月刊「悠+」(はるかプラス)9月号

 月刊「はるかプラス」の9月号が発売になっている。連載中のHagaコーナー、今月の作品は「石の家」です。
 以下記事より。
 写真は倉本聰原作によるフジテレビの人気ドラマ「北の国」からに登場する石の家である。川原から石をひろい、実際にこの家を建てたという局の美術担当プロデューサーから依頼され、2004年9月に制作を開始した。
 その前年、テレビ局の案内で現地富良野を視察している。
 まずは実物石の家を見て、あとは主演田中邦衛お気に入りの温泉で湯につかった。そして夜は森林の地下深くに潜む倉本氏行きつけの秘密クラブへ。なんとそこには倉本聰が!
 そんな贅沢視察にバチでもあたったのか、つくりはじめてからは塗炭の苦しみを味わい、それでも作品は2005年1月、みごと完成した。
 —–以上が今号の記事だった。
 これに少し補足する。
 午後9時。ぼくらの乗った4WDはゆるやかな起伏の富良野の大地をすべるように進み、やがて森のでこぼこ道へと突っ込んだ。上がったと思ったらガクンと下り、右に折れ左へ曲がる。ヘッドライトに揺れる木々が次々と後方へさってゆく。そんな道をしばらく走ってから、車はちょっとした広場のようなところに出て止まった。
 案内役であるフジテレビのUプロデューサーが
 「3~40分ここで待ってて…」
 と、ドライバーに声をかけ車をおりた。うながされてぼくも車をおりる。Uさんのあとをついて月あかりのなか、足元を確かめながら20メートルほど歩く。そこに一本の蝦夷松の大木があった。そのまわりが潅木の茂みになっていて、茂みのなかに石積みの祠(ほこら)のようなものがある。ちょうどぼくらがそこまで来たとき、突如目の前のなにかが開き、ぼんやりとした光につつまれたエレベーターが出現。
 あっけにとられているぼくを尻目に、躊躇なくUさんがそれに乗り込む。
 ぼくも後につづいた。
 そのままわれわれは地下へむかって降下し、約10秒後、エレベーターの扉が開いた先はまるで六本木だった。
 30坪ほどのクールな空間に軽快なモダンジャズが流れ、着飾った男女20名あまりが、わいわいがやがや群れていた。その後方にビカッと黒光りのするバーカウンターが。
 倉本聰はその一番奥の椅子でグラスを傾けていた。

「悠+」(はるかプラス)9月号より
発行:㈱ぎょうせい


2010年8月28日