雑誌・月刊「悠+(はるか・プラス)」での連載2回目、5月号が下のようにできあがり、またまた担当者が家までとどけてくれた。
—–下はその記事から。
「居酒屋ふう昼メシ屋」
2006年のこと。あるテレビCMの背景として、夜は居酒屋だが昼は定食サービスもやっている、庶民的飲食店の内部造作を、ミニチュアでつくってほしいという依頼があった。
撮影は2週間後だという。
丸一日考えた末にOKし、怒涛の如く制作を開始した。
2日でイスとテーブルをつくり終えると、3日目にはCM監督お気に入りの居酒屋内部の写真がとどいた。それをもとに壁や天井をつくっていると、こんどはどんぶりの柄や定食メニューについて、すなわち焼魚定食をつくってほしい、などのオーダーが次々と舞い込み、パニックに。それでもなんとか撮影日の朝、ご覧のような居酒屋ふう昼メシ屋が完成した。
近況②「雑誌『悠日』のこと
現在、作品はすべて宇都宮の「悠日」(ゆうじつ)という倉庫に保管してある。
そこは、倉庫であると同時にアートギャラリーであり、カフェであり、レストランであり、音楽パフォーマンスの会場であり、クラフトアートの制作教室でもあるというマルチ空間。
その悠日さんが、こんどは「悠日」というタイトルの雑誌を出すという。
実は、数ヶ月前にも一度この雑誌のテスト版が発売され「馬具店のこと」と題する一文を寄稿したことがあった(1月30日の小欄で紹介)そしてこのたび、正真正銘の、創刊1号が発売さることとなり、こんどは拙作「伊東屋」が紹介されている。
——下はその記事から。
(ちょっと長いがその全文を掲載する)
「伊東屋のこと」
東京銀座伊東屋は文房具の老舗として有名だ。創業明治37年、日露戦争が勃発した年である。本店9階には広さ30坪のギャラリーがある。
2001年8月、そこで作品展を開催した折、この店の伊藤高之社長(現会長)がお見えになり、たいそう作品をほめてくれた。
そのときのこと、ご挨拶もそこそこに
「御店はたいへんに歴史のある店とうかがっております。そこをアピールするため、店頭に創業店舗の模型を置いたらいかがでしょうか…」
わたしは、単刀直入にそう切りだした。
そして
「三越におけるライオンのように、よいアドバルーンになると思うのです。」
と、そこまでを言ったとき、とつぜん社長は「あっ!」と中空をにらみ、どこかへ消えてしまった。おかしいなあ、はなしの途中だったのに、と割り切れない思いでいると、2時間後、彼はもどってきた。
「これ、つくれる?」
社長はふるぼけた写真を手でぷるぷるふるわせながら、たずねた。
見ると、創業店舗の写真である。随所に複雑な、ゴシックふうの造作が施された、重厚で、きらびやかな建造物だ。一見し、つくるのは、非常にむずかしそうだと感じた。
しかし
「もちろん、おつくりできます…」
わたしはつとめて冷静に、ただそれだけを答えた。
それから二年—————。
伊東屋さんからはなんの連絡もなく、そのことはすっかり忘れていた。
すると2003年の秋、同店意匠部の方から連絡があった。社長が創業店舗の模型展示物を、ぼくにつくらせたいと言っているそうだ。聞くと翌年が伊東屋創業百年にあたっていて、そのシンボルとして、模型がいるらしい。「だったらつくりましょう!」ということになり、つくりはじめ、製作には約100日を要した。
なにしろ伊東屋は文具店である。
おびただしい量の文房具が必要だ。
そのすべてが明治のものでなければならない。
さいわい往時の商品カタログが残っていて、それを目安にひとつずつつくることからはじめた。万年筆や、インクの瓶や、絵の具のチューブや、筆や、パレットナイフや、キャッシュレジスターといった金属っぽいものは、だいたいぼくがつくった。しかしノートやハガキといった紙ものは、わたしの工作教室の田山まゆみさんに、そして人力車は、おなじく工作教室の重鎮・佐野匡司郎氏に制作をお願いした。
まあそんな突貫工事の末、作品は2004年の春、みごと完成し、同年秋、帝国ホテルで開催された創業百年祭会場に展示された。
(以上、雑誌「悠日」の記事より)
近況③「高間さんからのメール」
先月「40分の1トキワ荘におったまげただぁ」という記事を掲載したところ、さっそく作者の方から下のようなメールがとどいた。
—-以下、原文のまま。
芳賀一洋さま。はじめまして。
ご挨拶がおそくなりまして申し訳ございませんでした。福井県在住の高間信夫と申します。
たぶん、ご記憶にある名前かと存じますが、4月10日、東京都豊島区での「トキワ荘記念碑一周年イベント」で作品を展示させていただき、芳賀さまの近況報告コーナーでご紹介いただいた者です。横浜市の伊藤康治さまから、芳賀さまのHPで紹介されていると連絡を頂き、遅くなりましたがご挨拶のメールを差し上げた次第です。
この度は、事前に何の許可を得ることなく、芳賀さまの作品を模倣して展示する形となってしまい大変失礼いたしました。私は20年程前から、この1/40というスケールで住宅模型製作を趣味にしている者です。数年前から、マンガや映画、テレビに登場する主人公の住まいを製作するようになり、今回、トキワ荘の地元商店街さまからお声がかかり上京いたしました。
トキワ荘の前は、伊藤康治さまからアドバイスをいただき、映画「ALWAYS三丁目の夕日」の鈴木オートを製作し、トキワ荘の後、これまた芳賀さまの作品を参考にさせていただき石の家も「動くジオラマ作品」として製作いたしました。
トキワ荘に関しては、石ノ森萬画館に芳賀さまの作品が展示されていることは承知していたのですが、なにぶん遠い場所なので未だ作品を直に拝見したことはございません。参考となる資料も少なく、唯一参考にできる資料が芳賀さまの作品でした。私にとっては、とても足元にも及ばない素晴らしい作品でありました。
たいそう無礼なヤツとお思いでしょうが、芳賀さまをはじめ伊藤さま、その他多くの作家の方々の作品を目標に、今後も製作意欲を絶やすことなく取り組んでまいりたいと思っておりますので、これを機に、お付き合いいただければ大変光栄に存じます。
(以上、高間さんからの許可をいただいて掲載した。)
高間さん、メールをありがとう!
——下の写真は、文中にある「鈴木オート」。そのほかの高間作品は下のアドレス、Yahooフォトで見ることができます。
http://photos.yahoo.co.jp/ph/taka_maxjp/lst?.dir=&.view=t
2010年5月15日