ぼくがこの仕事を始めた1995年当時、CG映像はまだほとんどなかった。だから本物そっくりなものをつくれば、人々はただ単に驚いていたようにおもう。
ところが、それから17年たって、いまやCG映像どころか3D映像の時代に入り、ハリウッドでは最新技術と莫大な予算、優秀な頭脳を駆使して、超リアルな映像をつくりだすようになった。そんな時代にひとりでせこせこと、低予算で、本物そっくりなものをつくったって、一体どうなんだろう。あいかわらず「リアルですねえ…」なんてほめられてはいるが、近ごろどうもピンとこない。
前置きが長くなったが、いまなにかをつくろうとして懸命に考えているところである。
旧横浜駅の制作にとつぜん待ったがかかり、ただぼさっと待っていてもしょうがない。手ごろなアートインボックス作品を一個つくる気になった。まったくなんの縛りもなく、自由に、自分の作品をつくるなんて2008年「白い石炭商人」以来のことである。
そこで冒頭のようなことを考えた。
つまり、リアルさもある程度は必要だろうが、そこにたっぷりと手作りのぬくもりを、つくりものとしての味や面白さを加味しなければ、わざわざ手でつくる意味がないだろうってことである。
そこでこんどの作品は荻須高徳的な、セザンヌ的な、なおかつジョルジュ・デ・キリコ的な、絵画的ムードを醸すものにしたい。
乞うご期待!
2012年3月31日