久しぶりのトキワ荘

 ちょっと用事があって、先日はじめて「石ノ森萬画館」へ行く機会があった。そして 久しぶりにトキワ荘と対面した。

 すでにご存知と思うが、石ノ森萬画館は宮城県の石巻市にあって、オープンしたのは2001年夏のことだった。生前カリスマ的マンガ家だった故石ノ森章太郎氏のミュージアムとして建設された施設である。石ノ森氏は若いころトキワ荘に住んでいたことが あるそうだ。よってミュージアムの建設にあたってはトキワ荘の模型展示物が一個必要ということになり、オープンの年の春、私が作ることになった。その後作品が萬画館に運ばれたあと、私は一度も石巻へは行っていない。途中で何回か、知り合いのカ メラマン氏と一緒に出掛けようと計画したこともあったが、結局実現せず、今日まで時が過ぎてしまった。だからこのたびこの作品と対面したのは、実に5年ぶりのこと である。

 むかし作った作品というものは、あとで見ると、えてして見劣りすることがあるものだ。しかし今回それは感じなかった。さいわいどこも壊れていなかった。また、展示場所がよくないとか、やれ照明が暗いだとか、見に行ったひとからはいろいろと聞か されていたが、別段そんなことも感じなかった。展示場所の照明が暗いために作品の室内灯がほのぼのと際立って、かえって雰囲気がでているように感じた。しかしあんまり真剣に見ていると、あそこを直したいここも直したいといった妄想が膨らんでき て、だんだんと欲求不満になってくることがよくある。だから極力アッサリとした見 物にとどめ

 「記念に写真を撮っていただけますか‥」

と、案内してくれた学芸員の佐久間朋子さんにお願いして、無事に見学を終了。

 仙台の駅までお出迎えいただいた佐久間さんと萬画館事務長の狩野章さん、そして 萬画館社長の板橋一男氏や、そのほかのみなさんに厚く御礼を申し上げます。

「トキワ荘とご対面」


2005年11月12日