「伊勢丹展の写真」

 元生徒Sさんは毎回これを読んでいるらしい。訳あって彼とは定期的に会う機会があるが、会うと必ず当欄のはなしになる。
 先日は、前々前回ここに書いた新宿伊勢丹でのはが展に「キャフェ・ル・マルソワン」が初出演したという記事が話題になり「伊勢丹展の写真は見れないの?」と聞いてきた。
 ぜひお答えしたかったが、なにしろ当時は銀塩カメラの時代だ。データとしては保管しておらず、その場でスマホで見せらなかった。帰宅後にゴソゴソ探したら案外あっさり紙焼きの写真が見つかった。下が1996年、新宿伊勢新館8階のファインアートサロンで開かれた「芳賀一洋展」の様子である。
 伊勢丹からの要望で、このときはじめて「立体画」(アートインボックス)を制作し、展示した。しかし絵の周囲にはまだフレームはなく、イーゼルもないので、作品がふた回りほど小さく見える。とはいっても普通の絵と比べりゃ遥かに重いので画廊の壁に吊るすのが大変だった。まずはじっくりと順番を考え、吊るしたあとも、微調整のため、ちょっとずつ、上下左右に動かさねばならない。その苦労たるや尋常ではなく、深夜からはじめたディスブレーの作業が朝までかかったことを思い出す。これに懲りて、以後立体画の展示はすべてイーゼルを用いるようになった。
 下段の写真の、左から2番目に吊るされている作品が、初代「キャフェ・ル・マルソワン」である。
 Sさんは、これら立体画をわずか95日でつくったことにも興味を示してくれたが、実はそのことについては、拙著「続・木造機関庫制作記」(私製本)の中で詳しく述べた。ところがその本は、売り切れて、手元には一冊もなく、お読みいただけないのが誠に残念。
 今度印刷したら必ずお知らせいたします。


【上段の写真】壁の左から: 「ジャニンの洗濯屋①」、「ビクトルユーゴ通りのブーランジェリー」、「ジャニンの洗濯屋②」、「BAINS/2月のパリ」、「ベランダの情景」、「セーヌフルール」、「シェルタリングスカイ」、「チャーリーの散髪屋」。【下段の写真】壁の左から: 「パラプリエ」、「キャフェ・ル・マルソワン」、「ジャニンの洗濯屋①」、「ビクトルユーゴ通りのブーランジェリー」、「ジャニンの洗濯屋②」、「BAINS/2月のパリ」。(2枚の写真が若干ダブっています)。