新作のこと

 下はある作品の完成一歩手前の写真である。
 入り口に絵があるが、その上にはなにもついていない。だからこの作品は、この段階では看板のない作品だった。たいがい看板の文字をそのまま作題にしていたので、それがないとなると、困った。困った末の2月の10日、この欄で、当作品の題名を募集したことがあった。そしてフランスものに詳しい宮田いづみちゃんや、いづみちゃんの友人にも相談した結果、彼女らが推薦してくれた「サンドニの夜」、あたりを採用するつもりでいた。
 ところがそのあと、どうしても絵の上に何かがほしくなり、ライオンの顔やエンジェル(天使)など、いろいろな金具を検討してみた。しかしどれもシックリこない。そうこうするうちに手元にあった「ミクロコスモス」という丸いエッチングプレートを試しに取り付けてみた。すると案外「グ~」。これすなわちこの店の看板である。なので、タイトルも合わせたほうがいいような気がしてきて、結局作題もミクロコスモスにしてしまった。フランスものの題名にしては少しヘンではあるが…。
 いづみちゃん、ごめんなさい。

「ミクロコスモス」
完成作はアートインボックスセクショに掲載済み


2008年7月7日

帆船売場のこと

銀座伊東屋パートⅢ1Fの帆船模型売り場が6月いっぱいで閉鎖されることになり、波紋を広げている。ここでしか売っていない小さな金具や木材など、帆船づくり以外にも使える品物がいっぱいあったので、ドールハウスをやっているおばちゃんたちからも惜しむ声があると聞く。かく言うわたしも困ったひとり。しょうがないので先日行って、ゴッソリ買いだめしてきた。
 「やめちゃうんだって?」
 この売場のチーフ、大橋さんの顔を見るなり尋ねると
 「そうなんですよ、新社長の方針だから、仕方がない…」
 彼は案外サバサバと答え、でも商品はありますので大丈夫ですよ…と付け加えた。伊東屋は現在、毎月第3日曜日に、パートⅡ5階の会議室において帆船模型の制作教室を開催しているが、以後商品はそこで販売するという。ちょっと前からこの教室の講師も大橋さんが勤めている。だからほしいものがあれば第3日曜日に伊東屋の会議室へ行って、直接彼から買えばいい。それと、近々東京のどこかに、このコーナーを引き継ぐための店が出来るという極秘情報も耳打ちしてくれた。詳しいことはあとで連絡してくれことになっている。わかり次第またお伝えします。

笑顔がお茶目な帆船売場の大橋則顕さん


2008年6月30日

工作教室7月期のこと

 千石で開催中の工作教室、初心者クラス4月期は、課題作「水場エレジー」がほぼ完成いたしましたので、6月28日を以って終了します。代わって7月からは「孤独の世界」(下の写真)を課題とした新しい期(7月期)が始まります。その第一回目は7月12日スタートです。もうこの期からは初心者クラスとはいえぬ内容になりますが、参加をご希望の方がいらっしゃればメールをください。折り返し詳細をお送りします。
 なお4月期最終日の6月28日放課後に、打ち上げと称する、とても地味な飲み会を開催いたします。おれも一緒に飲みたいという御仁がいらっしゃれば、当日直接教室においでください。

縮尺1/80「孤独の世界」


2008年6月23日

建物めぐり

 まだ詳しいことは発表できないが、最近ある方から明治期に建てられた建造物の模型化を依頼され、いろいろと古い物件を調べている。そんなことから五月晴れのある日、愛知県犬山市にある「明治村」へと調査に出かけた。帰った翌日には小金井の「江戸東京たてもの園」へも…。
 たいして期待してなかったせいか、両方とも非常におもしろかった。
 アメリカの建築家フランク・ロイド・ライト氏が設計したという旧帝国ホテルのエントランスロビーや、2.26事件で暗殺された高橋是清元首相の家など、多くの建物を見物し、たくさんの写真を撮ってきた。
 下はその中の一枚。文京区千駄木にあったという夏目漱石邸の玄関である。往時の建物がそっくりそのまま明治村に移築され、木立の中にひっそりと建っていた。漱石はこの愛らしい家の書斎で「我輩は猫である」を執筆したという。
 さっそく玄関をくぐり、ぼろっちい風呂場や台所を見物し、女中部屋や、さほど広くはない書斎を見たあと、奥の八畳間でゴロンと大の字になった。天井には無数のシミがあって、それが歴史を物語っている。縁側からさわやかな風が入ってきて、さらさらと畳の上を流れてゆく。
 なんとも贅沢なひとときを満喫した。
 それはいいんだが、このとき家の中にも外にもぼくひとり。他には誰もいなかった。見張りすらいない。こんな大事な建物に、客をひとりで勝手に上がらせておいていいんだろうか。ちと心配にはなったが…。

