シスコのビショップショー

 いやあ~東京は暑い。
 サンフランシスコの、あの、さわやかな気候が熱烈に恋しい。
 あっちでは午前中みんな真冬のいでたちで街を歩いていた。そして午後、グングン気温が上昇するが、あくまでもさわやか。蒸し暑いなんてことはまるでなかった。もう北京ではオリンピックがはじまったというのに、いまだにウェストコースト気分を引きずっている、あわれなおじさんである。
 —–以下、前々回の記事のつづき。
 さて、ゴーストタウンを後にして3日後のこと。7月19日午前9時、散々道を間違えた末に、どうにかサンフランシスコ・ベイブリッジをわたり切り、車はシスコのダウンタウンへと入った。ものすごい霧である。更に道を何回も間違えて、ちょうどこの日に開催中の、トム・ビショップ・ミニチュアショー会場へと辿り着いたのは、お昼のちょっと前だった。会場はダウンタウンから南へ30キロ、バーリンゲームという町の海辺のホテル。いつのまにか霧はすっかり晴れて、あたり一面に燦燦と日がふりそそいでいる。重厚な扉を開けてホテルの中庭へ進むと、ほどなくビショップ氏の姿を発見。彼は熱帯性植物に囲まれたテーブルの前で、のんびり新聞を広げ、ブルーのアロハ姿でくつろいでいた。
 「きょうは客としてここへ来ました…」
 恐る恐る告げると、彼は「ICHIYOH…」とだけひとこと発し、メガネを外し、まるでゴーストでも見たかのようにまじまじとぼくの顔を見つめた。入場料6ドルを払って中へ。
 さっそくウェスタンブーツや馬の鞍など、なんだかんだで10万円ほどのミニチュアパーツを調達。それらはしばらく使わないので(売れてしまわぬことを祈りながら)すでにイエローサブマリンの棚にならべてしまった。また、テキサスから来たというディーラー氏に、いくつかの馬具ミニチュアをスペシャルオーダーするなど、会場ではそれなりの収穫があった。
 まあミニチュアのはなしはそのぐらいにして、きょうはサンフランシスコの坂について少しだけのべたい。
 シスコが坂の街であることはもちろん知っていた。が、まさか、あんなにスゴイとは。例えば神戸のように、一方向の斜面のうえに街があるのならば理解ができる。ところがこの街はバッコンバッコン上ったり下ったりと、まるでラクダの背中のようなのだ。そんな地形のうえにビッシリ建物が建っている。なれない者はまず平衡感覚がやられ、やがて軽い船酔いを患ったような気分になってくる。その不思議な感覚をなんとか写真で伝えたいといろいろ撮った。が、写真にするとどうもうまく伝わらない。それでも下の一枚だけは、見ていると、いまだにヘンな気分が、多少はよみがえってくる。
 —–次回は、この坂道を行く「ケーブルカー」について。

2008年8月9日