さらに読むと、「弊誌はICHIYOHの作品を専属的に取り上げたい。弊誌で掲載した写真は他誌には絶対に使わないでほしい。ときどき弊誌宛にあなたの作品の写真を送ってくれ。」等々の語句も一緒に並んでいたので、決してわるいはなしではなさそうだった。しかし、オイオイおめーらは、この程度のことにもいちいち契約書を書いて、サインをしろって言うのかいって思った。さすがアメリカ。弁護士がいっぱいいるわけだ。
 ま、そんなわけで、この出版社へは、たまに作品の写真を送っている。
 次は「ニコレットの居酒屋」でも送るか、な‥。

拙作「ル・ペンギン・バー」と「ブーランジェリー」
ミニチュアコレクター誌/2008年1月号より


2008年1月27日

工作教室/初心者クラスのこと

 表題のクラスにつきまして、先年の暮れに生徒の募集をかけましたところ、予想を上回る30名もの応募者がありました。
 ご応募いただいたみなさんに御礼を申しあげます。
 当初、募集要項における開催地は駒込か巣鴨というあいまいな表現でしたが、結局巣鴨に決定し、先日第一回目のレッスンが開催されました。下の写真は、このサイトに掲載することの許可を得て撮影したものです。
 かつてぼくの教室に参加したことのある生徒氏のひとりが、現在巣鴨で建築設計の仕事をしております。彼の事務所はぼくの作業場よりひとまわり広い上に家からも近く、当工作教室にはうってつけの環境でした。お尋ねしたところ、使ってもよいと快く承諾していただきましたので、当分のあいだ彼の事務所を当教室の会場として使わせていただくことになり、当日みなさんにお集まりいただきました。

初心者クラス・Aグループのみなさんと
撮影:坂田真一


2008年1月18日