「ミヤジマさんの機関庫」

 1995年から96年にかけて、HOゲージ(1/80)のSLを格納する機関庫を沢山つくった。同時に「木造機関庫制作記」という本を書き、96年の春、渋谷のパルコで、「80分の1の世界/木造機関庫たち」という個展を開催した。これがわたしの作家デビューであった。
 この会場へ、ミヤジマ・ユタカという方も足を運んだという。
 それから24年経った1919年の秋、そのミヤジマ氏から突然のメールが届いた。内容は、むかしパルコで、はがさんの機関庫を見て、本(拙著制作記)を買い、それ以降すっかり機関庫作りにハマってしまい…、とあり、ミヤジマさんが作った機関庫の写真が複数枚添付されていた。それがあまりにも素晴らしい出来栄えだったので、2020年11月27日付の当欄で紹介したことがあった。
 だがこのときはまだ当人とお会いしていなかった。
 それから数ヶ月後、彼がひょっこりぼくのボロスタジオに立ち寄ってくださり、念願の初対面を果たした。小生と同年代と思われるミヤジマ氏。現在鎌倉で自家焙煎のコーヒーショップ「鎌倉珈琲香房」を経営していると聞き、今度はわたしが鎌倉へ出掛けて、氏のコーヒーを味わったこともあった。
 そのミヤジマ機関庫の後方には白樺の木が数本立っていて、そこを狙った写真がなかなか良かったので、そちらも掲載したいと先日許可を求めたところ、「改めて写真を撮り直す」とおっしゃり、約30枚の追加ショットを送ってくれた。
 やはりすばらしい写真ばっかりだったので、どれを使うか非常に迷ったが、迷った末に、白樺よりはSLメインへと気が変わり、贅沢にも2台のSLを従えて撮った一枚(左上にチラッと白樺も見えています)を下に掲載し、改めてミヤジマ製機関庫を讃えたい。この機関庫が、むかしパルコの会場に陳列した拙作と同型だということは、まことに光栄なことである。

写真中央の機関庫は拙著「木造機関庫制作記」の巻末に掲載した図面にそって作られています。しかし、わたしが作った機関庫は、いつのまにかすべてどこかに消えてしまい、写真もなく、今ではもう見比べることができません。ちなみに拙著「制作記」(1650円)に関する情報は当サイト「Information」における「Books」でご覧いただけます。そして本書とまったく同じ内容の「しぶ〜い木造機関庫をつくる」という電子書籍(660円)もあります。こちらの情報も「Books」でご覧ください。

「出品しませんか?」

 再々お伝えしているように、ぼくの教室の現役生徒とOB生たちの集まりを「渋谷クラフト倶楽部」という。むかしは教室が渋谷にあったので、こんな名前になりました。作品展の開催や、勉強会や、飲み会などが、クラブ員たちによって自主的に運営されている。
 その17回目となる作品展が来年2月に開催される。

 Title: はがいちよう&渋谷クラフト倶楽部作品展
 日程: 2024年2月25日(日)〜3月2日(土)
 時間: 11:00〜20:00 (初日は午後1時開場・最終日は19時まで)
 会場: 東京交通会館B1Fゴールドサロン(JR有楽町駅前です)
 電話: 03-3215-7933(期間中会場直通)
 入場: 無料

 今回というか、このごろ毎回そうだが、本展は生徒作品とわたしの作品との合同展というかたちで開催される。会場の半分に生徒作品を、残りの半分にわたしの作品を展示するというジョイントエキシビションである。
 本件の打ち合わせのため、先日、当クラブ会長の山野順一朗氏がやってきて、いろいろとはなし合い、またご要望もうけたまわった。要は最近ぼくの教室へ入ったばかりの新しい生徒さんたちや、まだクラブに入っていない方々にも、本展のことを伝えて、出品を促してほしいということだった。
 「じゃあブログで宣伝しますよ…」
 と、山野氏にはそうお答えし、いまこれを書いている。
 新しい生徒のみなさん、あなたの作品を、われわれの作品展に出品しませんか? ぼくの教室で作ったものでなくても、自分で作った立体的な作品なら、ゴジラだろうと人形だろうと、出すものは、なんでもOKです。
 ——-出品希望者は連絡をください。
 (出品料は一品12,000円、二品15,000円だそうです。)

当クラブ会長の山野氏はご令嬢さえちゃんをともなってやってきました。この日彼女は成人式用の写真を撮った帰りだそうで、メークがバッチリ決まってました。

「トーキングヘッズ叢書No.96」

 「THトーキングヘッズ叢書」という雑誌(季刊誌)に、もう10年以上にわたって「立体画家・はがいちようの世界」という連載コーナーを持っている。その連載が今回で42回目になる。そのように、長いことお世話になっているトーキングヘッズ誌の、最新号である第96号「GOTHIC-Rゴシック再興〜闇に染まれ」が、一昨日発売になった。
 今号の特集は「ゴシック」だ。
 「ゴシックの源流から、ゴシックな精神を受け継いだ現代の作品までを俯瞰し、建築はもちろんのこと、ドール、廃墟美、身体改造、南部ゴシック、千夜一夜など、アート、文学、映画等々、多様な視点からその特質を紐解きました。また特集以外でも、レビュー・エッセイなども豊富に掲載しています。ご高覧いただき、ぜひ諸媒体・SNS等でご紹介いただけると幸いです。」
 ——-だ、そうです。

