大石天狗堂完成

 つげ義春による名作マンガ「ねじ式」の映像化プロジェクトにおいて、この映画の背景美術を製作するよう仰せつかり、何名かの渋クラ(渋谷クラフトクラブ)会員とともに、すこし手伝っている。
 原作の最初から14コマ目に、壁に大きな天狗の面が描かれた部屋がでてくる。このシーンを拙作による背景でまかなうことになり、まずはミニチュアの白い壁(縮尺1/7)をつくって、そこに天狗の絵を描いた。(12/11日付け当欄に写真があります)。原作に準じたヘタな絵だが、粗野な迫力があり、なかなかよいと自分では思っていた。
 ところが
 「天狗はてっきり木板(きいた)のうえに描かれるものと思っていました。」
 という批判めいたご意見が身内からささやかれ、たじろいだ。あわてて原作画を見てみると、確かに壁は木板のようでもある。が、木板なら茶にしなけりゃならず、てーことは、白い壁の天狗はボツってことである。
 「ギャーーー!!!!」(泣)
 それから2〜3日ウジウジ泣いて過ごした。
 そして「ジャーーーン!」涙を拭いて立ち上がり、こんどは木板っぽい壁の上にもう一回天狗の絵を描いたぞーーーっ!!!!!
  (下の写真)
 ———本番では、画面の右はじに人形(ねじ君)が登場し
 「ほら、ぼくの顔は、だんだん蒼褪めていくではないですか」
 などと、しゃべるはずである。

最初に描いた白い壁の天狗絵もかなりよかったので、最終的にどっちを使うか非常に迷い、この映画の監督である才谷氏に問い合わせてみた。すると彼は「茶がよい」とおっしゃり、結局写真のような作品になった。