ふるいはなしで恐縮だが、去年の8月、しんぶん赤旗の「ひと」というコーナーに、ぼくの活動が紹介された。赤旗の若きイケメン記者・本田祐典(ほんだ・ゆうすけ)氏がぼくのアトリエへ取材に訪れ、ピリッとした記事を書いてくれた。いつかこの欄でも取り上げたいと考えていたが、うまいタイミングがなく、こんなに遅くなってしまった。本日はそのときの記事をお目にかけることにする。
「模型で芸術活動を行なうおじさん」
さびついたトタン、木造の小屋が、なつかしさとさみしさをかきたてます。電線を表現する線は髪の毛より細い—。緻密な模型で「昭和」の情景をえがきます。テレビや新聞、海外のメディアも注目する“カリスマ模型師”です。「昭和の日本の情景」(80分の1)や「パリの下町」(12分の1)のシリーズのほか、テレビコマーシャルの背景などを手がけています。
自称「おじさん」。口癖は「うーん、しぶいっ」。社交的な人柄も、作業台に向かうと無口に。179センチの長身、大きな手で極小のパーツを加工していきます。美意識にかなうまでこだわると「自然とこうなる」。雨ざらしになった板の色、さびついた金属の色、一つひとつの部分が時代を語ります。「オレが見た昭和30年代っていうのは、貧しくて暗くてね。いまの昭和ブームで描かれるような、明るいものじゃなかったんだ」。そんな時代観がこもった作品に、展示会では涙する人の姿も。
作家歴は12年。前職はアパレル店の社長。バブル崩壊後、ひまにまかせて店にあった服のタグ(値札)の厚紙を利用して模型をつくってみました。「そしたら上手だった。オレ自身が驚いたね」。
自身が好む“立体画家”という肩書きのわけは「模型ってニセモノみたいな意味に理解されるから」。模型が芸術と評価されにくい現状に「手塚治虫が漫画を文化にまで引き上げたように、模型を文化にしてやりたい」。
個展は22日から東京・日本橋の高島屋8階で。
——-文・写真・本田 祐典
ややオーバーだが、赤旗の本田さんはうまい文章を書くもんだと感心した。さすが新聞記者である。高島屋展開催中はこの記事を見て、わざわざ愛知県からやってきた人もいた。
2008年2月24日