A氏の情熱にほだされて、孤独の世界を  電気アリにしました。

 教室の課題作としてむかしからつくっている「孤独の世界」という作品がある。いままでずっと〝電気ナシ〟でつくってきた。この作品だけではなく、ぼくがつくる80分の1のストラクチャー作品は、いままでは、すべて電気ナシだった。
 ところが現在進行形の孤独クラスに、やたらとツッコミの強い生徒がいて、仮にA氏とする。A氏はどうしてもこの建物に室内灯を点けたいとおっしゃった。しかたなく電池の仕込み場所やLED照明に関しての能書きをあっさり説明したあとで、面倒だからやめたほうがいいですよ‥と付け加えた。A氏ばかりか、わたしも面倒なので、できればやめてほしかったのだ。
 なのに、その次の回に、A氏はわたしが言った通りのLED照明をちゃんと点けてきて、一歩も引かない構えを見せた。だがA氏の照明は色(光の色)がよくないことや、電池ホルダーの組み込み方がいまいち‥等々で、結局、わたしが見本をつくって見せなきゃいかんハメにおちいり、案の定とても面倒なことになってしまった。そうしてつくった電気アリの孤独の世界が下の写真である。まだいくらか未完成ではあるが、室内の明るさは十分に伝わっていると思う。
 A氏の情熱にほだされてつくったこの「電気アリ」は、ご覧のように超かっこいいが、もしイエサブの棚に並べるなら、ときどき電池交換のために出かけねばならない。交換は、作品をヒックリ返して行う必要があり、もし購入者がやった場合は、一瞬で作品をぶっ壊す恐れがある。そんなこんなを考えると当分イエサブへは持っていけない、なんともカネにならない作品である。

「孤独の世界」(1/80)


2017年9月18日