「拙著: 1/80 消防署をつくる」

   いままで幾つこのボロい消防署をつくったことか。
   1996年に新宿伊勢丹で開催された「芳賀一洋作品展」に展示するためにつくったのが第一号だった。その後大作「ワンス・アポン・ア・タイム」における中心的建造物としてふたたびつくり、渋谷パルコの自分の教室でもつくり、自宅教室や、千石教室でもつくり、自由が丘教室でもつくった。自由が丘や、千石や、自宅では複数個つくった覚えがあるので、少なくても過去に10個以上は確実につくっている。最もつくり慣れた作品のひとつである。
   教室で取り上げて制作する場合は、逐一つくり方を説明しながら、少しずつ仕あげていくわけだが、毎回必ず1〜2名の欠席者がでる。すると後日「補講」と称して、彼らに、おんなじことをもういっぺん説明しなけりゃならず、それが、非常に面倒くさかった。そのため毎回教室のあと、その日に説明したことの内容を、できるだけ詳細に記したマニュアルを書くことにし、休んだ生徒氏らには補講をやらず、マニュアルを送って済ませることにした。当時はひとつの課題作に対して月二回の講座を実施していたので、マニュアルはどんどん溜まり、やがて分厚い束になった。
   本書は2009年、当時文京区の千石にあったわたしの教室で、三たび、(だか五たびだか)、このボロい消防署を取り上げて、つくり方教室を行った際に、わたしが書いたマニュアルの原本だ。全編ヘタクソな手書き文字で綴られ、図や写真も入っている。
   オールカラー・A5判・148頁で、値段は一冊7,480円(税込/送料別)。 お求めになりたい方がいらしたらご連絡ください。
   アマゾンでは売っていませんので。

ゆうさんという生徒がいる。ある日ぼくのスタジオで、彼と酒を飲んでいるときに、ひょいと手書きのマニュアルの束を見せた。すると彼はそれを異常に気に入り、このままのヘタクソ文字で本にしたらどうかというはなしになった。かくして、編集やデザインはすべてゆうさんがおこない、出来上がったのが本書である。ほとんど売れない本なので、値段が高いのはしょーがない。