 もちろんアマゾンでも買えます。
 編集=発行=アトリエサード/発売=書苑新社
 A5判/全208ページ/本体1500+税

 下に掲載したわたしのページはほんの刺身のツマに過ぎず、あとはガツンと文字がつまった優良記事のオンバレードである。「ゴシックの精神とは何か」にはじまり、「ゴシック作品に通底する精神とは?」や、「クィアでフリークな南部ゴシック『風と共に去りぬ』から『ノーカントリー』まで」…等々、どれも熱の入った記事で、読み応え充分だ。
 本好きのみなさん、ぜひお求めください。

ピエール氏の荷馬車がBAINSと書かれた建物の前に停めてある。BAINはバンと読みバスタブのことだが、語尾にSがついているので複数形だ。複数のバスタブがある建物とは、つまりここは風呂屋(湯屋)なのである。遠い村から荷台いっぱいの穀物袋を積んでパリまでやってきたピエールは、取引先に荷をおろし、牛を休ませ、今はのんびり銭湯で湯に浸かっているのだろうか…。と、本作はそういう作品である。

「驚きました」

 講師歴26年のあいだには外国籍の生徒も数名いた。
 最初は2009年、ニューヨークからやってきたアメリカ人のチーフンさん(当時の推定33才)だった。彼は約一ヶ月東京に滞在し、その間ほぼ毎日ぼくのスタジオへやってきて、単独講座を受けながら「水場エレジー」という作品(1/80)を仕上げた。
 2014年には、渋谷区在住のブラジル人女性サラさん(当時の推定30才)が、ひとことも日本語を話さぬまま、われわれと一緒に学び、故国に帰るまでの二年間に、目の覚めるような「孤独の世界」(1/80)や、他にいくつかの作品を仕上げた。
 そして2017年からは台湾のヤンさん(当時推定35才)が定期的に来日するようになり、ときには東京に長期滞在し、その間毎日ぼくのスタジオへ通い、受講と自習によって「小屋」(1/80)や「孤独の世界」をつくり、そして更なる作品を制作中に突然コロナ禍となり、以後来日が叶わなくなっている。
 また、コロナ禍の2021年には、ショウという中国人女性(推定26才)が「ブーランジェリー制作教室」へ参加したことがあったが、新婚ホヤホヤだった彼女はすぐにベビー誕生となり、ほどなく教室からリタイアした。等々。
 やたらと長い前置きになってしまったが、今年の7月から、また、新たな外国籍生徒が一名、われわれと一緒に、孤独の世界・制作教室に参加している。そして彼は、午後の鹿骨教室へも、途中参加ながら、急遽加わるなど、ヤル気まんまんである。彼の名前はオウ・コクさん。日本語が堪能な、大宮在住の中国人(推定33才)である。やたらと背が高い(191c)が、いたって温厚な性格なので、以後お見知り置きのほどお願いいたします。
 わざわざ外国のワークショップに参加するような外国人は、よっぽど腕に自信があるんだと思う。冒頭に挙げた方々も、みな概してスキルが高かった。そんな中でもオウさんは特別だ。
 下の写真を見てほしい。
 拙作「午後の鹿骨」のオウ・バージョン(未完成)である。
 本作の場合、わたしの作品では壁がモルタルだったが、そこを、オウさんはすべて下見板で覆い、まったく別のムードの作品に仕上げている。大した才能である。驚きました。

オウさんのinstagram:  wanghu_tokyo
オウさんのFacebook:  王鵠
サラさんのInstagram:   sarahwero
サラさんのInstagram:   sarahwero.atelier
サラさんのInstagram:   a.sarahwero
サラさんのFacebook:   Sarah Wero
ヤンさんのFacebook:   Miniatures Christine CY
ショウさんのFacebook:  鍾莹

「Gallery ICHIYOH」

 急に涼しくなってまいりました。
 そんなタイミングで、久しぶりにギャラリーの宣伝をさせていただきます。
 はがいちようのミニミュージアム「Gallery ICHIYOH」では、ただいま作品展を開催中です。(下にリストアップした計23点の代表作を一挙にご覧いただくことができます。)
 住所: 東京都北区中里3-23-22/午前10:00〜午後6:00/入場料100円/予めご予約の上、ぜひご来場ください。
 https://ichiyoh-haga.com/private-gallery.html

