小雨降る午後の4時ごろ、スタジオ入り口のドアを開けようと、外からガタガタ引っ張る人がいた。
「ちょっと待って !」
と、わたしは中から叫び、ドアに駆け寄り、バスンと内側からドアを開けた。すると外にはハンサムな白人男性が立っていて、ギャラリーを見たいと言う。
すぐにわたしは彼をギャラリーの中へと案内し、スタジオへ戻った。その数分後、彼はギャラリーから出てきて、こう尋ねた。
「作品を買うことはできますか ?」と。
これに対し「安くないですよ…」とだけ答え、一緒にまたギャラリーへ入ると、彼は「東屋(あづまや)」を指差し、値段を聞いてきた。
わたしは急いで値段表を印刷し「東屋」の行に赤線を引いて目の前に示した。264万円と書いてある。彼は慎重にゼロの数を数えていたが、なにも言わない。なのでわたしは作品の説明をはじめた。つまり「東屋」は伊東屋作品の小型版であることや、その他いろいろと…。
すると彼は
「伊東屋は知ってます。さっき銀座で見ました」
と、おっしゃる。
これにはこっちがビックリだ。彼は銀座で伊東屋作品を見たあとで検索し、ぼくのギャラリー「Gallery ICHIYOH」へたどり着いたらしい。
オーストリア人のニコラス・フェルナンデス。推定年齢40歳ぐらいか。観光目的で日本を訪れているという。(うっかり写真を撮るのを忘れてしまいました)。
「東屋」のあと、彼はこんどはスズキ・マサハル氏作による「昭和の挿絵画家」という作品(下の写真)を指差して、ふたたび値段を聞いてきた。(当該作品については8/21日付トークスに記事あり)。
これに対しわたしは
「これは売れません。生徒の作品なので…」と、いったんはそう答えたが、その直後に気が変わり「売れるか、売れないかは、あとで当人に聞いてみます」に、言い変えた。
さて、スズキさんが、どう答えたのか ?
——-続きがあれば今度また。
