倉庫を引越ししました

 作品は先月まで広々とした宇都宮の倉庫(ギャラリー悠日)に保管しておりました。素晴らしい環境ではありましたが、ちょっと遠いということもあり、このたび自転車で10分ほどの距離にある東京都荒川区の倉庫へと引越しいたしました。
 宇都宮倉庫との契約が今月末で切れることに加えて、作品を一旦身近なところに置いてあちこち修理したいということ、それと、来春立て続けに二本あるエキシビションの搬入搬出への便宜を図ってのこと。だが東京ではどうしても狭いスペース(約20坪)しか確保できず、せせこましいことこの上ない。
 宇都宮倉庫のオーナーである「ギャラリー悠日」の柏崎さん、長いあいだお世話になりました。このたびは一旦は引き払いましたが、これで終わりではなく、そのうちまたご厄介になることもあるかと存じます。また、そうなれるよう今後とも精進いたしますのでどうぞよろしく。

荒川区の倉庫
東京都荒川区西尾久1-19-12

2011年12月10日

近況①「浅沼さんからのメール」

 前回浅沼さんからのメールをここに紹介したところ、それを見たご本人からふたたびメールがあった。
 11月26日付けの「近況報告」を拝読させていただきました。手彫りで再現されたレンガの壁は流石にお見事です。先生の作品が建築模型ではなく、アートの領域にあるのはこういうこだわり故と思います。さらに先生のどの作品もその精度の高さに目を瞠ります。
 実は私もレンガ壁を作ったことがございます。
 レンガ風タイルではなく手積みの凸凹感を持ったレンガの壁を作りたく、結局粘土を型抜きしてレンガ一個一個の表面を作り、壁に貼り込んで作りました。
 お送りした写真は「高架下のBAR」という題で以前作ったもので、古レンガっぽい感じを目指したものです。しかし、積み方はイギリス式でもなんでもない、べた積み(?)ですが。スケールが1/6と大きいので私にも古レンガのヤレ具合を表現出来たわけですが。
 「旧横浜駅」楽しみにしています。ただし、くれぐれもご自愛下さい。
 浅沼淳(商売のヒマにまかせて小遣い稼ぎに模型を作っています。

浅沼作品

近況②「続・浅沼さんからのメール」

 前回のメールの最後に、商売のヒマにまかせてとあったので、どんな商売をやっているのですかと尋ねたところ今度は下のようなお返事があった。
 以下浅沼メール。
 印鑑屋を生業としております。
 元はといえば玩具の設計をする技術系サラリーマンでしたが、十数年前に会社解散の憂き目に会った際、手先を使っての「作る」という仕事を継続したく、自営業で何かないかと捜した結果たどり着いたのが印鑑屋でした。ただ、昔ながらの手彫りの印鑑屋ができるわけもなく、PCでデザインして機械に彫らせる印鑑屋でございます。
 掲載のお話ありがとうございます。ただし作品はすでに譲ってしまい手元にはございません。それでもよろしければ。
 芳賀先生はもともと鉄道ファンでいらっしゃるようですので、私の作りました鉄道模型の写真をお目汚しとなりますが御覧いただければ幸いです。
 これはスハ32の三等車の室内模型です。スケールは1/12。
 私自身は鉄道ファンというわけではありませんが、木製ニス塗りの壁や床、白熱灯、よろい戸等は記憶の片隅に残っている年代なのです。ノスタルジーのみで作りました。
 三等座席の色、白熱灯の型式等、資料集めにたいへん苦労いたしました。残念ながら作品になんのヒネリもありませんが。
 いよいよ寒くなってまいりました。ご自愛下さい。
 ——-ギャー!すっげー作品だああぁ!!

浅沼作品

2011年12月3日

ファーストステップ

 先日レンガの壁についてここに書いたところ、当欄の読者(J.asanuma氏)から下のようなメールがあった。
 ———–先生のHPの「近況報告」11月20日にレンガの積み方のお話がございましたが、写真の積み方はイギリス式と呼ばれるものと思われます。イギリス式は大小のレンガを交互に積むのではなく、同じサイズのレンガを一段ごとに90度向きを変えて積んでいきます。短辺側が外に向くように積んだら、次の段は長辺側を外に向けて積むという方法です。フランス式やドイツ式という積み方もありますし、さらに応用バージョン、ミックスバージョンもあるようです——–。
 あさぬまさんありがとう。大変参考になりました。
 そのレンガの壁のことだが、今回わたしは旧横浜駅をつくるにあたって数箇所のミュージアムに足を運び、数々の模型展示物におけるレンガの壁を見て廻った。するとすべての作品はレーザー加工によって壁にレンガ模様のスジが刻んであるだけ。きれいすぎてまったくおもしろくなかった。そこで自分は手彫りでがんばることにし、ここ一週間ほどは研究と苦闘の日々を送り、鼻の穴から肺の中まで、どこもかしこもすっかり粉まみれになった挙句、やっと写真のようなレンガの壁をつくることができた。
 下の壁は旧横浜駅制作におけるファーストステップである。

1/40レンガ壁の試作品

2011年11月26日

杉ちゃんを囲む会

 うちの倶楽部の北海道担当官である「杉ちゃん」のゴージャス工房を見るために、9月にみんなで北海道へ行ったってことは、以前ここに書いた。
 その杉ちゃんが、久しぶりに東京へ出て来たので「杉ちゃんを囲む会」というカラオケ主体の飲み会があった。北海道ではカラオケにも連れてってもらったのでそのお返しというわけだが、ただだらだら飲むことが多いうちの倶楽部ではめずらしいこと。
 場所は秋葉原。集まったメンバーは写真の9名。
 まあとにかくかおりさんの歌がすごかった。

