遊郭の座敷

 お伝えしていた「遊郭の座敷」がやっと完成した。
 この作品は巣鴨にある「市松人形館」からの依頼で制作。よって近い将来ここに市松さん作による人形が加えられて完全完成にいたる。したがってこの段階ではただ人形の舞台が出来上がっただけと言うべきかもしれない。が、いずれにせよぼくの仕事はすべて終わった。
 むかし江戸吉原には「角海老楼」(かどえびろう)という遊郭があったそうだ。何回も火災に遭うがその都度立ち直り、昭和33年、売春禁止法が施行されるまで、吉原最大の遊郭として君臨。近年は「角海老ジム」(ボクシング)や「角海老宝石」など、風俗産業以外にも商売の幅を広げ、かたちをかえて今日も脈々と生き続けている。
 本作は完全完成後、その角海老さんに納入する予定だという。なので制作にあたっては角海老的ムードを表現することに腐心し、手を動かしている時間よりも考えたり調べたり探したりの時間のほうがよっぽと多かったと思う。以前、明治村へ出かけたと記したことがあったが、それも調査のためだった。例えば提灯(ちょうちん)の吊るしかたひとつとってもいろいろあり、ぼくらにはそういうことがよくわからない。仕方なく浅草あたりを見て廻ったり、欄間の制作に悩んだときには埼玉の彫刻師のお宅へお邪魔したこともあった。全体としてある種の「雅」(みやび)を醸すものでなければならず、まさにそれがすべて。結果としてぼくの作品の中ではもっともボロ度が低いものとなった。
 そのうちセクションでも設けて、市松さん作による人形を置いたものも含め、たくさんの写真を掲載したいと思う。

「遊郭の座敷」


2009年3月8日