「佐野製人力車」

 2/13日付けで投稿した「明治の人力車」という記事の中で、うちのクラブの佐野匡司郎氏が製作した人力車について触れ、私がつくったものよりも遥かに優れていると絶賛したことがあった。それを読んだ読者から「ぜひ佐野さんの人力車を見たい」という声があり、せめて写真だけでもと、下にその写真を掲載することにした。(なおこの写真は当サイトWorks Galleryの「伊東屋創業店舗」というページに掲載されている写真とおなじものです。)
 佐野さんは私より13歳年長だが、1998年の春、新宿で開催された「芳賀展」で私のことを知り、同年秋から、私の工作教室の生徒として参加することになった。金属製の機関車(HOゲージ)をすべて自作してしまうほど金属工作に長けた方だったので、2004年に「伊東屋」をつくるとき、店頭に置く人力車の製作を「すべてお任せしたい…」とお願いしたところ、やがて彼は目の覚めるような一品をつくって持ってきてくれた。
 佐野製人力車も、芳賀製も、どちらもおなじ図面からつくられているので、かたちはほぼおんなじ。だが、なんといっても佐野製は幌がスゴイ。幌布の質感がバッチリ出ているのだ。どうやったらあんなふうに布を張れるのか、一度聞いたことがあったが、それでもよくわからなかった。(ちなみにわたしの幌はビニール製だ)。それと、写真ではチラッとしか見えないが、座席のフカフカ感がこれまたスゴイ。私のはレジン樹脂を固めただけの硬い座席だが、佐野さんのはちゃんと中にあんこを詰めて、それを薄い布カバーで覆った本格的なもの。
 また、塗装に関しても、彼は丹念にカラースプレーを吹いて全体を暗緑色にまとめているが、私のは真鍮色のまま、なんにも塗っていない、等々、どこもかしこも佐野製は、遥かに芳賀製を上回っている。
 以上、佐野製人力車は、銀座伊東屋11階で展示中の「伊東屋創業店舗」(1/12)の店頭に置いてあるので、実物を見たいとおっしゃる方は、ぜひ一度そちらでご覧になってください。

佐野匡司郎氏作による人力車/縮尺12分の1