アジェのパリ

 秋に「月刊美術」誌が、わりと大きなあつかいで、ぼくの活動を紹介してくれるという。ありがたいことである。
 そんなことから、秋までに、なにかひとつの作品をつくってほしいといわれ、一体なにをつくろうかと迷った。昭和の情景や、馬具店アゲイン、灯ともしごろの新宿ゴールデン街など、この半年ばかりアイデアが二転三転し、方針がブレまくった。しかし最近ようやく進路が定まり、ここ数日は、朝から晩までアジェの写真ばっかりを眺め、そのエッセンスをアタマにたたき込んでいる。つくると決めたのはウジェーヌ・アジェ的世界、アジェ的情景だからだ。さいわい編集部からは「わかりやすい」とのご賛同をいただき、意を強くしている。
 昨今アジェの名はずいぶんポピュラーになった。1897年から約30年にわたって、変貌する大都市パリを、克明に記録した偉大な写真家だ。いままでもその写真を資料として使ってはきたが、全体として取り組むのははじめて。彼がとらえた百年前のパリを、どうつくるのか、あらたな試行錯誤がはじまっている。
 やや大型のアートインボックス作品となる予定。
—–乞うご期待!

アジェ本いろいろ


2010年6月27日

お知らせ

 開催中の「木造ストラクチャー制作教室(縮尺80分の1)自由が丘クラス」ですが、来月から、新しい制作課題に切り替わります。新メニューは、作品名「孤独の世界」(下の写真)、この作品を二期(6ヶ月)かけてつくります。そして、駒込工房で開催中の「アートインボックス制作教室(縮尺12分の1)」も、やはり来月から新メニューとなり、課題作「ブーランジェリー(パン屋)」の制作がスタートいたします。
 両教室とも少人数ならば新規生の受け入れが可能ですので、希望者は直接Hagaまでご連絡ください。なお料金や日程および教室の場所についての詳細は左のインデックス「工作教室」をクリックすればご覧になれます。
 —–どうぞよろしく。
 それから、6月26日の土曜日のことですが、自由が丘教室の終了後に「打ち上げ」と称する親睦会があります。参加希望者は当日の午後7時ごろ、直接教室までお越し下さい。当教室のOB、あるいは単なるファンの方も参加OKです。
 以上、教室に関するお知らせでした。

「孤独の世界」


2010年6月20日

Daytonaのこと

 所さんが表紙の「Daytona」という雑誌がある。10万部売れているそうだ。その7月号に「立体絵画という名のアート」という見出しで、ぼくの活動がとりあげられた。
 いい記事です。気に入りました。編集部の櫻井さん、ありがとう!
 ——ただいま全国のコンビニで発売中!!!

「Daytona」 2010年7月号より
発行:㈱ネコ・パブリッシング


2010年6月13日

近況①「ナンシーさんからのメール」

 下に掲載した写真は、梱包した状態での「盗っ人リバーの馬具店」である。箱の大きさは790㎜×920㎜×860㎜、重量約80キロ、㈱西濃運輸が発送の直前に撮影し送ってくれた。
 そして5月11日の朝、開け方についての簡単な指示書を同封の上、発送した。
 行き先は米ミネソタ州ミネアポリス、この作品の依頼主、ナンシー・フローセスさんのお宅である。そしたら翌日の夜中の12時に、もう「到着」というメールが。
 ずいぶんとはやいものである。
 「すごく興奮しています。 あした開けるつもりです。」
 と、あったので、すぐにまた次のメールが来るものと思っていた。
 ところがである。それから3週間。ミネソタからは、まったくなんの連絡もなく、もしかしたら、どこかがこわれていたのかもしれないと考え、日に日に心配の度合いが深まっていった。そんな矢先、先週ひさしぶりに下のようなメールがとどいた。

Ichiyoh–the shop came through in PERFECT condition and your directions were so good–my sons and my neighbor (he was in awe of your work) had it uncrated and up with lights in half an hour–Kent will not see it until Monday and I will email you then–it is fantastic and we all are going to enjoy your art–always something new and special each time we look at it–all for now–Nancy Froseth

 「完璧な状態で到着」という冒頭の一行を読んで心底ほっとした。指示書が役に立ったこと、ほんの30分でセットアップが完了したことなどが簡潔な言葉で告げられ、作品については“ファンタスティック”とほめてある。こっちの英語べたを知ってのことか、彼女からのメールはいつも短い。
 ちなみにこの馬具店は「カール・フローセス・ストアー」という名前である。そのカール・フローセスさんは、ナンシーさんの御主人ケント・フローセス氏のご先祖だ。したがってこの作品は、奥さんから御主人へのプレゼントだそうだ。だから手紙には、ケントは月曜日まで作品を見ることができません、なんてことも書いてある。
 なにはともあれ、彼女はいたく作品を気に入ったようである。
 よかった。よかった。

