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今号におけるわたしのコラム・はがいちようの世界では「ある家の勝手口」と題して、勝手口に貼った張り紙について述べている。
そもそもこの家は売れないマンガ家が住む粗末な一軒家であり、わたしはおなじ設定で過去に5回おなじ作品をつくった。最初は「庚申塚の借家」という題名でつくり、2作目と3作目は「あるマンガ家の住居」という題でつくり、4作目と5作目は「青春の北池袋」という題でつくった。
そして張り紙だが、最初はあまり深く考えず「ひったくりにご用心」という池袋警察署の標語をそのまま使った。しかし2作目以降は「絶対にこの土地と家は売りません」バージョンに切り替えた。すると一作目の題名である「借家」という設定が成り立たなくなり、仕方なく2作目以降は題名をチェンジせざる得なくなった。そうして「借家」が「あるマンガ家の住居」へと変わった。その後タイトルは更に「青春の北池袋」へと変わっていくのだが、張り紙の文言は最後まで「土地と家は売りません」のまま続いた。
もともとの発端は2001年5月に「1/15トキワ荘」をつくり終えたとき、屋根瓦が数百枚あまってしまい、その廃物利用のために1作目の家「庚申塚の借家」をつくった(縮尺1/15)。それを見た当時の生徒たちから、わたしたちもつくりたいというご要望があったので、教室の課題作として2作目をつくり、やがて3作目、4作目とだんだんと数がふえていった。
ギャラリーの来場者からは「東屋」とともに常に一位の人気を得ていた作品だったが、今年の春、最後の一点が売れてしまい、残念ながら今はもう見ることができない。