明治23年から約1年、森鴎外がこの家に住んでいた。
そして明治36年から39年まで、今度は夏目漱石がここに暮らしたという。


2008年6月18日

ニコレットの居酒屋展示

 ニコレットの居酒屋という作品がある。㈱オニオンから依頼されて制作し、いったん納入したが、その後長いこと借りっぱなしになっていて、どういうわけかいまだにぼくの手元にある。(詳しくは作品ギャラリー「ニコレットの居酒屋」参照のこと)。なので、今週末浜松町で開催される「弟10回・東京インターナショナル・ミニチュアショー」に急遽出品し展示することにした。
 まだご覧になっていない方はこの機会にどうぞ。
 ——以下詳細。

タイトル: 第10回・東京インターナショナルミニチュアショウ
会場: 浜松町・都立産業貿易センタービル5F
住所: 東京都港区海岸1-7-8
日程: 6月14日(土)10:00~17:00
    6月15日(日)10:00~16:00
入場料:前売券(税込)/1日券¥1,200/2日共通券¥2,000
    当日券(税込)/1日券¥1,500
    高校生以下(学生証持参のこと)・障害者手帳持参者 無料
主催:日本ドールハウス協会&トム・ビショップ
協賛:特定非営利活動法人・日本テディベア協会・日本ビスクドール協会・もの作りビッグギャラリー
 <お問い合わせ> 日本ドールハウス協会
〒112-0002 東京都文京区小石川1-27-9 渡辺ビル2階
TEL:050-3303-3693 FAX:03-3816-6978
E-MAIL:japan@dollshouse.co.jp

 芳賀は6月15日(日)の午後には会場にいる予定です。ブースナンバーは未定ですが、そんなに広い会場ではありませんので、行けばすぐに見つかるはずです。
 —-どうぞよろしく。


2008年6月9日

盗っ人リバーの馬具店/②

 まるで西部劇にでてくるような馬具店制作の予定があると4月30日に、この欄でお伝えした。下がその店の内部。おおよそ百年前の写真なので不鮮明なのは仕方がない。
 壁の上段にぐるっと並んでいるのは馬の首輪だ。床には巨大なトランクがごっそり積み重なっている。そこまではなんとか識別ができる。ところが右側の壁を埋め尽くしている金具のようなものが、なんだかわからない。多分これは馬と馬とをつなぐためのロッドだろうと推定はしているが、断定にはいたっていない。ジョンウェインの「駅馬車」が六頭立ての馬によって引っぱられていたことは、おじさんならみんな知っている。ワードボンド扮するトラビス大佐が率いていた「幌馬車隊」も、確か四頭の馬によって牽引されていた。それら複数の馬たちは金属もしくは木製のロッドによって馬車につながれていたはずである。だから幌馬車一台を仕立てるためには、さぞかしたくさんのロッドが必要だったろう。それがずらっと壁に並んでいた。
 以上がぼくの推理で、いまのところ約2名のアメリカ人が賛同してくれている。ところがこの仕事の依頼者であるナンシー・フローセスさんは軽装馬車(Buggy)か、あるいは馬車ぞり(Sleigh)ではないかとおっしゃっていて、どうもはっきりしない。ものが特定できればすぐにでもアメリカまで現物を見に行くつもりでいるが、いまだになんだか分からず非常に困っている。
 そこでですが、どなたかこの金具についてご存知の方がいらしたら是非ともお教えいただきたいのです。
 —–どうかよろしくお願い致します。

盗っ人リバーの馬具店・内部


2008年6月1日

トキワ荘の春

 故石ノ森章太郎著作による「トキワ荘の春」(清流出版㈱)という単行本が、このたび出版された。この本はマンガではなく、マンガ家石ノ森章太郎が若き日のトキワ荘時代を振り返って、自らが珠玉の文章で綴ったエッセイ風読み物であるが、目次や奥付ページにはなんと計6枚もの拙作トキワ荘の写真が使われている。マンガの王様といわれた石ノ森氏の本に、しかも氏が生前たった一冊だけ著したというトキワ荘について語った本の中に、よもやぼくの作品が使われることになろうとは…。
 もちろんぜんぶ読んだ。愉快でいてどこかしみじみとした味のある名著だと思う。
 「姉が死んだ。明日が23歳の誕生日。ある年のその日だった。三歳違い。ボクは成人式とやらが済んでまだ三ヶ月目。天気は快晴だった。トキワ荘の周囲は、なにごともなく明け、なにごともなく暮れていった。町の人々はいつもと同じ日のように、ラーメンをすすり、野菜を売り、コーヒーをつぎ、自転車のペダルを踏んでいる…」
 本文はこんなプロローグで始まっている。あまたあるトキワ荘本の中でも最重要な一冊。マニアはすぐさま買って読むべし。

目次の下段に拙作の写真が…。


2008年5月25日