火事のこと

 すべての作品を北区田端にある「マルイケハウス」というボロアパートに保管していた一時期があった。エキシビション際には生徒氏らに手伝ってもらい、よくそこから出し入れをしたものだ。またこの建物の見学ツアーみたいなことをやったこともあるので、ご存知のむきも多いと思う。
 そのマルイケハウスが火事になった。
 ひとびとが参院選の開票速報に見入っていたであろう7月11日の午後9時半のこと、住人が出かけて留守だったアパート2階の無人の部屋から煙が昇り、やがてメラメラッと燃えあがった。ただちに消防車20台がかけつけて、けんめいの消火活動に及ぶが、なにしろ下町の密集地帯、またたくまに炎は隣家の軒下にも飛び火し、燃えつづけ、完全に鎮火したのは日付のかわった午前1時のことだった。結局このアパートの2階部分と、隣家の屋根が燃え、けが人はいなかった。
 小雨まじりの風が舞う、むしあつい晩だった。
 にもかかわらず現場には、ものすごい数の野次馬があふれ、わたしもその中のひとりとしてそこに立っていた。やがて警察官から「オーナーの方ですか?」と声をかけられ、近所の交番まで来るようにいわれた。
 正確にいえばこのアパートの所有者はわたしの家内である。が交番ではわたしもいろいろと尋ねられた。まずはアパートの住人ひとりひとりの生存確認からはじまって、出火原因のこと、焼け出された人々へのケアーのことなどを訊かれ、未明までそれらの対応に追われた。そして翌日は現場検証への立会いだ。それが終わったらこんどはご近所の方々へのお詫び行脚(あんぎゃ)である。等々、次からつぎへとやることがあって、まだまだ、まだまだ、問題山積。
 おかげで「アジェのパリ」は、その後あんまり進んでいない。
 ———–検証の結果、出火の原因は、2階留守部屋のタコ足配線と判明。

燃えた部屋


2010年7月19日

アジェ的作品

 アジェ的作品の制作計画について前々回ここに書いた。雑誌社からのリクエストとはいうものの、自分の作品としての新作を手がけるのはほぼ三年ぶりのことである。なのでこの際は、似たようなコンセプトで2個同時につくってしまおうと考えている。うち一個についてはすでに制作を開始していて、現在下のようになっている。
 まあ、古い倉庫ってところか…。
 まだはじめたばっかりではあるが、さいわいこの作品に限っていえば、この先フィニッシュまでのイメージは、だいたいぜんぶぼくの頭の中にできているので、もう完成したのとおなじこと、あとはただつくるだけである。

タイトルは未定


2010年7月11日

悠+(はるか・プラス)

 月刊「悠+」(はるか・プラス)での連載4回目、7月号が発売されている。
 写真にそえて毎回たった300字という制約のなかで、短い記事も自分で書いているが、これがなかなかむずかしい。字数との関係で多くのことはとても語れず、すると、いきおい、あるひとつの切り口をみつけて、そこを突くしかない。前回は“アートインボックス作品の由来”とでもいった切り口から、「錠前屋のルネはレジスタンスの仲間」という短文を書き、そして今回はそのつづきといった流れで、こんどは“立体絵画”という視点から、下のような一文を書いてみた。
 ——-以下本文。
 「炭酸入りのレモネード」
 前号の作品(アートインボックス)は荻須高徳という画家の絵を立体化したものだった。今回もおなじ画家の作品集より、こんどは「がらくた屋」という絵を立体化した作品をご覧にいれる(縮尺12分の1)。画家はこのがらくた屋の左側路上にキャンバスを置き、店を左方向から見た絵として描いた。それをまっすぐの視点に直し、立体化し、つくりあげた作品を上から撮ったのがこの写真である。
 絵の具のかわりに木と金属と、布と漆喰と、プラスチックとガラスと紙を用い、筆のかわりにペンチとノコギリと半田のコテと、やすりとハサミとカッターナイフを使って描いた、これは、いわば立体絵画である。

『悠+』(はるか・プラス)7月号
発行:㈱ぎょうせい


2010年7月3日

アジェのパリ

 秋に「月刊美術」誌が、わりと大きなあつかいで、ぼくの活動を紹介してくれるという。ありがたいことである。
 そんなことから、秋までに、なにかひとつの作品をつくってほしいといわれ、一体なにをつくろうかと迷った。昭和の情景や、馬具店アゲイン、灯ともしごろの新宿ゴールデン街など、この半年ばかりアイデアが二転三転し、方針がブレまくった。しかし最近ようやく進路が定まり、ここ数日は、朝から晩までアジェの写真ばっかりを眺め、そのエッセンスをアタマにたたき込んでいる。つくると決めたのはウジェーヌ・アジェ的世界、アジェ的情景だからだ。さいわい編集部からは「わかりやすい」とのご賛同をいただき、意を強くしている。
 昨今アジェの名はずいぶんポピュラーになった。1897年から約30年にわたって、変貌する大都市パリを、克明に記録した偉大な写真家だ。いままでもその写真を資料として使ってはきたが、全体として取り組むのははじめて。彼がとらえた百年前のパリを、どうつくるのか、あらたな試行錯誤がはじまっている。
 やや大型のアートインボックス作品となる予定。
—–乞うご期待!

