DANONE(ダノン)三部作

 ショーウィンドウに食品メーカー「DANONE」のプレートがあるアートインボックスを、過去に3種類つくっている。看板には、BEURRE(バター)、OEFS(卵)、FROMAGES(チーズ)の文字がならんでいる。そこまでは3作おんなじ。だがそれぞれの作品によって店の色が違う。最初につくったのが黄色い店で、次は緑、その次は白だった。アイデアが枯渇したとき、そうして色違いの作品をつくって点数を稼いできた。
 新宿伊勢丹の小冊子、1996年の12月号に、最初につくった黄色い店(黄色いダノン)が載っている。これががすぐに売れ、直後に手がけたのが緑のダノンだ。緑もなかなかの人気で「DANONE 1944年夏」というタイトルをつけて、おなじものを過去に4点つくった。3点は売れ、最後の4作目を、現在自宅ギャラリーに展示している。
 黄色の初作と緑の初作はともに1996年に制作し、両方伊勢丹で売れた。
 これに味をしめて翌1997年に、ほとんどおなじアイデアの、今度は白いダノンをつくった。ところがこれがうんざりするほどの駄作で、実はずーっと隠してきた。ところが2年前、「やすらぎの郷」なるTVドラマの撮影に4〜5点貸してほしいといわれ、わたしは「二軍でよければ」と答えた。貸し出し期間が超ロングわたるため一軍に去られてはちと困るのだ。そこである日、二軍ばっかりを集めて担当者に見てもらった。すると彼は出場者のひとりに白いダノンを選んだ。
 「ひゃ〜、こんなものがテレビに映るのはたまらん!!」
 恥ずかしさのあまり貸し出す直前にあわてて小リフォームを施した。
 直されて少しはマシになった作品たちは、そのあと長いお勤めに出て、ことしの一月に全員そろって戻ってきた。しかし彼らの顔をマトモに見る間もなくこのコロナ騒動である。
 一方こちらはにわかにヒマになり、もういっぺん白いダノンに手をかけて、さらにマトモな姿に直したいと、ついに作品の蓋をあけてしまった。
 以下次号——。

緑のダノン。正式題名「 DANONE 1944年夏」。1944年春にノルマンジー上陸作戦があり、夏にパリが解放された。したがって題名は「解放された夏」とでもいう意味。