最近工作教室に入った生徒に、渡邊 格(わたなべ・いたる)という若手がいる。すごいロングヘアーなので、われわれは「ロンゲのいたるちゃん」と呼んでいて、つのだ・じろう氏描くところの「空手バカ一代」に出てくる主人公(大山益達)に、ちょっとだけ似ている。また彼は、パソコンが得意なので、たまに私の工房まで教えに来てくれるという親切なキャラの持ち主でもある。先日もやって来たので、少しご指導をいただいたあと、家の前にある焼き肉屋へと出かけた。
「ところで、いたるちゃんって、プラモとかの模型って、結構やってたの?」
ホルモン焼きを突っつきながら尋ねると
「僕らは、もろガンダム世代だから、ガンプラばっかりを、夢中になって作りましたね」
「へえ~」
そうしてしばらくは「ガンダム・ネタ」の話題が続いた。そこで私はふと、むかし作ったアムロ人形のことを思い出した。
「そういえばおじちゃんは、むかし仕事で、アムロが持っていたというピノキオの人形を作ったことがあるんだけど‥」
「え、本当ですか?」
彼は、少し驚いた様子であった。
あんまり詳しくは知らないが、機動戦士ガンダムの主人公であるアムロという少年は、子供の頃、ピノキオのかたちをした木の人形をたいそう愛していて、それが彼の人間形成の上で重要なポイントになったのだそうだ。ある日、それとそっくりの人形を作ってくれという依頼主が現れ、どういう訳か(カネのため?) 作ることになった。ガンダム系の雑誌(アスキー刊・G20/vol.5)に掲載するためである。ざっと以上のことを説明すると、彼は、是非一度見たいと言う。
「写真って、まだ、どっかにあったか、な?」
私は自信なさそうに答え、一応探して見ることを約束した。
そのあとは探して、探して、探して、そのうちいたるちゃんもパソコンを使って約一週間、毎日探しまくり、だんだんと大捜索の様相を呈していった。
で、結局、ありました。
下の写真が、それです。
当時、資料として送られてきたビデオを何回も、何回も、重ねて見ながらアムロ少年の手の大きさや、彼の身長に対して、人形の大きさを推定しながら作ったもので、アニメに出てくる人形とおんなじかたちで、なおかつアニメ映像に対して1対1の大きさである。つまり人形の身長は約30センチぐらいで、手足はぶらぶらと可動する構造になっているというスグレもの。いずれにしても、これは芳賀一洋の作としては最珍品の部類だと思うので、私が死んだあと「なんでも鑑定団」にでも持っていくと、5万円ぐらいには、なるのかも‥知れない。

2004年3月3日