「隣りが火事だ!」

   この記事は先週の土曜日(5/7)に一度掲載した。しかしその後にまちがえて削除してしまったらしい。なのでもう一度掲載する。
 以下本文——
   きょうは土曜日。
   あしたの日曜日は、午前中からぼくのスタジオで教室があるので、その仕込みに集中していた午後の4時ごろ、やたらとおもてが騒がしいので、ひょいと外に出て驚いた。なんと隣りが火事なのだ。5〜6台の消防車に、パトカーや、救急車が通りに横付けされ、100人近くの消防士や、警官や、野次馬たちが通りに溢れ、スピーカーがなにやらガンガン怒鳴っている。
   スタジオの隣には3階建のビル風建築が立っているが、その二階の窓から、白い煙がもうもうと吹き出し、住人である奥さんと幼いふたりの子どもたちが屋上に逃げて、そこで助けを待っている状態だ。下から見上げると、屋上の柵越しに3人の姿が見えるが、なかなかハシゴがそこまで届かない。
   そんな様子をパチパチスマホで撮っていたら、若い消防士から
 「あなたが通報者ですか?」
   と、腕を掴まれ、質問された。
 「違いますよ。すぐそこの作業場で仕事をしていたら、外がうるさいので、出てみたらこの騒ぎです。」
   そう答えたが、なぜかその間ずっと消防士はわたしの腕を掴んだままである。
   あまりにも鬱陶しいので
 「いま作業中なので、ちよっと電気を止めてきます」
   と言って、彼の腕を振り払い、スタジオの中に引っ込んだ。
   それから約30分。ふたたび外に出てみると屋上にいた親子はすでに救出され、ストレッチャーに載せられて、事情聴取を受けていた。
   わたしを掴んだ消防士の姿はもうなく、消防車も警察車両もあらかた去り、ほんの十数人の関係者が、ただたんたんと後片付けをしていた。
   さいわい火事はボヤでおさまり、ぼくのスタジオは燃えなかった。
   (しかし消防士はなんでわたしの腕を掴んだのか?)

隣には大越(おおごえ)という方が住んでいて、ご主人は不動産屋を営んでいる。土日祭日は商売に忙しく、きょうは仕事に出ていたのだろう、奥さんと子どもたちだけが家の中にいた。出火の原因はわからぬが、放水の一歩手前で火が消え、大事に至らずに済んだ。