「ねじ式フィルム」

 つげ義春による名作マンガ「ねじ式」を、コマ撮り撮影という手法によってアニメ映画化しようとしているグルーブがあり、2020年から22年にかけて、そのお手伝いをしたことがあった。すなわちこの映画には数多くの背景が必要であり、それら模型の背景のうちの、いくつかの制作を手伝っていたのだ。ぼく自身はほとんどつくらなかったが、代わりにうちのグループから、ヤマノ・ジュンイチロウ、キシモト・ユウジ(ユウさん)、ウエノ・シゲユキ、テシバ・ユウホウ、キタハラ・ケイジ、クラバヤシ・ススムらの各氏が、それぞれ「シェイ式蒸気機関車」「鍍金工場」「クマの髑髏(どくろ)」「ダグラスDC-3」「エンジン付きの小型ボート」などの背景作品を提供した。
 しかし2022年以降はほとんど手伝っていない。
 それなのにである。その映画「ねじ式」の、パイロット映像完成試写会への招待状が先日届いた。会場はラピュタ阿佐ヶ谷地下一階の劇場「ザムザ」。
 12月4日の午後1時、キシモト氏とともにザムザへ出向くと、舞台上には監督や照明さんなど7〜8名のスタッフがズラッとならび、まるで「首」の上映前会見のようである。驚いたことに、その舞台へ「はがさんも上がって‥」と、とつぜんお声がかかり、仕方なくユウさんとともに上がるも、足はガクガク心臓はパクパク、おまけに拙いトークまでしゃべるハメになり、冷や汗タラタラだった。
 さて、その後に上映された約10分のパイロット映像であるが、われわれが関わったSLや飛行機や、クマのドクロや、鍍金工場がひととおり映し出されたが、中でもピカイチだったのは鍍金工場の場面だった。
 薄暗い工場の中央にかなりのアップでグラインダーが据えてあり、そこから天井へ向かって動力伝達のためのベルトがつながりワサワサと揺れている。ベルトによってグラインダーが激しく回転し、そこで誰かが刃物を研いでいる。チチチッと火花が散っている。それらすべてが逆光の中にあり、研いでいる人物はシルエットでしか見えない。美しい映像だった。
 他にもいろいろあったがいちいち書き出したらキリがない。総じて出来がよく、以前一度見た別のバイロット映像よりも明らかに進歩しているのは確かだ。
 ——しかし全編公開までにはまだ数年かかるかも、である。

写真は帰りの車中で。
このたびのパイロット映像を使ったクラウドファウンディングを近日中に実施し、世間から広く資金を調達して、さらに本格的な制作を進めるそうです。