左からミツピー、佐野さん、タカちゃん、らるかちゃん、シゲ坊、
杉ちゃん、イケブチさん、Haga、かおりさん

2011年11月23日

レンガめぐり

 古いレンガの壁にはいろいろな積み方があって、昨今のレンガタイルのようにきちんと均一に並んでいるものではない。それはわかっているが、いままではあんまり深く考えないようにしていた。
 ところが先月群馬まで出かける用事があって、ついでに富岡製糸場跡を尋ねたことにより、ガラリと認識が変わった。その製糸場は明治5年に建てられ、そのとき積まれたレンガがいまに残る文化遺産となっている。壁をよく見ると大きなレンガの列と、小さなレンガの列とが、一列おきに交互に積み重ねられ、それがたまらない魅力となっている。この道15年にして初めてレンガの壁に興味を持ち、そのあとすぐに万世橋の交通博物館跡のレンガ壁も見に行った。若干威厳が足らないものの、積み方はやっぱり富岡製糸場とおんなじだった。そして先日、とうとう「まぼろしの横浜駅」の発掘現場にも足を運び、興奮してパチパチいっぱい写真を撮ってきた。
見よ!これが本物だ!!
 大小のレンガがぐずぐずに、よれよれに積み上がり、文句なしに美しい。
 ——–今度の作品はこういう風にしたいものである。

2011年11月12日

近況①「Get back, SUB!」

 小島素治(こじまもとはる)という友人がいた。70年代初頭、伝説の名雑誌「SUB」を発行するなど、才能豊かで魅力あふれる男だった。だが晩年は身を崩し、01年にはとうとう京都で逮捕・拘留され、拘留中の拘置所から頻繁に手紙が届いた。その手紙をこのホームページに紹介した(02年9月9日)ところ、彼の行方を追っていた雑誌のライターがそれを発見、ライター氏はぼくの紹介でめでたく小島氏と会うことができた。このときのインタビューをもとにして長い雑誌の記事が生まれた。小島素治の仕事とその足跡をたどる「Get back, SUB!」と題する連載ルポルタージュである。しかし当の本人はそれを見ることなく、04年に拘置所内で病死してしまう。
 このたび、そのルポルタージュ記事が「Get back, SUB!」という一冊の本になった。
 この本、時々ぼくが登場する。まず冒頭にこのホームページからの長い引用文があって、そのあと取材に応じるぼくが登場、拘置所からの手紙もふんだんに掲載されている。
 コアな内容なので万人向けとは言えないが、ご興味のある方は是非ご一読を!
 うちの倶楽部の常連カメラマン神尾幸一氏も登場します。

北沢夏音著「Get back, SUB!」あるリトルマガジンの魂
本の雑誌社/刊

近況②「元編集者のつぶやき」

 以前、雑誌で「カリスマ模型師/芳賀一洋の世界」という連載をやっていた。この雑誌の元編集者・西山朋樹さんが、この9月から自由が丘で始まった初心者クラスに参加している。なにしろ元編集者。執筆は得意である。
 なんか書いてよ、と言ったら下の一文を寄稿してくれた。
 以下西山文——。
 初回から数えて2回目の教室が終わり、課題作「秋の小屋」も少しずつ形が見えてきました。毎回ご指導いただきありがとうございます。35歳までは子どものためにも模型断ちをすると宣言した矢先に、雑誌が休刊になり、先生の工房にお邪魔することもなくなるのかと残念に思っておりましたので、初心者教室の開校はまさに渡りに船(?)でした。
 毎回2時間の授業のうち前半約30~40分は先生の作業を見ながら説明を受け、その後自分でもやってみるというスタイル。作家の現場をかぶりつきで見られる醍醐味はあるものの、みるとやるとは大違い。その後「じゃあやってみましょう」となったら、当然見た通りにはいかず、「先生、折れました!」「もげました!」「とれました!」という受講生が続出するのも無理なからぬところです。
 その際、先生が「俺が直す」といって「アロンアルファ」を取り出された時は「カリスマもアロンアルファを使うのか!」と妙に安心したものです。
 さて、この教室唯一の難点、いや注意点はつくった作品を都度「持ち帰らねばならないこと」。二回目の教室でデリケートな「秋の小屋」を鞄につめる訳にもいかず困っていた私にアシスタント(?)の羽賀さんが親切にペットボトルをくりぬいて、即席クリアケースをつくってくださいました。ティッシュに作品をくるみ、そっとペットボトルへ。ぐっとです。
 ですが、安心して帰ったのもつかの間、帰りの電車でまわりの人が私を避けるではないですか。しかし、それもよく考えればむべなるかな。ここはお洒落タウン自由が丘。そこにティッシュをつめたペットボトルを大事そうに抱える30男。しかもちょっと嬉しそう。
 ……痛い。
 *初対面で先生に宗教家に間違われた元編集者より。

西山さんの作品(制作途中)

2011年11月6日

「あるマンガ家の住居」のこと

 あるマンガ家の住居制作グループの羽賀尚文さんから写真が届いた。下はぼくの作品ではなく羽賀さんの作品です。若干未完成ではあるが、それにしてもよく出来ている。
 現在9名のこのグループの生徒氏らは、4年前初心者クラスの生徒としてぼくの教室に初参加し、以後年々腕を上げてゆき、今年の正月からは一年がかりでこのやっかいな課題に取り組み、いまは完成一歩手前のところまで来ている。
 実は10年前にも一度この作品を課題として取り上げたことがあった。そのときも確か生徒数は9名で、しかし実際につくったのはそのうちの2名だった。ところが今回は5名もの生徒さんがこれをつくっている。
 羽賀さん以外の方々の作品もぜひ見たいので、どうか写真を送ってください。またここに掲載したいと思いますので。

羽賀尚文さんの作品

2011年10月29日