近況②「浜松町のミニチュアショー」

 6月12日と13日、東京浜松町でミニチュアのショーが開催されます。

 タイトル:第12回東京インターナショナルミニチュアショウ
 会場:都立産業貿易センター浜松町館5階
 JR浜松町駅北口下車歩5分
 東京都港区海岸1-7-8(TEL03-3434-4242)
 開催日:2010年6月12日(土)午前10時~午後5時
     2010年6月13日(日)午前10時~午後4時
 当日券:\1500/1日券
 前売り券:\1200/1日券・\2000/2日券

 このショーに、毎回ぼくは小規模ながら参加している。
 今回も作品1点を展示の予定。しかし会場全体では計85軒ものミニチュア業者がブースをならべるそうなので、ファンには絶対おすすめである。
 HAGAは13日の午前中会場におります。
 —–どうぞよろしく。

近況③「ハンズ退陣のこと」

 2008年2月から続いていた東急ハンズ銀座店9階の「Hagaコーナー」ですが、まことに残念ながら、このたび退陣いたしました。その日取りは、奇しくもハトヤマ退陣表明とおなじ6月2日。ま、それは、あんまりカンケーないか。しかし、こっちの在位は2年と4ヶ月。ハトヤマさんより長かった。な~んてことを比べたってしょうがねえ。
 最終日の夕刻、下落合の山ちゃんと出かけ、退陣業務をおこないました。
 ——国民のみなさん、ありがとう!

退陣業務に取り組む山ちゃん


2010年6月6日

悠+(はるか・プラス)

 雑誌「悠+(はるか・プラス)」での連載3回目、6月号が発売されている。
 初回が「トキワ荘」で、次が「居酒屋」と、2回つづけて和ものだったので、今回は洋ものでいくことに。
 —–下はその記事から。
 「錠前屋のルネはレジスタンスの仲間」、
 写真は、1997年に制作した「錠前屋のルネはレジスタンスの仲間」というアートインボックス作品(縮尺12分の1)である。
 アートインボックスとは、平たい箱の中に壁や建物といったディティールを立体的につくりこんだ3D作品のこと。1996年、新宿伊勢丹で開催した拙展の折、担当者から、画廊の壁面に飾れるような立体作品をつくってほしいといわれ、つくりはじめた。ロケーションをパリと限定し、時代背景を第二次大戦直後と決め、シリーズで制作している。
 なお、本日ここに紹介した作品は、荻須高徳画伯描くところの「鍵屋(パリ)」という絵を、できるだけ原画に忠実に立体化したものである。

『悠+』(はるか・プラス)6月号
発行:㈱ぎょうせい


2010年5月29日

デザフェスの写真

 下は、HAGAブースを裏側から撮ったもの。
 右に突っ立っているのは「あづまや」。左の白い箱は「ニコレットの居酒屋」。押し寄せる群集にただひとりで対峙しているのはアラサーのらるかちゃん。ピンクのワンピースで決めてます。これを撮ったのは、プロカメラマンの神尾幸一氏、その道40年の大ベテランである。どうりでね。やっぱ、写真にパワーがあるよ。
 ま、デザフェスは、こんな状況でした。
 ご来場のみなさん、ありがとう!

デザフェスのHAGAブースの写真は、下記ホームページ
「コーヒーブレイク」というセクションでも見られます。
http://www.ne.jp/asahi/tsmc/net/


2010年5月22日

近況①「悠+(はるか・プラス)」

 雑誌・月刊「悠+(はるか・プラス)」での連載2回目、5月号が下のようにできあがり、またまた担当者が家までとどけてくれた。
 —–下はその記事から。
 「居酒屋ふう昼メシ屋」
 2006年のこと。あるテレビCMの背景として、夜は居酒屋だが昼は定食サービスもやっている、庶民的飲食店の内部造作を、ミニチュアでつくってほしいという依頼があった。
 撮影は2週間後だという。
 丸一日考えた末にOKし、怒涛の如く制作を開始した。
 2日でイスとテーブルをつくり終えると、3日目にはCM監督お気に入りの居酒屋内部の写真がとどいた。それをもとに壁や天井をつくっていると、こんどはどんぶりの柄や定食メニューについて、すなわち焼魚定食をつくってほしい、などのオーダーが次々と舞い込み、パニックに。それでもなんとか撮影日の朝、ご覧のような居酒屋ふう昼メシ屋が完成した。

