「岸田さんおめでとう」

  季刊アトリエサードという雑誌に「はがいちようの世界」という小さな連載コーナーを持たせていただいてもう8年になる。短い文章と数枚の写真によって毎回一作品ずつ紹介している。
  今週は10月末日発売号(第88号)の原稿締め切り日なので、さっき写真を選び、短い文章を書いて、編集部へ送った。
  ついでなので、(本当はいけないんだろうが)、出来立てほやほやの原稿を、そのまま下に掲載する。

 「デカルト通り48番地」
  19世紀から20世紀初頭を生きウジェーヌ・アジェという写真家がいる。甲板式写真装置の時代に、彼は重たい機材一式を担いで街に出て、毎日写真を撮った。それらの写真にはすべて撮影場所が記されていて、ここに紹介した写真は、アジェが「デカルト通り48番地」と記した写真をもとに制作した作品である。(制作2011年。縮尺12分の1)。
  カンバンの〈BOULANGERIE〉とはパン屋のこと。ほとんどのパンが売り切れてしまった場末の店の、閉店間際の情景だ。たくさんのパンを山盛りにしたミニチュア作品が多い中、あえてスカスカに挑戦してみた。
  実はわたしの工作教室のサブジェクトとして、去年から再びこの作品を取り上げているのだが、緊急事態ばっかりで、遅々として進んでいない。もっと気楽に教室を開けるよう、岸田新総裁には、切に要望したい。
  本作は「ギャラリーいちよう」で見ることができます。あらかじめメール(ichiyoh@jcom.zaq.ne.jp)でご予約の上お出かけください。(東京都北区中里3-23-22/午前10時〜午後6時/入場料100円)

  と、まあ、たったこれだけの文章だが、なんといっても強調したいのは岸田政権に対する要望だ。しかし岸田さん、どこか短命政権におわりそうな、たよりなさを感じてしまうのは、わたしだけだろうか。

ウジェーヌ・アジェ(1857〜1927)
フランス、ボルドー生まれ。幼い頃に両親を失い、学校を中退後、商船に乗り込むが、やがてパリに戻って役者を目指す。その後、画家を経て、40歳を過ぎてから生活のために写真を始める。亡くなるまでの約30年に、変わりゆくパリの街や建築、意匠など約8000枚におよぶ写真を撮影。その多くを市立図書館が購買。没後に公表され、都市写真の模範作品として称賛され、近代写真の父と呼ばれる。