ミツトヨのノギス

 ジャーン!
 ギラッといぶし銀のような光を放っているのはミツトヨのノギス、ダイヤルゲージ付きである。写真の品は全長40センチ。かなりでかい。それが無造作に田端新町二丁目にある中澤機械の棚の上においてあった。見たとたんクラッときたので店のおばちゃんに値段を問うと、旦那じゃないとわからないという。では旦那はいつ帰るのかと聞くと、それもわからないという。そのとき午後3時。6時ごろにまた来ると言ったら6時には店を閉めるという。
 まったく売る気がないのだ。
 しょうがないので翌朝ふたたび行ってみた。そしたら旦那がいた。店の奥で客に背をむけてなにやら電話でしゃべっている。機械屋のオヤジというよりは、むしろ村役場の助役が似合いそうなおっさんである。やがてガチャンと受話器を置いたので、さっそく棚のノギスを指さしながら安ければ買いたいが、と真剣な顔で申し出た。
 「う~ん、あれは中古だから…」
 おっさんは、くわえタバコで一瞬考え
 「1000円で、どお?」
 だって。
 ひゃ~ 安い!!
 もちろん即ゲット。
 しかしあとになって冷静に考えたら、ノギスはすでに4個持っている。これで5個目である。どうもノギスマニア化しつつあるらしい。


2008年9月29日