『悠+』(はるか・プラス)5月号
発行:㈱ぎょうせい

近況②「雑誌『悠日』のこと

 現在、作品はすべて宇都宮の「悠日」(ゆうじつ)という倉庫に保管してある。
 そこは、倉庫であると同時にアートギャラリーであり、カフェであり、レストランであり、音楽パフォーマンスの会場であり、クラフトアートの制作教室でもあるというマルチ空間。
 その悠日さんが、こんどは「悠日」というタイトルの雑誌を出すという。
 実は、数ヶ月前にも一度この雑誌のテスト版が発売され「馬具店のこと」と題する一文を寄稿したことがあった(1月30日の小欄で紹介)そしてこのたび、正真正銘の、創刊1号が発売さることとなり、こんどは拙作「伊東屋」が紹介されている。
 ——下はその記事から。
 (ちょっと長いがその全文を掲載する)
 「伊東屋のこと」
 東京銀座伊東屋は文房具の老舗として有名だ。創業明治37年、日露戦争が勃発した年である。本店9階には広さ30坪のギャラリーがある。
 2001年8月、そこで作品展を開催した折、この店の伊藤高之社長(現会長)がお見えになり、たいそう作品をほめてくれた。
 そのときのこと、ご挨拶もそこそこに
 「御店はたいへんに歴史のある店とうかがっております。そこをアピールするため、店頭に創業店舗の模型を置いたらいかがでしょうか…」
 わたしは、単刀直入にそう切りだした。
 そして
 「三越におけるライオンのように、よいアドバルーンになると思うのです。」
 と、そこまでを言ったとき、とつぜん社長は「あっ!」と中空をにらみ、どこかへ消えてしまった。おかしいなあ、はなしの途中だったのに、と割り切れない思いでいると、2時間後、彼はもどってきた。
 「これ、つくれる?」
 社長はふるぼけた写真を手でぷるぷるふるわせながら、たずねた。
 見ると、創業店舗の写真である。随所に複雑な、ゴシックふうの造作が施された、重厚で、きらびやかな建造物だ。一見し、つくるのは、非常にむずかしそうだと感じた。
 しかし
 「もちろん、おつくりできます…」
 わたしはつとめて冷静に、ただそれだけを答えた。
 それから二年—————。
 伊東屋さんからはなんの連絡もなく、そのことはすっかり忘れていた。
 すると2003年の秋、同店意匠部の方から連絡があった。社長が創業店舗の模型展示物を、ぼくにつくらせたいと言っているそうだ。聞くと翌年が伊東屋創業百年にあたっていて、そのシンボルとして、模型がいるらしい。「だったらつくりましょう!」ということになり、つくりはじめ、製作には約100日を要した。
 なにしろ伊東屋は文具店である。
 おびただしい量の文房具が必要だ。
 そのすべてが明治のものでなければならない。
 さいわい往時の商品カタログが残っていて、それを目安にひとつずつつくることからはじめた。万年筆や、インクの瓶や、絵の具のチューブや、筆や、パレットナイフや、キャッシュレジスターといった金属っぽいものは、だいたいぼくがつくった。しかしノートやハガキといった紙ものは、わたしの工作教室の田山まゆみさんに、そして人力車は、おなじく工作教室の重鎮・佐野匡司郎氏に制作をお願いした。
 まあそんな突貫工事の末、作品は2004年の春、みごと完成し、同年秋、帝国ホテルで開催された創業百年祭会場に展示された。
 (以上、雑誌「悠日」の記事より)

4月15日、雑誌「悠日」創刊号が発売されました。

近況③「高間さんからのメール」

先月「40分の1トキワ荘におったまげただぁ」という記事を掲載したところ、さっそく作者の方から下のようなメールがとどいた。
—-以下、原文のまま。
芳賀一洋さま。はじめまして。
ご挨拶がおそくなりまして申し訳ございませんでした。福井県在住の高間信夫と申します。
たぶん、ご記憶にある名前かと存じますが、4月10日、東京都豊島区での「トキワ荘記念碑一周年イベント」で作品を展示させていただき、芳賀さまの近況報告コーナーでご紹介いただいた者です。横浜市の伊藤康治さまから、芳賀さまのHPで紹介されていると連絡を頂き、遅くなりましたがご挨拶のメールを差し上げた次第です。
この度は、事前に何の許可を得ることなく、芳賀さまの作品を模倣して展示する形となってしまい大変失礼いたしました。私は20年程前から、この1/40というスケールで住宅模型製作を趣味にしている者です。数年前から、マンガや映画、テレビに登場する主人公の住まいを製作するようになり、今回、トキワ荘の地元商店街さまからお声がかかり上京いたしました。
トキワ荘の前は、伊藤康治さまからアドバイスをいただき、映画「ALWAYS三丁目の夕日」の鈴木オートを製作し、トキワ荘の後、これまた芳賀さまの作品を参考にさせていただき石の家も「動くジオラマ作品」として製作いたしました。
トキワ荘に関しては、石ノ森萬画館に芳賀さまの作品が展示されていることは承知していたのですが、なにぶん遠い場所なので未だ作品を直に拝見したことはございません。参考となる資料も少なく、唯一参考にできる資料が芳賀さまの作品でした。私にとっては、とても足元にも及ばない素晴らしい作品でありました。
たいそう無礼なヤツとお思いでしょうが、芳賀さまをはじめ伊藤さま、その他多くの作家の方々の作品を目標に、今後も製作意欲を絶やすことなく取り組んでまいりたいと思っておりますので、これを機に、お付き合いいただければ大変光栄に存じます。
(以上、高間さんからの許可をいただいて掲載した。)
高間さん、メールをありがとう!
——下の写真は、文中にある「鈴木オート」。そのほかの高間作品は下のアドレス、Yahooフォトで見ることができます。
http://photos.yahoo.co.jp/ph/taka_maxjp/lst?.dir=&.view=t

高間信夫さんの作品


2010年5月15日