映画に使う模型のこと—–②

 ——前回の続き。
 主人公の祖母・静(しず)が、むかし自分が住んでいた家(模型)の中の自分の部屋(模型)を覗いたあと、本編ではその家における実写シーンが登場する。その撮影が先日行われたとのことで、実写に使われた部屋の写真が届いた。つまりはこんな部屋をつくれってことらしいが、写真を見てほっとひと安心。
 トキワ荘や伊東屋や、角海老楼やニコレットの居酒屋など、今までつくってきたどの作品も、つくる前はまったく自信が持てなかった。失敗し、惨憺たる作品に仕上がってしまい、依頼主ともめごとになるのではないかと、毎回不安いっぱいでスタートしたものだった。しかし今回はこの写真を見たおかげで不安がどこかへ飛んで行ってしまった。
 い~い部屋である。

静の部屋
「セシウムと少女」より


2014年8月17日