近況①「Get back, SUB!」

 小島素治(こじまもとはる)という友人がいた。70年代初頭、伝説の名雑誌「SUB」を発行するなど、才能豊かで魅力あふれる男だった。だが晩年は身を崩し、01年にはとうとう京都で逮捕・拘留され、拘留中の拘置所から頻繁に手紙が届いた。その手紙をこのホームページに紹介した(02年9月9日)ところ、彼の行方を追っていた雑誌のライターがそれを発見、ライター氏はぼくの紹介でめでたく小島氏と会うことができた。このときのインタビューをもとにして長い雑誌の記事が生まれた。小島素治の仕事とその足跡をたどる「Get back, SUB!」と題する連載ルポルタージュである。しかし当の本人はそれを見ることなく、04年に拘置所内で病死してしまう。
 このたび、そのルポルタージュ記事が「Get back, SUB!」という一冊の本になった。
 この本、時々ぼくが登場する。まず冒頭にこのホームページからの長い引用文があって、そのあと取材に応じるぼくが登場、拘置所からの手紙もふんだんに掲載されている。
 コアな内容なので万人向けとは言えないが、ご興味のある方は是非ご一読を!
 うちの倶楽部の常連カメラマン神尾幸一氏も登場します。

北沢夏音著「Get back, SUB!」あるリトルマガジンの魂
本の雑誌社/刊

近況②「元編集者のつぶやき」

 以前、雑誌で「カリスマ模型師/芳賀一洋の世界」という連載をやっていた。この雑誌の元編集者・西山朋樹さんが、この9月から自由が丘で始まった初心者クラスに参加している。なにしろ元編集者。執筆は得意である。
 なんか書いてよ、と言ったら下の一文を寄稿してくれた。
 以下西山文——。
 初回から数えて2回目の教室が終わり、課題作「秋の小屋」も少しずつ形が見えてきました。毎回ご指導いただきありがとうございます。35歳までは子どものためにも模型断ちをすると宣言した矢先に、雑誌が休刊になり、先生の工房にお邪魔することもなくなるのかと残念に思っておりましたので、初心者教室の開校はまさに渡りに船(?)でした。
 毎回2時間の授業のうち前半約30~40分は先生の作業を見ながら説明を受け、その後自分でもやってみるというスタイル。作家の現場をかぶりつきで見られる醍醐味はあるものの、みるとやるとは大違い。その後「じゃあやってみましょう」となったら、当然見た通りにはいかず、「先生、折れました!」「もげました!」「とれました!」という受講生が続出するのも無理なからぬところです。
 その際、先生が「俺が直す」といって「アロンアルファ」を取り出された時は「カリスマもアロンアルファを使うのか!」と妙に安心したものです。
 さて、この教室唯一の難点、いや注意点はつくった作品を都度「持ち帰らねばならないこと」。二回目の教室でデリケートな「秋の小屋」を鞄につめる訳にもいかず困っていた私にアシスタント(?)の羽賀さんが親切にペットボトルをくりぬいて、即席クリアケースをつくってくださいました。ティッシュに作品をくるみ、そっとペットボトルへ。ぐっとです。
 ですが、安心して帰ったのもつかの間、帰りの電車でまわりの人が私を避けるではないですか。しかし、それもよく考えればむべなるかな。ここはお洒落タウン自由が丘。そこにティッシュをつめたペットボトルを大事そうに抱える30男。しかもちょっと嬉しそう。
 ……痛い。
 *初対面で先生に宗教家に間違われた元編集者より。

西山さんの作品(制作途中)

2011年11月6日