 *現在展示中の作品
 「錠前屋のルネはレジスタンスの仲間」
 「DANONE/1944年夏」
 「デカルト通り48番地」
 「サンドニの夜」
 「ルイブランの青画廊」
 「エイミー&マドレーン」
 「中古屋ブェイセイル」
 「人形の鬘(かつら)を売る店」
 「カルベ酒を飲む女」
 「白い石炭商人」
 「キャフェ・ル・マルソワン」
 「セーヌ・フルール」
 「散髪屋チャーリー」
 「炭酸入りのレモネード」
 「寒い朝」
 「ブーランジェリー/B」
 「東家(あづまや)」
 「孤独の世界」
 「ジュール通りのガラクタ置き場」
 「ドラゴン通り118番地」
 「青春の東池袋」
 「ピエールの荷馬車」
 「いちようの作業場」

 アクセス: 山手線田端駅北口から歩10分。あるいは駅前のコミニティーバス・バス停(田端文士村記念館前にあります)からバスに乗り二つ目の停留場「エコー広場前」で下車すると歩1分です。ギャラリーの隣には築63年になる非常にボロい木造建築「いちようのスタジオ」があり、そちらを見ることもできます。
 

「目のこと」

 白内障の治療のため先週左目の手術をした。といっても日帰り手術だったので、朝9時に病院へ行って、11時にはもう家へ戻っていた。帰りはもちろん眼帯で。
 手術時間は全体で約30分。まずは特殊な椅子に座らされ、短い説明があり、そのあと目の部分だけに穴の空いた白い布を顔に被せられ、麻酔の液をぶっかけられ、等々の準備時間を差し引くと、正味、実際のオペは15分ぐらいだった。まったく痛くはなかったが、赤い玉や緑の玉がうごめく様が眼中に見えて、薄気味悪かった。
 以前から人間ドックの折などに、たびたび目のことは指摘されていたので、いつかやらなきゃならんことはわかっていた。もともと人間は70や80まで生きられるように設計されておらず、この年になれば、自然に、目や、歯や、耳がイカれてくる。
 術後約一週間が経ったが、経過が良好かどうかと問われれば、まだよくわからない。加えて近々右目もやらねばならぬ。そのあとは、しばらくの回復期間をみなければならぬだろう。
 そんなわけで、この月はほとんど仕事を入れていない。
 東家教室やその他の教室の皆さんにとっては迷惑なことでしょうが、よろしくご理解のほどお願い申し上げます。(自習に来て部屋を使うことはぜんぜん構いません。ですがお相手はできないかもしれません。)

写真は手術した部屋ではないが、待ち時間にパチリと撮った眼科の処置室。これをFacebookに投稿したところ、想像をはるかに超えるリアクションがあった。こんな地味な写真に354件のいいねと、なんと120件以上もの励ましのメッセージが、世界中から届いたのには驚いた。癒されました。

「ミヤケさんからのメール」

「石の家」って知ってますよね、フジテレビの「北の国から」というドラマの中で田中邦衛が暮らしていた富良野(北海道)の家だ。2004年、その家の模型展示物を制作してほしいとフジから依頼され、作品は翌年の春、完成した。(縮尺15分の1)。
 完成後、作品はただちにお台場のフジテレビ本社の25階にある球体の中へと運ばれ、約6ヶ月、そこに展示された。その後同社の「湾岸スタジオ」へと移され、こんどはそちらの1階展示場で約1年間展示されていた。しかしその後、社内の配置転換によって展示スペースがなくなってしまい、作品はどこかに仕舞い込まれ、あとは、なにかのイベントの折に顔を見せる程度で、ふだん見ることはなくなっていた。
 本作を制作した当時、フジ側の担当者は同番組の美術監督を務めたU氏であったが、10年ほど前にU氏が定年退職されてから以降、フジとは特にパイプがなく、作品がどうなっているのか、さっぱりわからなかった。
 そしたらである。先週元生徒ミヤケ・タカオ氏から下のような内容のメールが届いた。(ミヤケ氏はU氏と仲が良い。)
 「本日U氏から驚くべき情報がもたらされました。北海道でU氏が定宿にしている富良野のLA VISTAホテルへ泊まりに行ったところ、一階ロビーに石の家の模型展示物が置いてあってびっくりしたそうです。はがさんにも伝えてほしい、とのことでした。」
 このメールには数枚の写真が添付されていて、見ると正にわたしがつくった作品だった。
 U氏はさぞびっくりしたことだろう。本作を制作中だった18年前、彼はわたしのスタジオを訪れて制作の過程を見ているし、完成後、それをスタジオから運び出し、車でお台場まで運んだのも彼だった。だからこの作品はU氏にとって極めて見慣れたものだったハズ。それが、いつも行く馴染みのホテルのロビーに、ひょっこり置いてあったのだから…。
 ミヤケ・メールによるとLA VISTAは「北の国から」の資料館があったところに建てられたホテルだそうで、「あるべきところに戻って来たかって感じです‼︎」と、結ばれていた。

U氏が撮ったと思われる「石の家」の写真。
天然温泉・紫雲の湯/LA VISTA/富良野ヒルズ1階ロビーにて。
〒076-0026北海道富良野市朝日町5-14
電話: 0167-23-8666
https://www.hotespa.net/hotels/furano/