遊馬ブラックのこと

 自由が丘のぼくの教室に遊馬弘(あすまひろし)という生徒がいる。遊馬氏の本業は望遠鏡などの金属部品をつくる仕事だそうだ。望遠鏡といえば真っ黒である。なので彼は金属によく食いつく黒い塗料に詳しい。
 10年くらい前に、なにかのパーツを黒く塗るとき、彼に相談したことがあった。するとただちにリポビタンDの小瓶につめた塗料が届いた。これがなかなかのすぐれものだった。完全なるマットの黒色で、金属の地肌に直接筆塗りが可能で、乾けば剥がれない。わたしは勝手に「遊馬ブラック」と呼んだ。
 それから10年経って、いま自由が丘でやっている東屋教室において、たくさんの絵筆をつくる必要があり、ひさしぶりにそれを使うことにした。
 下の写真をご覧いただきたい。普通の虫ピンにただ遊馬ブラックを塗っただけでかんたんに絵筆(1/12)が製造できる。虫ピンの頭をニッパで切って、 叩いて潰し、そこに遊馬ブラックをぬる。そして胴体にも同じものをぬると、ただそれだけで立派な筆になる。絵の具やラッカーではこのあじはだせない。
 この魔法の塗料は遊馬さんが自分で開発したオリジナルで、みなさんへも宣伝してほしいと言われていたので、今号の記事として紹介した。
 イエサブのわたしの棚(の最下段)で入手できます。30cc入り小瓶一本756円。(もちろん遊馬さんから直接分けてもらうのも「アリ」でしょう)。

かなりドロッとした塗料なので、よく撹拌してご使用ください。稀釈液はラッカー薄め液ですが、上の写真における筆を製造する際にはまったく稀釈せずに用いました。なおイエサブの棚とは秋葉原スーパービル6階イエローサブマリンスケールショップの中のショーケース「はがいちようのミニチュアコレクション」のことです。