西山文

 数年前、月刊「悠+」(はるかプラス)という雑誌に、「カリスマ模型師・芳賀一洋の世界」という連載コラムを執筆していたことがあった。
 そのとき担当者だった西山朋樹さんが、先日ひさしぶりにぼくのアトリエへやってきた。
 彼は元雑誌の編集者である。執筆の専門家だ。
 なにか書いてよ…と、頼んだら、後日下の一文を送ってくれた。
 西山くんありがとう!

 以下、西山文—–。
 2月11日、雪の残る田端の坂道を登り、芳賀先生の工房を訪ねた。
模型好きにとって芳賀先生の工房は特別である。
母屋から張り出して作られたそこには、大きな作業机を囲んで、工具、機材、材料が並べられ、男の隠れ家という表現がこれほどぴったり来る場所をいまだ他にしらない。
編集者だったころ打ち合わせを兼ねてお邪魔するのが何よりも楽しみだった。ちょっとメールで送るには重いデータなどは参上する格好の口実。献本も最初の一冊は持参した。
残念ながら雑誌はなくなってしまったが、先ごろ新作が完成したという近況報告を拝見し、見学を申し込んだところ、快くOKをいただくことができた。
担当時代と同じくお伺いするのは「17時以降」。そのタイミングなら一日の作業も終わっているのでお邪魔にならない。今回の新作は、先生が以前作られた「馬具店」を見た海外のクライアントが「同じものを欲しい」ということで制作されたもの。
この日はもう完成し、あとは箱詰めして出荷するのを待つばかりという状況だった。
新作は、正面からみた馬具店の様子を額縁に描くように再現した前作とはことなり、家全体をつくった大作。奥行もあり、作品の中央には焔のゆらめく暖炉が追加されている。
先生は以前とお変わりなくいたって壮健。新作のポイントや新しい連載誌を見せていただき、そのあとは以前のように居酒屋へ繰り出した。
今回のクライアントとのやりとりから新作オーダーの経緯など興味深いお話をたくさん聞かせていただき、こちらの他愛もない近況にも「相変わらずダメそうだなあニシヤマちゃんは」と呵呵大笑。
2時間ほどで散会。
担当ではなくなってからも、ありがたいご厚情。
とはいえ、ご恩を返すすべいまのところなし。
そうです、先生ダメなんですよ
でもまだまだ頑張りますよ!

写真:西山朋樹

「滝川へ」

 出荷を待つばかり…と、上の一文に謳われた作品(EDWARD MORSE & BROS)は、その一週間後(18日)に飛び立った。本当は中東へ向かうはずだったが、ちょっとした進路変更があり、いったん滝川(北海道)へ。
 滝川着が24日午前10時の予定だ。
 着荷後現地で荷解きをせねばならず、ぼくは明日滝川へと向かう。
 そこにはスギちゃんという元生徒氏のゴージャスな工房があり、作品はそこでしばらく骨身を休めて、その後 改めてヨーロッパ方面へと飛び立つ予定である。

EDWARD MORSE & BROS


2014年2月22日