アジェ本いろいろ


2010年6月27日

お知らせ

 開催中の「木造ストラクチャー制作教室(縮尺80分の1)自由が丘クラス」ですが、来月から、新しい制作課題に切り替わります。新メニューは、作品名「孤独の世界」(下の写真)、この作品を二期(6ヶ月)かけてつくります。そして、駒込工房で開催中の「アートインボックス制作教室(縮尺12分の1)」も、やはり来月から新メニューとなり、課題作「ブーランジェリー(パン屋)」の制作がスタートいたします。
 両教室とも少人数ならば新規生の受け入れが可能ですので、希望者は直接Hagaまでご連絡ください。なお料金や日程および教室の場所についての詳細は左のインデックス「工作教室」をクリックすればご覧になれます。
 —–どうぞよろしく。
 それから、6月26日の土曜日のことですが、自由が丘教室の終了後に「打ち上げ」と称する親睦会があります。参加希望者は当日の午後7時ごろ、直接教室までお越し下さい。当教室のOB、あるいは単なるファンの方も参加OKです。
 以上、教室に関するお知らせでした。

「孤独の世界」


2010年6月20日

Daytonaのこと

 所さんが表紙の「Daytona」という雑誌がある。10万部売れているそうだ。その7月号に「立体絵画という名のアート」という見出しで、ぼくの活動がとりあげられた。
 いい記事です。気に入りました。編集部の櫻井さん、ありがとう!
 ——ただいま全国のコンビニで発売中!!!

「Daytona」 2010年7月号より
発行:㈱ネコ・パブリッシング


2010年6月13日

近況①「ナンシーさんからのメール」

 下に掲載した写真は、梱包した状態での「盗っ人リバーの馬具店」である。箱の大きさは790㎜×920㎜×860㎜、重量約80キロ、㈱西濃運輸が発送の直前に撮影し送ってくれた。
 そして5月11日の朝、開け方についての簡単な指示書を同封の上、発送した。
 行き先は米ミネソタ州ミネアポリス、この作品の依頼主、ナンシー・フローセスさんのお宅である。そしたら翌日の夜中の12時に、もう「到着」というメールが。
 ずいぶんとはやいものである。
 「すごく興奮しています。 あした開けるつもりです。」
 と、あったので、すぐにまた次のメールが来るものと思っていた。
 ところがである。それから3週間。ミネソタからは、まったくなんの連絡もなく、もしかしたら、どこかがこわれていたのかもしれないと考え、日に日に心配の度合いが深まっていった。そんな矢先、先週ひさしぶりに下のようなメールがとどいた。

Ichiyoh–the shop came through in PERFECT condition and your directions were so good–my sons and my neighbor (he was in awe of your work) had it uncrated and up with lights in half an hour–Kent will not see it until Monday and I will email you then–it is fantastic and we all are going to enjoy your art–always something new and special each time we look at it–all for now–Nancy Froseth

 「完璧な状態で到着」という冒頭の一行を読んで心底ほっとした。指示書が役に立ったこと、ほんの30分でセットアップが完了したことなどが簡潔な言葉で告げられ、作品については“ファンタスティック”とほめてある。こっちの英語べたを知ってのことか、彼女からのメールはいつも短い。
 ちなみにこの馬具店は「カール・フローセス・ストアー」という名前である。そのカール・フローセスさんは、ナンシーさんの御主人ケント・フローセス氏のご先祖だ。したがってこの作品は、奥さんから御主人へのプレゼントだそうだ。だから手紙には、ケントは月曜日まで作品を見ることができません、なんてことも書いてある。
 なにはともあれ、彼女はいたく作品を気に入ったようである。
 よかった。よかった。

近況②「浜松町のミニチュアショー」

 6月12日と13日、東京浜松町でミニチュアのショーが開催されます。

 タイトル:第12回東京インターナショナルミニチュアショウ
 会場:都立産業貿易センター浜松町館5階
 JR浜松町駅北口下車歩5分
 東京都港区海岸1-7-8(TEL03-3434-4242)
 開催日:2010年6月12日(土)午前10時~午後5時
     2010年6月13日(日)午前10時~午後4時
 当日券:\1500/1日券
 前売り券:\1200/1日券・\2000/2日券

 このショーに、毎回ぼくは小規模ながら参加している。
 今回も作品1点を展示の予定。しかし会場全体では計85軒ものミニチュア業者がブースをならべるそうなので、ファンには絶対おすすめである。
 HAGAは13日の午前中会場におります。
 —–どうぞよろしく。

近況③「ハンズ退陣のこと」

 2008年2月から続いていた東急ハンズ銀座店9階の「Hagaコーナー」ですが、まことに残念ながら、このたび退陣いたしました。その日取りは、奇しくもハトヤマ退陣表明とおなじ6月2日。ま、それは、あんまりカンケーないか。しかし、こっちの在位は2年と4ヶ月。ハトヤマさんより長かった。な~んてことを比べたってしょうがねえ。
 最終日の夕刻、下落合の山ちゃんと出かけ、退陣業務をおこないました。
 ——国民のみなさん、ありがとう!

退陣業務に取り組む山ちゃん


2010年6月6日